ネム主席秘書官は、勤務時間終了と同時にデスクに足を上げるリオ執政官から呼び止められた。
「ハルから聞いたんだけど、君、俺と結婚したいわけ?」
いつもは氷の無表情の主席秘書官の顔が歪んだ。
やった!この攻撃は効くぞ!
との内心の喜びを押し隠し、リオは続けた。
「もしそれが本当なら、話しておかねばならないことがある。
明日の夜は空いてるかな?
家に招待したい。」
いつも甘やかしてくれない主席秘書官の顔が、青くなったり赤くなるのを見て、リオは極めて愉快だった。
翌日、今日は仕事で少しは手加減してくれるかなー?と言うリオの予想は外れ、いつも通りに山のような仕事をさせられた。
就業時間が終わった。
「さあ、帰りましょ!」
ハルが愛らしい笑顔と言葉でリオとネムを促す。
笑顔も声も可愛いのだが、同時にスカートを捲って白いパンツを二人に晒しながら太股のホルスターのモーゼル拳銃を取り出し、遊底を引いて弾が装填されてるのを確認していた。
「ハルちゃん、そのポーズ、私あんまり奨めたくないなー!」
「あっ、お姉様。ごめんなさい、つい癖で..」
おいおい!何時から姉妹になってるんだ?
リオは、本当に子供っぽい理由で腹を立てている。
ハルの笑顔は俺だけのものだ!
確かにハルはスタッフ達とも仲が良いのは分かるが、本当に、本当に可愛い笑顔は俺だけに向けてくれ!
と、思いながらも、それをネムの前で言えば
「ロリコン!」と片付けられそうで、とても言えない。
温かな夕食が終わり、リオとネムは軽いアルコールを前にして、にらめっこが始まった。
ハルは紅茶を前にして(昔はどんなに言っても水だけだった。)横にちょこんと座ってる。
やっとリオが動いた。
「俺と結婚したいって、本当か?」
「その通りです!」
敵も単刀直入か..。
「君と結婚しても良いが、ハルとは別れられない。」
「そうですか。それでは失礼します。
ごちそうさまでした。」
はっ、速い!少しは粘ってくれよ..。
えーっと、これからどう言うつもりだったつもけ。
決断力の無い指揮官に代わって、横にいるハルが言った。
「3人で暮らせばいいのに。何か不都合でも?」
今度はネムが弱くなる。
「ハルちゃん、貴女は、貴女はそれで良いの!」
「お姉様が奥様って呼び名が変わるだけですから。」
「でも、このロリコンをいえ、貴女のご主人様を私が取っちゃうことに..」
「ご主人様と奥様が必要ない時は、私隠れてます。
必要な時は三人で楽しんでも良いじゃないですか。」
あっけらかんとしたものだ。
「私、もともと奴隷のチルですよ。
今でも家の中ではペットと同じつもり。
やがて奥様になるお姉様、ご心配なく。」
やっとリオの出番が来た。
「子供が生まれたら..、ハルに子守りをさせてくれ..。」
ネム主席秘書官は、その夜、直属上司と直属の部下の家に泊まることになった。
こんな、こんな家庭って...。
リオとハルの生活は、古代ローマ時代に、あまり裕福でないローマ人が女奴隷を一人だけ買い、その女性を家政婦兼性処理に使ってるのと同じ..筈のなのに、実際の二人を見たら、年の差夫婦?仲良し兄妹?甘い飼い主としっかりしすぎる愛玩犬?
しかし、入浴の時から、本当のハルの姿が見えてきた。
ネムが一人で入浴しようとしたら、ハルがバスタオルを巻いただけの姿で控えている。
「どうしたの、ハルちゃん?一緒に入りたいの?」
床に膝まづいたハルの顔は、昼間の職場で見たものと全く違っていた。
「ご主人様から、お世話せよ、と命じられました。」
ネムは、まだ冗談だと思っていた。
「そこ、寒いでしょ。こちらにおいで。」
「いえ、お姉様が身体をお洗いになる時に、お世話いたします。」
何か、違う!これ、ハルちゃんじゃない!
そう思いながらも、年下の少女に弱味は見せたくない。
「じゃあ、洗うの手伝ってもらおうかな?」
「分かりました。髪の毛からお洗いします。」
「えっ、ハルちゃん。他の女性の洗髪なんて出来るの?」
「ご主人様がお姉様と結婚されたら、多分毎日洗ってさしあげられると思って、専門の人に習いました。」
えっ?普通、小姑が兄嫁にそこまでする?
しかもエッチしてるお兄さんを奪っちゃう憎い女だよ!
そのうち、首絞められるかも..。
しかし、ハルの指は素晴らしいしなやかさでネムの頭皮をマッサージし、手櫛で癖のある髪の毛をすいてくれた。
あぶな!これって、気持ち良すぎる。
髪の毛だけでもこれでは、リオがハルちゃんと別れないって言うわけだ..。
リンスが終わり、ハルはネムの身体を洗おうとし、濡れるのを避けるため、身体に巻いた腹をタオルを外した。
ネムは、リオがハルと別れないと言った本当の理由が初めて分かった。
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