第6話 愛理とミサキ
…
昨日愛理のトラブルで仕事を休んだ…
まだ俺の勤める職場ではヒューマノイドの故障で休みは貰えない。
ちょうどケガや打撲痕がいい言い訳になり、なんとかやり過ごした(笑)
しかし、昨日は酷い目に遭った。
今日はゆっくり愛理と…ムフッ(≧∇≦)
仕事帰り、俺は公園をまたいで帰宅を急いだ。
…?
薄暗い公園の街灯下に人影が見え、俺の方に向かって来る…
黒い影は急に白い目を剥いて…
ギャー!
お、お化け…た…助けてぇ~
一目散に逃げようとすると…
「誰がオバケだよ!」
…!?
この声は聞き覚えがある…
「失礼しちゃうぜ…アタイみたいな美少女をオバケ扱いかよ(笑)」
…ミサキ!?
昨日襲われた褐色の少女型ヒューマノイド・ミサキだ。
なんでこんな所に?
なんで俺を付け狙うんだ!?
「別に付け狙ってねーし(笑)
安心しな。暴力も振らないからさ。」
…本当に?
なんか用か?
「…いや、その…なんだ…あの…」
…?
どうした?
「昨日のコトなんだけどさ…
あ…れ…」
ガチャン…
ミサキはいきなり崩れ落ちる。
どうした?ミサキ!?
おーい!
「え、エネルギーが…足り…ねぇ…」
こ、これは電池切れか?
ちょ、ちょっと待ってろ!
すぐにヒューマノイド・ラボへ連絡してやるぞ!
ヒューマノイド119番…
「ま、待ってくれ!ラボへ連絡するのだけは…やめて…」
な、なんだって!?
ヤバい、とりあえず充電だけでもしないと…
俺は公園のベンチにミサキを寝かせるとコンビニへ走った。
コンビニにはヒューマノイド用の非常電池式充電器とペットボトルに入った潤滑液を買い急いでミサキの元に戻る。
ミサキの耳たぶにあるピアスが充電用ジャックになっていて電極を接続する。
ミサキの口を開け潤滑液を流し込む。
確か電池切れのヒューマノイドにはこうやって復旧させるとマニュアルに書いてあった…
一体コイツの所有者は何やってんだよ…
10分後、ミサキは意識を取り戻した。
「…アンタが充電してくれたんだ…」
ああ、大丈夫か?
「な…なんで助けた?
アタイはアンタにケガさせてんだぜ…」
大したことないし、カスリ傷だ(笑)
「…ったく…余計な事しやがって…くっ…そ…」
ミサキは立ち上がって歩こうとするが、上手く立てない。
どうやら急速充電器だけでは電力不足のようだ。
仕方ない。
ウチの充電器で充電させてやる。
ホラ!
俺はミサキを背中におぶった。
「バ…バカ…
人間におぶって貰うヒューマノイドがどこにいるんだよ!
恥ずかしいから下ろせよ!」
夜だから誰も見てないし、歩けないんだから仕方ないじゃないか。大人しくしてろ(笑)
…
「好きに…しろ…」
また意識が落ちそうだ。
俺は急いで家へ戻った。
…
ピンポーン♪
「タケル、お帰りなさい!…え!?ミサキ?
どうしたんですか?」
愛理、話は後!
早くコイツを充電ボックスへ!
「ハイ!」
愛理用の充電ボックスのイスにミサキを座らせる。
愛理はミサキの額に手を当て、何かしている。
「…個体識別コード データなし…
AI HOSバージョン7.0 正常
電池残量3%…5%…8% 正常充電確認!
セルフメディケーションシステム 正常…
潤滑液残量25%…」
愛理は充電ボックスの潤滑液ノズルをミサキの口に入れ注入を開始した。
「この子…エネルギーが殆ど残っていませんでした…
潤滑液も75%流出しています。」
充電ボックスの蓋を閉めると愛理と俺はリビングへ戻る。
「一体、何があったのデスか?」
俺は今までの経緯を愛理に話した。
「そうだったのデスか…ミサキは多分、数日間は充電できてなかったみたいデスね…」
さっき、額に手を当てていたけどなんだったの?
