翌日の夜、ハルは女官達から身体中を洗いあげられ、国王の寝室へと送り込まれた。
その前に、女官は人払いをすると、ハルに言って聞かせた。
「良いですか!
お前は、国王様の、そしてこの国の大切な財産を壊していまいましたね。
その罪は重いと言うことは、分かっていますね!」
ハルは神妙に頷いた。
「女官様、その通りです。
ハルは罪人です。」
ハルは昨夜からの事を考えていた。
王様のお部屋から、この女官様から連れていかれた。
きっと死刑になる罪人が入れられる牢屋だろうと思っていたら、質素だが清潔な部屋に入れられて、毛布を与えられた。
「私の死刑は明日ですか?」
と聞いたが、
「国王様がお決めになります。」
と言われたきりで、ドアに鍵が掛けられた。
翌朝、女官様から、
「手紙は書いても良い。
ただし、自分が罪を犯して罰を受ける等、孤児院の先生を心配させる事を書くことはならぬ。
命令を受けて、近いうちに遠くに行くことになるが、落ち着いたらまた頼りを送る、そのように書きなさい。」
と言われて、立派な便箋とペンを与えられた。
先生が心配しないようにって事まで考えてくださって、女官様は優しいんだって感謝して、文面を考えてお別れの手紙を書いた。
これで良いですかって見てもらったら、女官様が何故か驚いたような顔をされた。
それから、急に何人もの女官様や召し使いの女の人が現れて、お風呂に入れられて、これまで着たことの無いきれいな服を着せていただき、これも食べた粉とのない美味しいご飯まで食べさせて頂いた。
途中で何度も、「私、死ぬから要りません。」と言ったのに、聞いてもらえなかった。
そして、夕方になって、再びあの女官様が現れた。
ハルはいよいよ自分の死刑が決まったって申し渡されるのだと思った。
女官様の言葉が続く。
「お前の犯した罪を死刑で償わせるのは簡単です。
しかし国王様は、別の方法で償わせるようにと申されました。」
えっ、死刑にならないの?
そんな事をしたら、王様の正義が失われちゃう..。
私、もう覚悟できてるのに!
しかし、女官が続けて言った言葉に、ハルは納得した。
「お前は、死ぬと言う瞬間の苦しみより、もっと苦しいかもしれない罰を受けてもらいます。
しかしそれは、国王様を喜ばせ、お仕事でお疲れになっている国王様をお慰めすることになるかもしれません。」
「国王様は、お前が昨夜、寒い中を裸でじっと耐えていた姿に、いたく感動したとの仰せです。
お前は、これからあのような恥ずかしく辛い事を、国王様の前で何度もされることに耐えらなければなりません。
もし、もう耐えられない、死刑の方が良いと言えば、慈悲深い国王様は、その時にお前に対する処刑をお命じになるでしょう。」
※元投稿はこちら >>