★ 第四章 尿意とカミングアウト
つばさは部屋で、今後のことをいろいろ考えていた。いち男子高校生の思考でこの大きな問題に取り組むのは限界があった。
でも、【彼女】は、自分なりにどうすべきかを模索していた。
考え込んでいくうち、時間だけは刻々と過ぎていった。
いつの間にか時計の針は午前11時を指していた。
(あっ!ああ…)
つばさは、急に尿意を覚えて、戸惑った。...だがさすがに本能には逆らえない。つばさは一階にあるトイレに向かった。
さすがに常識で女子が、座って用を足すことは、わかっていたので、便座にすぐさま腰かけると、それと同時に尿が勢いよく排出された。
尿意を感じてから、用を足すまで、かなり切迫していた。考え事に夢中で尿意を感じていなかったからかもしれなかったが、
女子が尿意を感じたら、なるべく早くトイレに向かうべきことを、この時つばさは痛感したのだった。...それにギリギリ我慢をしていたら、オシッコがかなり周囲に
散らばることも分かった。用を足すときは衣服の汚れも考慮しなければならないことも学習するツバサだった。
つばさは今、とりあえずなさねばならないことが一つあり、それを理解していた。
自分では結局、一人でこの【大問題】を解決することはできないということ。やっぱり家族に打ち明けて、相談することしか解決の道は無いという結論に至った。
母の正美は41歳、今近くのスーパーにパートで出かけている。
(お母さん、もう少しで帰ってくるよね?!、早く帰ってきてほしいな)
午後16時過ぎ、母、正美が帰宅。
「ただいまぁ~!」 少し疲れた感じで母の声。
しばらくして、一階のリビングから、つばさの部屋に向かった正美であった。
部屋のドア越しに
母、正美: 「つばさ!具合はどう?病院は行ったの?」...(どうしたのかしら、普段は少々具合が悪くても、まじめに学校へは行っていたのに…。)
少しの間があり、部屋の中からつばさの声。
つばさ: 「ちょっと、大事な話があるから、部屋に入ってくれる?!」
正美はドア越しに聴く声がやはりいつもと違う感じに不安を感じつつ、ドアのノブを回した。カギはかかっていない。
つばさの姿を見た正美は、思わず尋ねた。
「貴女は、誰?...つばさの部屋で何してるの?...つばさはどこ??」
目の前の少女は、困惑する正美に向かって、懸命な表情を浮かべながら声を掛けた。
「お母さん、ボクだよ。僕はつばさだよ!」...っと。
~つづく
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