「わたし達ヒューマノイドはヒューマノイド同士を識別したり、異常がある場合額に埋めてあるチップに手のセンサーを当てると状態が分かるようになっているのデス…
ただ、所有者を割り出すための個体識別コードが…無いんデス…」
無い?
どういう事?
ヒューマノイドにはそれぞれ個体識別コードがあり、それをしらへれば製造メーカー、製造年月、所有者情報が立ち所にわかる。
例えば愛理という名前を付けているヒューマノイドにも個体識別コードという本名がそれぞれに存在するのだ。
その識別コードが無い…つまり、ヒューマノイドにとってはその存在すら消された状態ということ…
「ミサキ…」
愛理の顔は曇っている。
なぁ、愛理、もし識別コードがないヒューマノイドだったらどうなるの?
…
「IT科学技術省の機関に捕まれば破壊処分だよ…」
ミサキ!
充電を終えたミサキが立っていた。
「そう…アタイには本当の名前すらないのさ…」
そうか…
ラボに行けばそれがバレ、IT科学技術省に通報される可能性があるから119番通報を拒んだのか…
ミサキ….
良かったら話してみないか?
そのワケを。
「アンタに話して何になるんだよ…
ムダだよ。
じゃあ、アタイは消えるよ…」
ミサキは外に出て行こうとする。
「ちょっと待ちなさい!
ミサキ、タケルに言うコトがあるでしょ!
あなたを助けてくれたんデスよ!
それにケガさせた事も謝りなさい!」
「いちいちウッセーんだよ!
この出しゃばりオンナ!!」
「なんですって!?
もう一度言ってみなさいよ!
この不良オンナ!!」
「なんだと!このぉ!!」
…だー!
やめろ!二人とも!!
…
「ゴメンなさいデス…」
「…」
愛理、いいんだよ。
別に礼が欲しくてしたんじゃない。
ミサキ、マスターの所へキチンと帰れよ。
じゃあな。
「アタイは…帰る場所なんてないよ…」
…えっ…
「だから…あのまま…電池切れで…終わりたかったのに…
余計な事しやがって…」
バチン!
愛理がミサキを平手打ちした!
「な…何しやがる!」
…
「…あなた…あなた…ねぇ…
余計な事?電池切れで終わりたかった?
何勝手な事言ってるの!?
ここまでミサキをおぶって連れ帰ったタケルの気持ちわかりませんか?
あなたに何があったかわからないけど、所有者でもないタケルが必死にあなたを助けた気持ち、ムダにする気デスか!?
どう思うのも自由デスが、同じヒューマノイドとして、親切にしてくれたヒトへの無礼が許せません!」
愛理は本気で…涙を流しながらミサキを諭している。
…
「ゴ…ゴメン…」
ミサキもさすがに参ったのか謝った。
「わたしに謝罪は要りません!
タケルに謝罪してください!」
もういいんだよ愛理。
「その…タケル…ケガさせて…ゴメンなさい…
あと、助けてくれて…ありがとう…」
ミサキは素直に謝った。
ミサキ、キミは社会不適合なヒューマノイドじゃないよ!
ちゃんと謝れたし、もうわかったからいいんだよ。
それに、愛理の気持ちもわかってくれたんだろ?
ちゃんと人や他のヒューマノイドの気持ちもわかるんだから優秀だよ!
「ホント?
アタイ…不良品じゃないの?」
俺は不良品だなんて思わないがね(笑)
「…初めて人間に…褒めて貰った…」
気丈に振る舞っていたミサキから大粒の涙が溢れ出した。
…
「ミサキちゃん…良かったね…」
愛理がミサキの手を握ってもらい泣きしている(笑)
「バ…カ…潤滑液入れ過ぎたから…溢れてるだけだ…」
きっとミサキは根は素直だったのだろう。
しかし…
消された個体識別コード…帰る場所のないミサキ…
過去に何があったのだろうか?
…
続く…
次回 第7話 ミサキの過去、そして…
*作者より
エロ要素なくてゴメンなさいm(__)m
またエロ要素復帰しますのでよろしくお願いします(笑)
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