母は、戻った春の酷い姿に驚いた。
もんぺを脱がすと、下半身が血塗れだった。
膣に受けた裂傷から、まだ出血している。
母は泣いたが、春は反対にそんな母を慰めた。
「明日も行くって約束で、粉ミルクもらったの。」
もちろん母は、再び行くことを止めさせようとした。
明日再び行けば、きっと春は殺される。
それも、とても酷い方法で..。
日本の内地と違い、満州の過酷な自然の中では、そのに住む人間も過酷になる。
匪族から誘拐された日本人の女性が、散々犯された挙げ句、乳房と陰部を抉られて殺された、等の残酷な事件は数多くあった。
それが今度は、さらに酷薄残忍と言われているソ連の軍人なのだ。
まだ初潮があって一年も経ってない春が、膣を裂かれる残酷な目に遭っている。
それだけでなく、鞭打たれた傷が全身につけられていた。
母は必死に止めた。
しかし春は、父から教わった
「商売でも、さすがに日本人だ、と言われるようにしなさい。
誤魔化しをすることなく、誠を示しなさい。」
との言葉を裏切りたくなかった。
イワノフ中佐は、私に黒パンだけでなく、粉ミルクを与えてくれた。
もう私の身体の売買契約が成立して、代金の支払いも終わってるのだから、私はもうイワノフ中佐に売られてるんだ。
売られたなら、もう殺されても仕方ない。
母は一晩中、春の手を握り締めていたが、夜明けと共に、春はうとうとしている母の手を外して外に出た。
イワノフは朝の軍務の指示をしながら、頭の中では
「今日、どうやってあの少女を捕まえて、虐めてやろうか..」
と楽しみな計画を練っていた。
そこに、
「昨日の少女が来た。」
と宿舎の玄関を警備していた兵隊から報告があった。
自分から来た?嘘だろう?
そうか、何か逃げるための言い訳をしに来たのだろうな。
よし、その前に逃げられないようにしといてやろう。
イワノフは、通訳に玄関で待っている春に要件を伝えさせた。
通訳はイワノフに見られないところで、顔をしかめた。
要件は、
「一階のロビーで、全裸で立って待っていろ。」
だった。
占領軍の地区司令官がいる建物だから、軍人も、用事のある占領地の民間人も出入りする。
そこに、日本人の12歳の少女を、裸で立って待たせると言うのだ。
相手が性悪な商売女なら、それも良かろう。
しかし、あまりに酷いのではないか。
通訳は人並みに良心があったが、イワノフに意見したり、命令を放棄する勇気はなかった。
ため息をつきながら、命令を春に伝える。
この少女は泣くだろうか?
怒るだろうか?
しかし、春の態度は違っていた。
「イワノフ様のご命令、わかりました。」
そう答えた後、通訳には
「お伝えくださって、ありがとうございます。」
と言うと、軽く会釈したのだった。
そして、本当にその場で着ていた服を脱ぎ始めた。
草履、もんぺ、半袖シャツ、下はぼろぼろのシミーズにズロースだった。
全てをその場で脱ぎ、床に座ってきちんと畳んだ。
通訳も衛兵も、入ってきた兵隊や満州人も、見て見ぬふりはしなかった。
特に兵隊は、女に餓えている。
じろじろと遠慮なく、春の裸体を、特に膨れかけた胸と、痩せた腹部にくっきりと印された割れ目を見つめた。
イワノフの恐ろしさが行き渡っていたので、彼の物である春に直接手を出す者はいなかったが、これまで日本人から虐げられていた満州人には、いやらしい軽蔑した言葉を投げ掛ける者もいた。
通訳は、
「何か、私にしてやれることはあるか?」
と聞いた。
春は彼に、
「ありがとうございます。
でも、ありません。」
と言うと、真っ直ぐ気をつけの姿勢になって、顔を隠すこともしなかった。
春自身、恥ずかしくない筈はなかった。
「私は品物。すでに売り渡された商品。」
と必死に自分に言い聞かせてた。
じっと立ったままで、手で恥ずかしいところを隠すこともしなかった。
自分の意思に反して、涙が一筋目から流れ落ちたが、それを手で拭うこともしなかった。
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