★ 真偽と家族と
さすがに母正美は、そんなことはありえないと思えた。この少女はどんな意図で、自分を【息子】だと嘘をついているのか?!
理解に苦しむ正美。常識でそんなことはこの世にありえないことだと誰もが思い考えつく結論に至るのは必然なことであろう。
とにかく、少女の【嘘】を暴き、息子の行方と少女の目的を知らなければならないと考えた正美であった。
母、正美「あなたが本当につばさだというなら、何か証拠あるの?」...オーソドックスな質問ではあったが、返答によっては虚偽はすぐ判明するだろうと考えたからだ。
しばらく考えたつばさ、なかなか返答がでてこない...(ほら、ヤッパリ!!)
母、正美「つばさは、昔から嘘はつかないいい子なのよ!」...とっさに母の本音から出た言葉だった。
それをきいてつばさは、思いついたことがあった。
息子、つばさ:「お母さん!んじゃお母さんとボクしか知らない思い出を確認してみてはどうかな?ダメ?!」
とっさの思いつきだった。
(無駄なこと!)そう思いながらも、これで【彼女】の嘘に終止符を打てるのならばと、その提案に乗ることにした正美。
「それじゃ...。」と
正美は息子とのエピソードで印象深いモノをランダムにあげていく。そしてその返答をきくうちに、ことの真実を知ることとなった。母の顔から次第に血の気が失せていく。
息子からの【またぎぎ】だと仮定しても、ここまで正確に覚えられないし、答えられないと。質問に対し即答に近く、しかも自分の記憶違いに対して指摘までされて、それが正しいと思われるフシもあったのだ。
ひととおり、質問を終えた正美は、改めて自分を落ち着かせる努力を要した。...(つばさ!あなたはつばさ?!…どうしてこんな)
思わずつばさを抱きしめる正美。思わず「ごめんね!!」の言葉。なぜだか自然に涙がこぼれる。
正美:「なぜ、どうしてこんなことに?」
つばさ:「わからないよ、ボク!」
実は母が帰宅する前にいろいろ考えたなかで、この一連の原因は昨日の神社での祈願が災いしていることに気付いたつばさだったのだが、あまりに非常識な結論に至ったのだから、さすがにそれが原因ですって何も科学的な根拠もないまま主張するのはマズイし、主張したとしても信じてもらえないと思えたからだ。
母と息子は、やっぱり先々のことを不安に思い、家族がそろったうえで話し合い、今後の身の振り方を考えましょうということになった。
その日の夜、家族四人は、このにわかには受け入れがたい【大きな問題】について話し合った。さすがに両親はつばさの将来、健康について深刻に考えた。つばさの弟の翔(しょう)は
実の兄の変貌に、ただただ戸惑うばかりで意見が出なかった。ただ両親から気持ちを問われたときだけ返答があっただけだった。
弟、翔: 「あまり人には知られたくないよ~イジメとか冷やかしとかさ。俺の生活乱されなかったら、俺は別に…」 そういい放った。
父と母はとにかくつばさの身体と精神のバランスが大事で、健康面を優先すべきだという結論に至ったのだった。しばらく学校を休ませ、しかるべき医療機関を受診して、原因追求と治療方法を模索するべきだと思い立つ。それから法律にのっとって、戸籍、学校、身分人権の擁護を考えるべきだと思い立つ両親であった。
この日、家族のそれぞれが長い夜を過ごしたのでした。
~身元の確保の編へとつづく
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