もう、Hさんと会う事は無いかもしれない。今日は初めて綺麗な服を着て、髪の毛も染めていた。
あれから誘っても用事が有るとか理由を付けるから連絡も止めた。
思い当たる事がある。妻が数年前入院した時に、
「私が死んだら、Hさんに、後あなたをよろしくって言っといて。」
と言った。彼女は覚えていない。それくらい重症だったのである。
俺は一人暮らしをした事が無い。妻が入院してからは、休みの日は、同期の社員と外食をした。もちろんHさんもだ。
「ちょっと止めてよ。無理無理無理。」
俺が彼女に妻が入院する時めちゃくちゃ弱気で、困ったよ。とさっきのセリフの話をしたら、マジに大きな声で叫んでいた。
でも顔は少し嬉しそうだった。
妻の病気は中々治らず悪化していた。その話をしたら、
「そう、もう奥さん駄目かもね。」
と、他人事に言って、直ぐに違う話をしだしたのである。そしてとても楽しそうに喋っていたのだった。
妻の病状は奇跡的に回復し退院した。その事をHさんに電話したら、
「へー、治ったんだ。良かったね。」
と、なんかめちゃくちゃつまらそうな声だった。
今迄の事を推測すると、最初に俺が自宅に誘った時、もし彼女が承諾したら俺の人生は変わってしまったかもしれない。アイツは俺達夫婦の幸せの為に我慢したと、うぬぼれている自分がいたのだった。
if あの時彼女が自宅でお茶しに来たら?
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