士官がハルに見せた書類、リオが死んだと言う事、全て嘘だった。
リオと民衆派の首脳部は危機を逃れ、形勢の建て直しにほぼ成功していた。
銀河規模の戦線では、テラ連合は再びビオンの連絡航路を確保し、すでにビオンの民衆派勢力への支援も到着しつつある。
貴族連合軍は崩壊しつつあった。
ハルのいる収容施設でも、脱走兵が次々と出ている。
囚人の取り調べ、拷問も無くなり、ハルは傷ついたその身をバラックの片隅に横たえてじっとしていた。
遠くから砲声が聞こえるようになり、囚人達も味方が近づいて来たのが分かった。
兵卒のほとんども脱走し、配食にあの親切な下士官が一人で回ってきた。
「もうすぐお前の仲間が来る。
わしももうお仕舞いだな。
捕まって銃殺か絞首刑かだな。」
と言って立ち去ろうとする下士官に、まだ胸の傷で休んでいたハルは起き上がってそっと言った。
「あなたがあの士官の巻き添えになる必要は無いのに。」
「いや、わしも早く逃げたいが、閉じ込められてる皆に食事を食べさせんわけにはいかんからな。」
「あなたが、私たちに密かに優しくしてくださったことは、ここの皆が知ってます。
きっと皆、あなたのために証言しますから..」
「わしの死んだ娘があんたくらいの歳でな。
あんたは不思議な娘さんだ。
あれだけ頑張ったんだ。きっと好きな人に会えってくれ。」
「ありがとう..」
その日の午後、民衆派軍の軍使が到着。
囚人達が戦闘の被害に巻き込まれることがないように、と収容施設の所長と交渉の結果、明日朝、施設はそのまま民衆派軍隊に引き渡されることとなった。
大混乱の中、ハルが休んでいるバラックに、あの士官が一人で来た。
周囲は敵意に満ちた囚人が取り囲んでいる。
「私を襲うなら拳銃で射殺する。
もうすぐ解放されるのに、死にたいならやってみろ。」
冷静に言い放つと士官はハルの寝ているところまで歩いて来た。
「結局お前の勝ちか。」
そう言うと、士官はじっとハルを見つめた。
彼の目に、ハルの目の中は、憎しみも蔑みも無いように見えた。
士官のハルに対する恐怖は消えた。
「私は、初めて女を好きになった..。
女としてハルが好きになった..。
歪んだ形だがな。
すまんな、それだけ言いたかった。
お前の大切な人のところへ行ってしまえ!」
ハルは小さく頷いた。
立ち去る士官の後ろ姿に「かわいそうな人..」と呟いた。
翌朝、収容施設は解放され、囚人のうちかなりの人数が病院へと送られた。
ハルを運ぶ担架が通る脇に、ずらっと解放された囚人や民衆派軍の兵士が並んで見送った。
ハルの存在は、囚人内では伝説のようになっていたのだ。
一週間後、ハルはビオンシティの病院で治療を受けていた。
酷く抉られた胸、断裂しかけた括約筋、全身の打ち身、栄養障害、衰弱、異常な薬物の後遺症等々。
身体の治療は長引くようだった。
ハルは治療されてる時以外は、催眠剤を投与され殆どずっと深く眠り続けていた。
目を覚ましてこれから起こることを考えるのは怖かった。
ご主人様にまた会えるだろうか?
ご主人様は只でさえお忙しいはず。
それより前に、私はご主人様に会う資格があるのだろうか?
自分の意志で、重症を負ったご主人様と別行動を取った。
ご主人様の財産であるこの身を、他の人のために使い物にならなくした。
誰でもゆとりが出来れば、古くて汚なくなった道具は捨ててしまう..。
お会いしたい。
お顔を見たい!
