最初はほんの出来心だった。
今日、いつもと違う下着をつけていたせいかもしれない。
レースの、柔らかくて、でも敏感なところに少しだけ触れてくるやつ。
通勤中、ふと脚を組み替えたとき、
クロッチがふわりと擦れて、びくっとした。
それだけで、身体の奥が反応して、
下腹部がじんわりと熱を帯びていくのがわかった。
「……今日はダメだな」って思った。
このまま何もしなかったら、帰ってから絶対我慢できなくなる。
だから――その場で、やることにした。
駅の構内にある、ちょっと綺麗めなトイレ。
外見は普通なのに、中は意外と静かで、鏡もライトも明るい。
個室に入って、二番目の扉を選ぶ。
一番奥は逆に人の気配がなさすぎて落ち着かない。
二番目くらいが、一番“日常に溶けている背徳”って感じがするから。
鍵をかけて、バッグを開ける。
薄手の巾着に入った、USB充電式の小さな吸引トイ。
白くて丸くて、すべすべしてて――。
罪悪感がまるでない、可愛い見た目をしてるくせに、
ひとたびスイッチを入れれば、クリを舐めるみたいに吸い続けるえげつない玩具。
今夜も、容赦なく、私を壊してくれる。
スカートの裾を太ももまで捲って、
下着を膝までずらす。
便座に座ったまま、背筋は伸ばしたままで。
……床には絶対、触れない。
おもちゃの先端を、クリにそっと当てる。
「ちゅっ」と吸われた瞬間、
私の内腿がぴくんと跳ねた。
声が出そうになるのを、
手の甲を口に当てて押し殺す。
でも、そこからはもう止まらなかった。
吸われるたびに、
膣の奥がきゅうって締め付けてくる。
クリが軽く引っ張られて、
そこからじわじわ、熱が下腹に降りていく。
スイッチをひとつ上げると、
吸引のリズムが変わった。
断続的なリズムで、
まるで舌先で舐めるみたいに、ちゅっ、ちゅっ、と吸い上げてくる。
喉の奥がくぐもって、
膣が勝手に収縮する。
誰かの足音が聞こえる。
ヒールの音。会話。笑い声。
でも、そのすぐ隣で、
私は自分を慰めてる。
音を立てないように、お尻を浮かせて、
吸引をぴったりと押し当てて、
ひとりで、びくびくと震えてる。
吸引と一緒に、
空いていた手で乳首を触った。
服の上からでも分かるくらい、硬く立ち上がっていた。
撫でるたびに、吐息が漏れて、
クリがちゅっと吸われるたびに、
腰がわずかに跳ねる。
足が、震える。
つま先が立つ。
息を殺してるのに、心臓がうるさすぎて、
誰かに聞こえるんじゃないかと思って、
それすら快感に変わっていく。
イキそうになった瞬間、
外で誰かがトイレットペーパーを引く音がした。
バレる、聞かれる、誰かに気づかれる。
……でも、そのスリルが堪らなかった。
声を漏らしたら終わり。
でも、快感が、それを簡単に越えていく。
お腹の奥が痙攣する。
足の付け根が熱くなって、
クリがぎゅって収縮する。
イった。
けれど、満足できなかった。
吸引を止めずに、
もう一度、スイッチを強にした。
クリが、直に押し潰されて、
そこを吸われながら、指を奥に入れた。
ぐちゅっ、と濡れた音がして、
中がとろとろに崩れていく。
便座に座ったまま、足を少しだけ開いて、
膝が震えるのを堪えながら――
もう一度、限界まで持っていく。
誰にも聞こえてないと信じて、
でも聞かれていたらどうしようと怯えて、
その両方の狭間で、
二度目の絶頂を迎えた。
終わったあと、
便座に座ったまま、太ももを閉じた。
脚の内側がほんの少しだけ震えていて、
外の音が怖くて、
だけど、自分の中の満たされた感覚は――
何にも代えがたい。
誰にも言えない。
誰にも見せられない。
だけど、きっとまたやる。
今日みたいな夜に、また、誰かに見られたくなる。