かほさんは刀を俺に向けてきた。
「! かほさん? これはいったい・・・」
「もう茶番はいいでしょう?裕也くん、いや邪神・・・!」
その言葉と共にかほさん・・・いや、巫女のかほの裸身は異形へと変わった。
白い肌はさらに白い彫刻のような質感を持った皮膚になり、胸と腰はコルセットのような柔軟な鎧に覆われた。
刀を握った腕は短く伸びた爪の生えた白い手袋のような形状になり、頭部には北欧神話のヴァルキリーを思わせる羽根の兜。
その後頭部からは鳥の羽にも短い女の髪にも見えるものが見え、頭頂部と額には鶴を思わせる意匠があり、口元は人間のままだ。
美術館にありそうでない芸術作品のような鳥の怪人が湯の中に立っていた。そして、その姿でも素っ裸で刀を持つかほの姿が目に見えるように浮かぶ。
「いつから気づいていたんだ?森の巫女よ」
俺は、否、私は裕也としての茶番をやめた。
「いつも何も最初から。あなたは巫女と戦う戦士にして私の愛する裕也くんの不意を突いてとり憑き、その顔と名前を悪用しようとした」
その推理は間違っていなかった。
「でも私たちはそうはさせなかった。あなたはこの村に前にいろんな女の子達やその恋人達をいいようにしていたんだろうけど、その人達はその人達本人じゃないわ」
「ほう。ではいったい?」
「この村もあなたがこの村に来る前に寄って来た場所も・・・いいえ!この世界そのものもすべてまやかしよ!私とあなたと、裕也くんと除いてね!」
どうやらこの世界は何かしらの能力で作り上げた偽りの世界だったらしい。私が今まで裕也の姿で楽しんできた相手は元の世界の複製体だったのだろう。
差し詰め、ここは見て聞くのみならず触れることができる夢幻の世界ということか。
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