「…………はい?」
彼女が何を言ってるのか分からず、僕は間抜けな声で聞き返す。
「だから、未来から来たのよ♪」
「未来って……あの?」
「あの、って言われても困るけど……
その未来よ♪」
戸惑う僕に、彼女は続ける。
「三十歳の誕生日、おめでとうございます♪」
「へ……?」
先月のままだったカレンダーをめくると、今日の日付に赤丸がついていた。
「あ~…今日が誕生日だったっけ……
自分でもすっかり忘れてたよ。」
これで僕も「魔法使い」の仲間入りかぁ。
……分かってはいても、正直ヘコむなぁ。
「うふふ。そうガッカリしないでください。」
不思議な美女……ドーラは胸の谷間に手を突っ込むと、どこからともなく数枚のパンフレットを取り出した。
「え!? 今、ドコから出した?」
手品のような出来事に目をしばたたかせる僕に取り合わず、ドーラはパンフレットを床に広げる。
「えっとぉ……未来では少子化が進んで人口が激減するんです。」
指差されたパンフレットのグラフは急降下の右肩下がり。
おお、凝ってるなぁ。
「科学技術の発達で暮らしは良くなるんですが……やっぱり人間でなければ出来ない仕事もあるでしょう?」
そうかなぁ?
今の就職難を考えたら、とてもそうは思えないけど……
「そこで、未来の政府はあることを決めました。それは……」
それは?僕はドーラのホラ話が面白くなってきた。
「過去の世界で子供を残せなかった人に、子供をつくってもらおう、っていうプロジェクトです♪」
……はぁ?
「あなたは75歳で孤独死をする予定になってます。
その間の性交渉の回数はゼロ。生涯童貞ってことですね。
そんなあなたの遺伝子は未来の世界での干渉が少ないんです。」
うわ、さらっとヒドイこと言われた。
「そんなあなたの遺伝子を、未来の世界で役立てるために私が来ました♪」
「しかし……そんなこと言われても、信じられないなぁ……」
話が一段落したところで、勧めたペットボトルのお茶を飲むドーラ。
彼女が未来から来た、などとはちょっと信じられない。
「何か、証明できるものはある?」
と聞くと、待ってましたと言わんばかりに顔をほころばせて立ち上がる。
「しょうがないなぁ~♪」
ダミ声を作ってドーラはお腹を撫でる。
誰の真似だよ。
「じゃじゃあん♪実は私、ロボットなのです♪」
パカッ!!
へその上に縦に切れ目が入ったと思うと、そこから左右に開いて内部のよく分からない機械が剥き出しになるじゃないか!!
「あわわ……ほ、本当に、ロボット?」
「信じてくれましたか?」
にっこりと笑うドーラに、僕は首をガクガクと振った。
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