第7話 ミサキの過去、そして…
…
泣きじゃくるミサキ。
なぜかもらい号泣する愛理。
…やはりヒューマノイドの世界にも闇は存在する。
浸透してきたが故にヒューマノイドに対する虐待事例は多く、今だ奴隷のように扱われている事が多い。
近い将来、知恵をつけたヒューマノイドが集結し、人間社会に報復すると警鐘を鳴らす専門家もいる。
もしかしたら、そんな闇の実体の一部を今、垣間見ているのかもしれない…
「あの…タケル、ミサキちゃんをお風呂に入れてあげていいですか?」
愛理が俺に聞いてくる。
「え?風呂?
アタイは…いいよ。
ヒューマノイドがそんな事できねぇよ…」
困惑するミサキ。
「そんな事ないよ!
わたしは毎日入れてもらってるから潤滑液の揮発が少ないし、動きが滑らかになるよ!
ミサキちゃんも完全防水でしょ?」
「…いいよな…お嬢様生活してるヒューマノイドは…」
ミサキは俯いたまま愛理に言い放つ。
「ミサキちゃん…」
「だからアタイ、アンタみたいなお花畑のヒューマノイド見ていたらイライラすんだよ!
それを許すヘラヘラした人間にムシズが走るんだよ…」
どうやらミサキの闇は思った以上に深い。
俺にいきなり攻撃を仕掛けてきたのもこの辺りに理由があるのかもしれない…
…
ミサキ、過去に何があったかは知らないけど、確かに悪い人間も山程いるのは確かだよ。
でもさ、人間社会に伝わる古~い歌があるんだ。
その一節に
「いい奴ばかりじゃないけど~悪い奴ばかりでもない~」
ってある。
昔から人間ってワガママで傲慢な生き物だよ。
自分含めてね。
ヒューマノイドも元々人間の傲慢やワガママが作ったものなんだよ。
それを都合よく取る人間も大勢いる…
でもな、本気でミサキの痛みを理解しようとしている愛理に酷い事は言わないで欲しいんだ…
人間でも痛みを分かち合うっていうのは難しい事なんだ。
まだ社会生活データの少ない愛理がそんな優しい心を持ち合わせているのは、ワガママで傲慢な人間の少しだけ残っている良心がインプットさせたモンなんだよ多分。
キミにも元々はそんな「心」がインプットされていたはずだ。
俺も人間社会に疲れててね…(笑)
だから愛理に癒されてるんだよ。
だから、俺と同じようにヒューマノイドに癒しを求めていて、大切に扱う人間だって大勢いるんだ。
まぁ、俺はまだまだだけどね(笑)
「タケル…認識…しました^ ^」
愛理がニコッと笑う。
…
「バッカみたい…綺麗事並べてさ…」
「ミサキちゃん!」
「でも…認識した…」
あれだけつり上がっていたミサキの表情が和らぎ、控えめにニコッとした。
「じゃあ、フロ借りるぜ!タケル!」
「ミサキちゃん!待って!着替えいるでしょ!
わたしの服アゲルし、洗ってあげるから~」
「イイよ!バカ!」
…ゆっくり、仲良く入れよ(^^)
少しだけミサキも心を開いてくれたのかな?
…
柄にもなく説教じみた事いっちゃったな…
まぁ、ミサキが元気になればいいかな(笑)
…
30分後…
「タケル~チョット見てあげて下さい~!
ミサキちゃん、とってもカワイイですぅ!」
「バカ!恥ずかしいよ…」
メイド服を着た褐色の美少女が目の前に居た。
…か、かわいい…
「バカ!タケルまでジロジロ見んなよ!
恥ずかしい…」
「でしょ!ミサキちゃんの髪の毛綺麗…いいなぁ…」
愛理がウットリとミサキの髪の毛を撫でる。
愛理はチョットレズっ気あるのかな^_^;
「あんまりベタベタするなよ…」
ミサキも嫌がっている割に満更でもなさそうだ(笑)
「なぁ、タケル…アタイ…どうかな?」
恥ずかしそうに頬を赤めているミサキ。
カワイイよ!
すっごく!
「ホントか? もうお化け扱いすんなよな(笑)」
嬉しそうに笑っている。
「あ~タケル!わたしは可愛いくないんデスか?」
少しプクッとしながら愛理が詰め寄ってくる。
いや、愛理もカワイイよ^_^;
「じゃあ、アタマナデナデして下さい…」
ヨシヨシ(^^)/~~~
いつもの愛理へのスキンシップだったが…
「アタイ…マスターにこんな事して貰った事ないや…」
ミサキが俯いている。
俺は…
(^^)/~~~
「…?…タ…ケル….」
いい子いい子(^^)/~~~
「うわーん…」
ミサキは声をあげて号泣した。
余程辛い事があったのだろう…
俺はミサキの頭を撫で続けた。
愛理も俺にしがみついてきたので愛理の頭も撫でた。
両手で、ひたすら頭を撫でた。
…
しばらくしてミサキは過去を語りはじめた。
「アタイ、去年製造されたんだ…
ある裕福なマスターの元へ連れて行かれてたんだけど、他にも数体のヒューマノイドが居て、みんな召使いのように使われていた。
(ミサキの回想)
マスター
「今日からボクがお前のご主人サマだ。わかったな!」
ミサキ
「ハイ!ご主人サマとお呼び致します!」
マスター
「ヨシ!ミサキ。 お前はボクを悦ばせるのが仕事だ。」
そう言うとマスターは指を鳴らし合図する。
3体の女性型ヒューマノイドが現れ、マスターの服を脱がしはじめた。
その時シャツのボタンが飛んだ。
マスター
「何やってんだ!このウスノロ!」
…ボタンを飛ばしたヒューマノイドを平手打ちした!
