「う……寒っ……」
半裸で眠ってしまった僕は冷えきった身体を震わせながら起きる。
「お、は、よ♪」
「う、うわあっ!!」
背後から突然抱きすくめられて、喉から心臓が出そうになる。
深夜だと言うのに大声を出してしまった。
「しぃ~……真夜中だよう?」
「ド、ドーラ?」
夢じゃ、なかったのか。
「まだ説明も残ってたのに、終わったらさっさと寝ちゃうんだもん……」
ドーラの言葉で、僕の脳裏を出会いからフェラチオまでのシーンがよぎる。
「ご、ごめん。あんなの初めてだったから……」
正直にそう言うと、ドーラは誇らしげに胸を張る。
すげぇおっぱい。
「でしょう?この時代のオナホールなんかとはワケが違いますから♪」
比べるところが人間じゃないのは、ロボットだからなんだろうか。
にしても、すげぇおっぱい。ばいんばいんだな。
「セクサロイド…あ、私たちセックス・オナニー用のロボットの総称です。…の、技術の結晶ですからね。」
そうかそうか。それならそんなおっぱいなのも当然だな。
「話……聞いてます?」
「ん……?」
「さっきからおっぱいガン見ですよ?」
「そりゃあな。
さっきはドキドキしてて余裕が無かったけど、今はお前が人間じゃないって分かってるし……
フィギュア鑑賞と思えば緊張も……」
「ナマミだとできないけど、ってこと?」
「まぁ、そういうこと。」
「相手と会話が出来てても?
チューリングテストくらい楽勝ですよ、私……」
「そこは考えないことにする。」
そう、見た目も、話ぶりも人間そのものだが……中身は鉄の塊。
熱い血の通わぬ鋼のマシーンなんだ。
恥ずかしがる必要なんてない。
「まぁ、それでもいいですけど……」
ドーラは説明の続きをしようと、床に散らばったパンフレットを集める。
僕はあぐらをかいてそれを眺める。
目の前でビキニのネコミミ美女が書類を拾い集める姿は、健康的なエロスとどこかシュールな笑いを感じさせてくれる。
いやぁ、眼福眼福。
「こほん。じゃあ続けますよ。」
はいはい。
「精液だけじゃ、赤ちゃんは出来ないのはご存知でしたか?」
「……保健体育はいつも満点だったんだ。」
「じゃあ、他に必要なもの、分かりますよね?」
絶対、馬鹿にしてる。
「卵子……だよね。」
他にも子宮も要りそうだが、未来ならカプセルの中で育てることも出来るだろう。
「ピンポーン♪正解です♪
つまり、あなたから貰った精液だけ有っても、未来の子供が増えるワケじゃないんですよ……」
「卵子は別で用意してるんじゃないの?」
「そこはそれ、色々遺伝子学上の問題があるんですよ。
具体的にはこの時代の卵子が必要なんです♪」
……もしかして。
「卵子探し、手伝ってくれませんか?」
「……下で母ちゃんが寝てるよ。
まだアガってないから、ジャンジャン持ってって。」
「三親等以内はアウトですよ。近親交配になっちゃいますから。
他にも結構制限が有ってぇ……
特に大事なのが、『精子提供者の本能的性行に合致する』って所なんです。」
「本能的…なんだって?」
言葉の意味が分からずに聞き返す僕に、ドーラはパンフレットの一ヶ所を指差して漢字を読ませる。
『本能的性行に合致する』=『好みのタイプ』……?
「要はその娘で勃起するか、ってことですよ♪」
ストレートすぎるっ!!
「な、なんでそんな……」
「あら、人間の本能って馬鹿にできないんですよ?
遺伝子的にイイ組合せを選び出すんですよ。
欠点を補ったり、長所を伸ばしたり……」
「へぇ……」
「ランダムに選ばれた組合せより、遥かに効率がいいんです。
受精の確率にも関わっているんじゃないか、っていう研究も有りますし……
そんなわけで、あなたに直に選んで欲しいんです♪」
「この娘がイイ、って指差せばいいの?」
「それじゃあ適当に選んだ可能性が有りますから……
直接セックスして、射精してください♪
受精させてくれたら手間も省けてベストですね♪」
そんな無茶なっ!!
「とはいえ、精子提供者のスペックを考えたら自由恋愛でベッドインなんてまず無理ですよね♪」
その通りだけど、腹立つなぁ。
「サポートするための道具を持ってきていますので、それを使えばラクチンですよ♪
特殊なシチュエーションに傾倒した性癖の方にも満足していただけるよう、色々と持ってきてますので……」
はぁ……
「じゃあ、ガールハントと行きますか♪」
胸の谷間からドーラが取り出したのは、プロペラのついた野球帽が二組。
……だから、どこに入ってたんだよ。
「じゃじゃあん♪『個人用飛行装置』ぃ~♪
どうせ車の免許も無いんでしょう?
繁華街までこれで行きましょう♪」
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