かほさんは僕たちの姉のような存在でよく世話を焼いてくれた。みんなでたくさんかほさんに無理を言って甘えさせてくれた。もちろん、優しいだけではなく厳しい人でもあり、だからこそみんな好きだった。そんな人が母と同じ教師の道に進むのは必然だったろう。
時が経ち、かほさんは20歳の女子大生になった。少し長かった黒髪はロングストレートになり、いかにも大人の女性といった感じだ。ますます美人になったかほさんは村でも「べっぴんさんになったね~」と評判になった。
僕たちも高学年の小学生になり、かほさんのことを大人の女の人として認識していた。僕を含めて男子達はいつかかほさんと結婚してやろうと本気で考えていた。しかし、そんな想いは儚く潰えた。かほさんはこの田舎の出身ではなく、両親ともに都会育ちだった。大学進学に伴い、1人暮らしを始めて教育学部に所属した。教師としての経験値も稼ぐために家庭教師のアルバイトもしていた。その過程で教え子と結ばれてしまったそうだ。かほさんにとって僕たちは弟や妹のような認識だったのだろう。
おまけにその教え子はかほさんのお婿さん候補にもなった。その時の悔しさは例えようもなかった。僕を含めて男子達は人生で初めての失恋を経験した。
お婿さん候補となった男の名前は野島裕也。名前が西嶋家と似ているのは偶然ではなく、野島家も分家だった。
つまり出来レースだったのだ。僕を入れた男子一同は本当にムカついた。
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