目が覚めたのは、朝の5時前でした。興奮をしているのか、普段では起きない時間に目を覚ましていました。
交換が行われる6時になるまでには1時間あり、この家にはまだ僕の母親が存在をしています。それをじっとしながら待つのです。
6時が過ぎました。この時間、もう母親は静江さんに交換をされているはず。それでも、起き上がることはありません。
耳を凝らし、彼女がキッチンに現れるのを待つのです。
7時前。ついに足音が聞こえ、キッチンからも物音がし始めました。僕は起き上がり、まだ見ぬ静江さんと会うために1階へと向かいました。
階段を降りる僕に、『はやいねぇ~?』と女性から声を掛けられます。その声は母親のものではなく、新しい母親に間違いありません。
キッチンに入ると、そこに一人の女性が立っていました。パジャマ姿ながら、かなり細い女性なのがわかります。
ただ、その後ろ姿からはその年齢が感じさせられるのです。坂井さんの書いた書類には静江さんの年齢は書いてなく、僕もうかつでした。
40歳の息子を持つ母親なのですから、60歳を遥かに越していることなど当たり前のこと。近親相姦に浮かれ、そこまでの気が回らなかったのです。
もう願いは一つだけ。『顔は整っていてくれ!』、それだけでした。
『おはよー。はやいねぇ~。』
そう言って、振り向いた静江さん。年齢は65歳くらいでしょうか。その顔から、お婆さんと呼ぶにはまだ若干の猶予はありそうです。
その顔を見て、少しだけ嬉しくなります。美人とは言いませんが、ちゃんとそれなりに整った顔を持っている方だったのです。
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