母親とは違う、和風の朝食。味は薄めだったが、舌は『美味しい。』と感じている。ただ、気持ちは味覚の方には行ってはいない。
目の前に座って一緒に食事を始めた、新しい母親の方に向かっています。
物静かな、おとなしそうな母親だった。とても自分が産んだ息子と性行為を行っているようには女性には思えない、普通のおばさんです。
それでも興味津々で、なにか違う人種のようにおばさんを見てしまいます。
僕には確かめないといけないことがあった。息子である坂井さんが、仲間を盛り上げるためにウソを言っている可能性もある。
実際、この母親と近親相姦の関係にあるのかも、僕は全然知らないのです。
しかし、口に出して聞くのは恐いし、身体に触れるなどもっと恐い。なかなか難しいものだ。
『昨日、よく寝た?』と聞くのが関の山。こんな会話では、とても真実など引き出せそうもなかった。
新しい母親に見送られ、僕は仕事場へと向かった。工事現場に着き、すぐに坂井さんを探したが姿はない。やはり、飛び入りだったようだ。
ここで僕にある心配が生まれます。『母親を交換したならば、もしかすると坂井さんとうちの母が関係を持ってしまうのではないか?』と言うこと。
仕方ないとは言え、やはり息子としては考えてしまいます。
午後7時。自宅へと戻りました。もちろん、そこには静江さんが待っていて、帰った僕に夕食が差し出されます。
着ている服はおばさんのものらしく、かなり地味な色あいのもの。65歳くらいのおばさんですから、そんな感じなのでしょう。
食事を終えると、『お風呂。』と言われましたが、『もう少しして。』とそれを断ります。それを聞いた静江さんは、リビングのソファーに座るのです。
僕は、母の座るソファーに腰を降ろしました。テレビに目を向けながらも、少しずつ母との距離を近めていきます。
それは母と身体が触れたところで止まりました。生ツバが出て、緊張はピークです。しかし、静江さんに変化はありません。
気にする様子もなく、テレビを観続けています。そこで一つの確信がありました。うちとは違い、静江さん親子ではこの距離は当たり前ということ。
いつものことのようです。
その時でした。僕の右手に冷たい感触があったのは。静江さんの両手が、僕の手を握っています。更に指を絡まされ、恋人握りとなったのです。
それでも、彼女がこちらを見ることはありません。ずっとテレビを観ています。静江さんは、いつも息子の手に安心を求めているようです。
やはり、坂井さん親子は普通の親子ではないように思えます。
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