コックピットに乗り込むだけなら、シートは1枚取ればよかった。しかし、全てのシートを取る必要があった。至るところに時限爆弾が仕掛けていたからだ。
彼女は、この機体を破壊しようとしていたのだ。ご丁寧に、コックピットには3個も取り付けられていた。余程の重要機密らしい。
まあ、スイッチが押されてないのが救いだ。
6時間後、機体と共に町に立っていた。後で聞いた話だが、僕よりも若い少年が、初めてロボットに乗り、敵のロボットを2機撃墜したらしい。
僕には考えられない。6時間経っても尚、コンピュータの自動制御に四苦八苦していたからだ。勿論、この制御がなければ、とても動かせる代物ではないが。
ここに居ても、いずれ死んでしまう。とにかく、コロニーを脱出しなければ…。そのためにも、仲間が必要だった。
機体を降り、生存者を探すことにした。誰もいないかも知れないが。難航すると思われた生存者探し。しかし僅か10分後、目の前に一人の男性が現れたのだ。
彼は、頭を包帯をグルグル巻きにし、うずくまっていた。僕は声を掛けながら近づいて行く。彼の反応がないことに不信を抱き、足を止めた。
彼を見ると、頭の包帯の耳の辺りから出血が見られた。負傷して、耳が聞こえないのかも知れない。存在を知らせるために、肩を叩こうとした時…。僕の身体は、再び停止をした。
うずくまった彼の前に、少女の死体があったのだ。その少女は全裸にされ、まだ膨らんでもない胸に舌を這わされていた。
腐乱が始まり、水分の奪われる死体に水が掛けられ、その行為は行われていた。この男、狂ってる…。
僕は、センターホテルに足を運んだ。残された方が集まっているかも知れないのを、期待してだった。
しかし、誰もいないロビー、誰もいないフロントを通り過ぎる。
客室に入った。部屋の扉は、緊急時のために全ての部屋のロックが解除されていた。どの部屋を見ても、誰もいない。そのうちに、探すのも諦め始めてしまう。
そんな時。『あれ?水の音が…。』、どこかの配管に水の流れる音がしていた。『上だっ!』と階段で駆け上がる。
9階に着き、『誰かいますかぁ~?』と大声で叫んで進む。しかし反応がない。そのまま、最上階に駆け上がった。
『誰かいませんかぁ~?』と再び叫んだ。静寂の続く廊下に目を凝らしていたが、変化はなかった。『いないかぁ~。』と諦めかけた時だった。
奥の扉が揺れ、作業着を来た男性が現れたのだ。『よかったぁ~!誰かいたぁ!』と喜び、駆け寄った。
『バキュ~ン!』と、僕の横を光が駆け抜けた。立ち止まり、『撃たないでっ!仲間です!』と叫ぶ。
作業着の男性の手には銃が握られていた。作業帽を深くかぶり、暗さとで顔はよく見えない。
『仲間です!仲間です!撃たないでください!』と、僕は見えるように銃を捨てた。
『そっち行きます。ダメなら、床に一発発砲してください。』と言い、近寄っていく。近づいて行くが、彼の銃口は僕に向けられ続けていた。
男性まで3mの距離まで近づいた。これ以上は、恐くて近寄れない。この距離で話をすることにした。
『仲間です!ピストルなど、ありません。』と両手を上げた。『何とか、コロニーを脱出したいんです。一緒に行きませんか?』と訪ねてみた。
男性は銃を胸の前で持ったまま、その場に座り込み、『助けて~!お願い!私に何もしないで~!』と泣き崩れた。
僕は作業帽に手を掛けた。同時に、長い栗色の髪が落ちてきた。『女だ…。』
※元投稿はこちら >>