その夜、僕は高橋のスマホに連絡した。布団に寝ながら西嶋の話を聞くことにした。
「じゃあ、話すね。中島くん」
高橋はどういうわけか、ボイスチェンジャー機能を使っていた。
「かほと裕也くんが初めて会ったのはかほが5歳のとき。初めて肌を晒したのは田舎の銭湯よ」
マジか。ラノベとかでよくある幼馴染設定そのものじゃないか。
「裕也くんがいい歳になるまで毎年の恒例として一緒に入っていたのよね」
毎年の恒例。いい歳って何歳までだ?
「でも一緒に入らなくなっただけで彼の目の前で肌を晒すという行為は終わらなかったのよ」
えっ?
「裕也くんが小学校高学年になったら、期間限定の番台さんにもなったの」
ただの客から番台?
「位置的には女湯が見える位置でいつもかほのほうをチラチラ見てたんだって」
それは見るだろう。年齢的に思春期に入った頃なのだから。
「かほと裕也くんはお互い進学しても番台と客の関係は変わらなかった」
おいおい。西嶋が小学校、中学校、さらには僕と高橋達と出会った高校時代まで続いたのか?
「あっ、今でも続いているらしいよ?」
・・・・・は?
裕也の奴は僕や高橋が知らない西嶋の姿をずっと見てきたことになる。
親戚の幼馴染という特権を使って裕也は西嶋の生まれたままの姿を、女として成長していく過程を、ずっと独り占めしてきたことになる。
幼少期は何も思わなかった西嶋の身体。その身体の成長を間近で見てきたのなら、性に目覚めた相手も西嶋かもしれない。
年齢的に一緒に入ることはできなくなっても、客として肌を晒し続ける西嶋を見ることができた番台の裕也。
彼にしか見えなかった光景はどんなものだったか。僕には想像もしてなかった裸の女神のオアシスがそこに広がっていたのか。
何もなかった胸に豊かな丸いふたつの果実が実っていくのを、腰が括れ、尻が肉厚になり、股間に黒い茂みが生い茂っていくのを。
だからこそあんなヌードが描けたのか。
「どう?これが私の知っているすべてよ」
「え?ああ、恥ずかしい解説、一応ありがとな」
「うん。じゃあ、おやすみ」
「ああ。おやすみ」
僕はスマホを切って複雑な気持ちの中、眠りについた。
それから数日後。高橋から久しぶりに連絡が来た。
「野島くん、また久しぶりー。かほのヌード、見事優勝だったよ」
「おお、それはおめでとう」
気分はあれだが、とりあえず僕は祝った。
「あとこの間はごめん!夜に連絡するとか言って寝ちゃって」
え?
「あれ?あの日の夜に連絡しなかったのか?」
「うん。してないけどどうかしたの?」
じゃあ、あの日の高橋は?
いや、そもそもボイスチェンジャーで声を変え、なおかつ西嶋から聞いたとされる話をまるで自分の事のように・・・
あまりにも詳し過ぎる西嶋と裕也の思い出話。
あの日の電話の相手。高橋のふりをした西嶋。お前だったのか?
高橋が何か言っている気がしたが、僕の耳には届いていなかった。
しばらく西嶋と会うにはかなり覚悟がいりそうだ。
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