でも、その後が恐い..。
目が覚めてる時はそう考え、そして薬で再び深い眠りに落ちていった。
収容施設での恐ろしい夢も何度も見たが、起きて考える方が恐かった。
顔見知りだったリオのスタッフが、病院にハルを訪ねて来た。
戦いはほぼ終息した。
司令官兼臨時執政官殿は、ビオンシティに戻る。
公務が忙しいのに、どうしてもハルに会いたいとわがままを言い続けている。
まだテロが起きる可能性もあるので、警備体制などの問題もあるが、彼と君が出来るだけ早く会えるように我々も頑張る。
彼にとって大切な存在である君が、誘拐などで敵の手に渡ると大変なことになる。
身の回りには、十分に用心してくれ。
それから一週間後、病院の窓から向こうの道を通る凱旋パレードが見えた。
遠くからだが、確かにご主人様の姿が見えた。
お会い出来るのは、三日後だと言われた。
その日、ついにハルの心は壊れた。
医師や看護師の問いかけにも反応がない。
無表情でじっと一点を見つめたままで、飲食も拒否する。
精神科の医師が危険と判断し、ハルは病室に監禁された。
夜中に目が覚めたハルは、今の自分を客観的に分析してみた。
私、心も身体も壊れてる。
三日後、ご主人様のお顔だけ見たら、
私はそれで、おしまい....。
普通のチルの寿命の半分だったけど、不満はないな...。
その時、ハルはベランダから不自然な気配を感じた。
スタッフの警告が頭に浮かんだ。
滅びへと歩いていたハルの心が、一気に戦いの場へと駆け戻った。
何も武器が無いから威嚇的な抵抗は出来ない。
油断させて隙をつくしか無い。
昔あの家でやったように、一人でも犯人を確保出来たら上出来。
舌を噛むのはそれが失敗した後。
瞬時に判断出来た。
眠っているふりをする。
ベランダの引き戸が揺すられ持ち上げられて、枠から外された。
侵入したのは1人。
おかしい?
この、匂い..?
懐かしい。
ハルは目を開けた。
困ったような泣きたそうな顔をしたリオがいた。
「ご主人様あー!」
ハルは本当に泣いた。
二人とも何も話はしなかった。
外で小鳥が鳴き出すまで、ずっとハルは泣き続けた。
明け方の薄明かりの中で、リオは言った。
「ハル、大人になったね。
身体が良くなったら、抱かせてくれ。」
自分の身体のことを話そうとするハルの唇をゆびで押さえ、さらにはっきりとこう言った。
「今の、本当のハルを抱きたい!」
そしてその後、小さな声で
「今の俺、いやらしいかな?」
と聞いた。
ハルはプルプルと顔を横に振ると、リオに抱きついた。
リオは初めてハルの唇を吸った。
唇を割って舌を入れた。
ハルの柔らかな舌が触った。
ハルが密かに恐れていたあの薬の後遺症やトラウマは現れなかった。
いや、もし現れても、ご主人様なら赦してくださる!そんな思いだった。
リオの手が、ハルの左の胸をまさぐった。
乳首が硬くなるのをハルも感じた。
リオはハルの右の乳首が無いのを全く無視するかのように振る舞った。
左の薄い乳房を手のひらでそっと包み、じわっと力を込めた。
手のひらに小さな乳首が硬くなっているのが分かる。
そっと摘まんだ。
ハルが、はあーっ、と甘いため息をついた。
禁欲が続いたリオ自身、我慢出来なくなった。
「ハル、すまん!」
ズボンを脱ぎ自分を取り出そうとするが、もともと不器用なリオは、焦ってトランクスが下げられない。
ああ、ご主人様って、こんなこともあまり器用じゃないだ。
ハルは救われた思いで、手でリオの突っ張ったぺニスをトランクスから取り出してあげた。
しかし、小さく柔らかなハルの指に触られた途端、リオのぺニスは数年間自分が入院していた時と同じになってしまった。
「あっ、すまん、ハル!」
ハルはリオのぺニスを口に含んだ。
本当に、本当に私、またご主人様のを飲んでるんだ!
生きていて、良かった...。
もう朝になるからセックスは無理だ。
「ハル、早く元気になって退院してくれ。
またあの家のベッドで足を暖めてくれ。」
リオにズボンを履かせながら、ハルは顔を赤くして言った。
「お夜伽のご用なら、いつでも...」
「ハル、生きて帰ってきてくれてありがとう。」
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