ビオンの政府でも、テラと同じように人事異動はある。
主席秘書官は、これまでの気が良いがあまり強く出れない元スタッフのおじさんから、年齢こそ27だが、バリバリの女性に替わった。
「ネムと言います。よろしくお願いします。」
美人!スタイルも良いし、頭脳明晰。
押さえるべき所は押さえ、情けを掛けるべき所は優しく接する。
つまり、非の打ち所がなかった。
リオにとって、彼女は鬼門となった。
これまではデスク仕事がしたくない時は、ぐずぐずしてれば何とかなった。
どうしてもしなければならない時は、ハルが優しく言ってくれた。
しかしネム主席秘書官は、リオ執政官を甘やかしてくれなかった。
あと、テラの道徳哲学を信条とし、執政官が元奴隷を被保護者にしていることもよろしくない!とはっきりリオに言った。
執政官殿はちゃんとした人間と結婚し、子供をもうけて育てるべき、と主張する。
そのくせ、不思議と秘書官補佐のハルとは仲が良い。
リオとハルが肉体的な結び付きを持っているのは公然の秘密だが、新秘書官はハルに対してはその事を非難することは全く無かった。
ハルはもうすぐ15歳になろうかとしていた。
ある日の夕食時、雑談の中で、ハルが急に言った。
「私、子供を育てたいんです。
あやして、ミルクをあげて、一緒に遊んであげて..」
ハルが人工生命体のチルであり、生殖能力が無いのは二人とも分かっていることだ。
リオは複雑な気持ちになった。
落ち着いたら、施設から良い子を養子にして...
そう考えていると、ハルが今度は
「ご主人様、結婚なさってくださいませんか?」
と言い出した。
うん、今は戸籍法が改正されて、奴隷身分なんて無くなってるから..、
いや、結婚できる年齢は13歳から16歳からになったんだっけ。
「ああ、ハル。あと1年ちょっとして、お前が結婚できる歳になったらね。」
リオはそう言うとスープを口元に運んだ。
「私とじゃないです。ネムお姉様とです。」
リオは飲みかけのスープを吹き出した。
何であの女の名前が出てくる?
あいつはいつも俺のことを、だらしない、とかロリコンとか言ってるんだぞ!
「それは..、事実ですから...」
いやいや!あいつは俺の事を嫌ってるだろう!
「えっ?私、お姉様は最初からご主人様と結婚したがってるって思ってましたけど..」
リオは自分の感受性の無さを今さら悔いた。
俺が誰かと結婚したら、お前はどうなる?
「これまでご主人様にお仕えしてたのと同じ。
ご主人様と奥様のお二人にお仕えするんです。」
結婚した二人が何をするか、知らないはずないよな。
「はい、ネムお姉様なら、きっと可愛くて賢いお子さんを生んでくださいますよ。」
すまん、頭痛くなった。先に休む...。
その夜、リオはハルを抱きながらも、ハルの本当の気持ちがどうなっているのか、分からなかった。
久しぶりに、あそこの元気がなく、上手くいかない感じだった。
ハルが涙ぐみ、そっとリオの胸に指を触れて言った。
「ご主人様、ごめんなさい。私、ご主人様を困らせてしまって...。」
ああ、俺はどうしてハルの涙と指に逆らえないんだ!
リオの頭の中は別として、リオの肉体は元気を取り戻してしまった。
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