春香が高級役人に差し出される前日、狭い家の中で親娘三人でいつものように貧しい食事をして、薄い毛布にくるまって三人で抱き合って寝た。
金持ちや高貴な方達と違って、貧しく卑しい身分の者達の別れはそれだけだった。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。身体を気をつけてね..。」
「お姉ちゃん、早く帰ってきてね..。」
家を出てからは、酷い人生しかなく、懐かしい家族にももう会えない、そう分かっていても、母と妹はこう言って春香を送り出した。
付き添いの小役人は、春香と目を合わせられなかった。
高級役人が宿泊している町で一番のホテルに連れていかれ、最上階に上がった。
高級役人の秘書に引き合わされたが、彼は自分の主人の生け贄となる春香を見ても「ああ、またか」と言う位の感情しか現さなかった。
「これに名前を書いて。」
事務的に置かれた紙に書かれた文章は難しく、春香には分かりにくかったが、ここまで付き添ってくれた小役人が小声で教えてくれた。
「生命も人権も、全部主人の持ち物になるのを承知します、って書類だよ..」
小役人は、これまで世話をしたことで春香に情が移っていたし、家族のために自分を犠牲にしたいと言う春香の健気さに好感を持っていた。
出来ればそんな春香に酷いことをさせたくない。
しかし、ここで春香が決心を変えてしまったら、高級役人から自分が悪い評価を与えられてしまう。
だから不安だった。
しかし春香は、ペンを取ると躊躇いもなく自分の名前を書いた。
「字が下手ですみません」
とだけ言った。
秘書は側にいた女性の召し使い二人に指示して、春香を別の部屋に連れて行かせた。
春香はそこで着ていた服ををすべての脱がされ、熱いお湯の風呂に入れられ、全身を洗われた。
美容のためではない。
卑しい身分の汚れや臭いが、高級役人に不快な思いをさせないための用意だった。
だから脇や股間も力を入れて擦られた。
痛かったが、それ以上に春香の心には、自分の汚いところを洗ってくれる召し使いの女性に対するすまない気持ち、それとやはり思春期の少女としての羞恥でいっぱいだった。
小役人は部屋の隅から春香の洗われた裸体を見て、「ほう!あの貧乏娘が..」と春香の思春期の女の子独特の美しさに感心していた。
痩せているし、顔や手などは日に焼けている。胸も薄くあばら骨も見えそうだが、貧しい乳房の先端には周囲の肌よりほんの少し濃い程度の薄い茶色の小さな乳首が見えた。
尻も硬い印象だか、それでも女の子らしい曲線を描いている。
ロリコンではない小役人にとって性的な興奮はなかったが、それでも思春期の少女の裸体は美しいものだ、と感じられた。
身体を洗われた後、春香は着るものを何も与えられず、二人の召し使いは春香の脱いだ服を全てまとめて箱に詰めた。
そして、春香が乏しい着替えや日用品を入れて持ってきた袋と共に、それを小役人に渡し、持って帰るようにと言った。
「それではこの娘の衣服などはそちらで与えてくださいますか?」
小役人の質問に召し使いはこう答えた。
「家畜には服も日用品も必要ない!」
春香が可哀想になり、小役人は自分より年も下である召し使いに懇願した。
「せめて、この娘の家族の写真くらいは持たせてあげたいのですが..」
しかし返ってきた返事は
「だめです。あなたは早くお帰りください。
殿様がこの家畜をお待ちなんです。」
小役人は大の男なのに泣きそうな表情になって春香を見た。
春香は無表情を装っていたが、目には涙が浮いていた。
しかし健気にその細い全裸の身体を小役人に向け、
「これまでお世話して下さってありがとうございました。母と妹をよろしくお願いします。」と言うと、深々と頭を下げた。
小役人は何か他に伝えたい事はないかと聞こうとしたが、二人の召し使いから
「殿様が来られます。」
との声と共に部屋の外に押し出された。
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