「営業成績の悪かった僕は、毎日のように直属の上司に怒鳴られていました。気が
弱いので、叱られた夜はなかなか眠ることができず、うっぷんはたまるばかり。こ
んなとき、ドラッグをやればイヤなことが忘れられると安易に考えたんです」
ネット通販でアメリカ製のドラッグを購入して試したところ、信じられないよう
な幸福感があった。自分は何でもできるような気持ちになり、叱られたこともすっ
かり忘れ、翌日からリフレッシュできた。しかも、いつも見る幻覚は色鮮やかで視
覚的にも楽しむことができたという。
「悪いことをしてる認識はありませんでした。だって合法ということは国が認め
ているわけでしょう。やがてネットを通じてドラッグ仲間とも出合い、週末にはパ
ーティーをやるようになりました」
ところが、常用しているうちにとんでもないことが起こる。ゴルフ接待を忘れて
すっぽかし、大口得意先を怒らせてしまったのだ。それからも、商品知識をド忘れ
する、恋人の誕生日を思いだせないなど、信じられないほど記憶力が落ちたとい
う。
「心配になって病院で調べてもらうと、『まるでアルツハイマーにかかった人の
ように脳の萎縮が始まっている。信じられないケース』と医者に絶句されました。
ドラッグをやっていることを告げると、『米国では合法ドラッグのやりすぎで脳細
胞が破壊され、あなたと同じように記憶障害を起こしたケースが多々ある』と言わ
れました」
心配になってドラッグ仲間に相談すると「実は俺もオネショするようになっ
た」、「手が震えて文字が書けない」など、身体症状に悩んでいることを告白して
きた。
「僕たちが好んで飲んでいた合法ドラッグはのちに重大な副作用や精神障害を引
き起こすことがわかり、最近日本でも禁止になりました。僕は『合法』という言葉
に安心し、自らの体を破壊してしまったんです」