「私を倒すために元の世界の人間の複製体まで使い、己の身体まで差し出す覚悟・・・恐れ入ったよ、森の巫女」
「私も裕也くんもその仲間も生半可な考えで邪神のあなたと戦っていないわ。さあ、お喋りはここまでよ」
怪人体のかほは刀を構えて私に向かってくる。私は素っ裸の裕也の姿で邪神の力を発揮させた。
水から鳥が飛び立つように湯から跳び、満月を背景に刀を振り上げる鳥怪人のかほ。私の目には美しい裸体で刀を振り下ろそうとする女の姿に映った。
愛する男のために覚悟を決めた女の裸と顔と眼。
そんな姿に思わず見とれてしまったのか、私の目は眼前のかほに集中し過ぎていた。
グサッ・・・
そんな音が聞こえたとき、私の胸から刀が突き出ていた。かほは一瞬のうちに私の背後に移動して私の背中、もとい裕也の背中を刺したのだ。
「邪神を相手にしているんです。卑怯だなんて思わないでください」
一切の躊躇がない、鋭い刃物のような覚悟の言葉。確かにこれを卑怯と言うには邪神としての示しがつかない。
かほの刀は私が肉体として利用している裕也の身体を物理的に貫いているわけではない。おそらくかほの巫女としての霊力の類だろう。
そしてそれだけではない。内側から少しずつ抵抗していた裕也の精神的な強さ、かほへの信頼もあったのだろう。
分が悪い上に邪神としての力を100%発揮できていない私は大人しく裕也の身体とこの世界から脱出することにした。
※元投稿はこちら >>