この社員寮の風呂は湯元から引き入れている、いわばかけ流しに近い風呂で5、6人は入れる風呂で社員には喜ばれている。
社長は社員の福利厚生には力を入れ給与もこの地方では高かった。
夕方の6時から8時まで社員は自由に使用でき、8時以降は寮母が使用し清掃は週二回とされている。
決まりは木札で表示され8時に寮母は社員が中にいないことを確認して木札で使用できない旨の表示をしてから風呂に浸かった。
美枝子はこの贅沢な社員風呂が気に入っていた。
足を延ばして体を浮かせる事もできる、内から鍵さえ忘れなければ誰に邪魔されることもなくくつろげた。
数か月もするとすっかり仕事にも慣れていた。
盆休みは殆どの社員は帰省する、九州や東北の社員が多くその間は美枝子はほとんど自由に出来る、今年は8日間の連休であった。
三崎とも親しくなって会話もするようになっていた。
「三崎君、盆休みは帰るの?」
「帰りません、どうせ僕には帰るふるさとはありませんから」
三崎の表情に少し影を感じ取った。
「そうなの、私もここにいるから部屋に遊びに来て、御法度なんだけど他の社員さんいないから」
どんな反応を示すか言ってみた。
「いいんですか・・僕の下の部屋ですからすぐ行けます」
三崎の顔に笑みが浮かんでいた。
休みに入った朝、美枝子は三崎の部屋をノックした。
「おはようございます」
まだパジャマ姿の三崎は目をこすりながら顔を出した。
「ごめんね、今夜のお風呂はどうする、よかったら8時以降でもいいのよ」
思いきって言葉をかけた。
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