イワノフは表向きは軍務のデスクワークに没頭している様子だったが、頭の中は今夜春をどのように辱しめるかで一杯だった。
昼になった。
イワノフはデスクから立ち上がり、隊長執務室から出ると、煙草を吸いながら階段を降りた。
階段下のロビーで、10人程の兵隊や民間人が半円を作っている。
その視線の先には、二人の銃を持った警備兵に守られた、痩せた全裸の少女が立っていた。
イワノフにしたら、ちょっと不自然だった。
裸で晒されたドイツの少女は、皆恥ずかしさにしゃがみ込み、身体を少しでも隠そうとする者が多かった。
殆ど皆、両手で顔を隠して泣いていた。
それが、か弱い少女を精神的に虐める良い方法だった。
それなのに、昨日イワノフが純潔を奪った日本人の少女は、むしろ毅然として裸で立っている。
自分の身体が美しいと言う自惚れでは無いだろう。
まだ羞恥心を知らない幼子と言う訳でもない。
気が触れて、羞恥を感じなくなってるのでも無いようだ。
その証拠に、少女の頬には、幾筋の涙の痕があった。
こいつ..、俺に勝負してるつもりか?
まだ私は貴方に精神的に屈してない、と言いたいのか?
イワノフはちょっとイライラした。
イワノフが階段を降りて行くと、野次馬連中はどっと居なくなった。
イワノフが正面に立つと、春は日本人の少女らしく、両手を下腹部あたりに重ねて、深く頭を下げた。
礼儀正しいが、卑屈になってる様子はない。
こいつ...!
イワノフは、いきなり右手に持ったタバコを、春の左の乳首の直ぐ横に押し付けた。
いきなりの事に、横で見ていた警備兵の方が驚いた。
押し付けるのは一瞬ではなく、数秒間に渡って
押し付け続けられた。
皮膚が焼ける嫌な臭いがした。
春の顔が苦痛で歪む。
目と眉が激しくひそめられ、唇がひきつって、食い縛った白い歯が見えた。
悲鳴が聞かれると期待したのに、聞こえたのは
「くーっ..」
と言う息を吐く音だけだった。
押し付けられたタバコを払い除けようと言う手の動きも無く、身体を捩って逃げようとする動きを仕掛けたが、それも途中までで直ぐにまた気をつけの姿勢に戻ってしまった。
ただ、息は荒く乱れていた。
「こいつ、俺に挑むつもりか..?」
と言葉に出し掛けた時、イワノフは春の目に、抵抗や批難、嫌悪等ではなく、何かを真剣に努めようとする意志のようなものを感じた。
それは春にとって、自分がイワノフの持ち物になった事を、やり遂げようとする努力だった。
「弟の為に売ってくれた粉ミルクに見合うだけ、私を虐めて楽しんでください。」
それが春の心の中だった。
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