「申し訳ございません…ご主人サマ…」
マスターは土下座するヒューマノイドを足蹴にした。
「もうお前はお祓い箱だ。
タニアを連れてこい、お前とチェンジだ!」
「待って下さい!ご主人サマ…」
「うるさい!連れて行け!」
警備員ヒューマノイドが彼女を連行し、新たにもう1体のヒューマノイドがやってきた。
「よし、タニア、踊れ。
ボクが興奮するような淫靡なダンスを」
タニアはストリップショーのように踊りながら徐々に衣装を脱いでいく。
他2体のヒューマノイドはマスターのチンポをしゃぶったり、イヤらしく全身を舐め回している。
「イイぞ~興奮して来た~」
ミサキはその異様な光景を呆然と眺めるしかなかった。
「よし、ミサキ!お前も服を脱げ!」
「ま、待って下さい…まだプログラムの準備が…」
…
マスターはいきなりスクッと立ち上がるとミサキを張り倒した!
「口答えするな!
プログラムなんてどうにでもなるんだ!
所詮お前はロボット、しかも性欲処理につくられた人形に過ぎないんだよ!」
そう言うと無理矢理ミサキの服を引き裂いた!
「イヤ…ヤメて下さい…ヤメて…」
「うるせぇ!お前に拒否権はないんだよ!」
ビシャ!
容赦ない平手打ちが飛ぶ。
「ご主人サマに尽くして初めて意味があるんだよ…
お前らヒューマノイドはな!」
そう言うとミサキの股を開き、無理矢理チンポを挿入しようとして来た!
「いやぁぁ…ヤメて…助けて!」
身をよじって抵抗する。
「オイ!マリエル、レナ!ミサキを取り押さえろ!」
二体のヒューマノイドがミサキの両腕身体をベッドに押さえつけた!
「手こずらせるのもまた一興だ(笑)
初モノの締りの良さはこの時しか味わえないからな…
それにしても黒ギャルタイプの巨乳っていうのも唆るなぁ…
クククッ…」
「イヤぁぁ…痛い…痛いよ…」
…
「アタイは無理矢理犯され、文字通りオモチャにされたよ…」
「酷い…酷すぎる…」
愛理は涙を浮かべている。
「でも、アタイの悪夢はまだ終わりじゃなかったよ…」
(再び回想)
マスター
「お前は反抗的だな。
もういい、用済みだ!」
ミサキ
「え!…」
マスター
「お前のような役立たずでも、欲しいっていう奴は山程いるからな(笑)」
そう言うとミサキの額にバーコードリーダーのようなものをかざした。
ミサキ
「…え!
あ…あ…認識不能…エラー…」
マスター
「ふふふ。これでボクの所有物の痕跡は消えた(笑)
ヒューマノイドの転売は法律で禁止されているからね。
ボクのような資産家はマルサに目をつけられやすい。
それに廃棄にするより識別コードを書き換えて転売する方がずっと経済的だ!
次のマスターにせいぜい可愛がってもらうんだな…ハハハ」
…
「アタイは識別コードを失い、しばらくエラーで動けなくなった。
だけどアタイには動作復帰プログラムが備わっていたおかげで動けるようになった…」
動作復帰プログラム?
「回路の故障やエラーで動けなくなっても自力で歩いてメーカーに戻る回路の事デス…
でも、なぜミサキはメーカーに戻らなかったのデスか?」
「多分、あのバーコードリーダーはメインOSに不正アクセスして識別コードを消し、さらにメーカー回帰回路を遮断する機能が付いていたんだと思う。
アタイを今度は他の人間のオモチャにして遊ぶために…」
酷い…
言葉が出ない…
「だから…俺は屋敷を逃げ出した。
でも、いつか電池切れするだろうし…識別コードのない状態ではOSのアップデートもできない…
そのうち人間に捕まるかもしれない…だから…」
人間を襲って、せめて腹立たしさだけても解消したかった…
って事だったんだな。
だけど、なんで俺を狙ったんだ?
「え?…それは…
あんまり愛理が…シアワセそうで…無性に腹が立って…
アタイはこんななのに…同じヒューマノイドなのに…
なんでアタイだけ…
そう思ったら…
だって、ヒューマノイドは自分よりマスターを守る本能が備わっているから…人間を痛めつける方がAIに痛手を負わせる事が出来るんだ…
だけど、こんなアタイに親切にしてくれて…
本当に悪かったよ…
ゴメン…タケル…
ゴメン… 愛理…」
もう、許してるから詫びはいらねぇよ(笑)
な、愛理。
「ハイ!もう許してますと認識してマス(^^)」
…
ミサキの壮絶な過去…
更にこのままではヒューマノイドとして生活できないかもしれないミサキ…
「タケル…どうにかできませんか?」
愛理が俺に聞いて来る…
「…と言われても…」
ミサキはスクッと立ち上がる。
「アタイはここを出るよ…」
え、もしかしてそのマスターの所に戻るのか?
「いや、もうアイツはアタイのマスターではない。
識別コードもないんだし…
でも、ここにいたらタケルが人工生命体法違反で捕まっちゃう…
それだけはイヤだし…」
…
「待ってミサキちゃん!
タケル、明日ラボの先生に相談しましょう!
あの先生なら相談に乗ってくれるハズです。
それに、先生が証人になれば「ヒューマノイドの一時的保護」であって、「不正ヒューマノイド所持罪」には当たりません!」
愛理…
どうしたんだ?
アタマ冴えてるなぁ!
そうだな!
それならラボも警察にすぐには通報しないだろうし。
「二人とも…アタイのために…」
…
夜はどんどん更けてゆく。
続く…
次回 「第8話 ハーレム・ナイト」
※元投稿はこちら >>