甲信越、関東、東海、東北、北陸、中部とブランドの店をあたるがボタンを取り寄せた客はゼロ。
店側が言うには
余程の不可抗力、人為的な力が働かない限りボタンは取れない。
しかも、ボタンが取れたとしてもボタンだけを取り寄せて、ボタンだけをお客様に渡すことなど考えられない。
ましてや、今後のために予備に余分にボタンを取ることなどあり得ないらしい。
きちっと、洋服を預かりボタンを縫製してお返しする対応をしているとのことで、コピー商品など預かる訳もなく縫製するような事は絶対にないと言うことである。
だが、
唯一の遺留品、手掛かりと見られるボタンで
あったが、店側の主張に捜査は打ち切られた。
九州の店舗で今年3月にボタンを注文した人物が居るのいたが、8ヶ月も前の事であり、やはり洋服を預かりボタンを縫製して返却していた。
8ヶ月前であり、九州と何ら接点もなく、コピー商品でないことは明らかで捜査対象外であるとみなした。
実際には
九州からツアーで日光の観光に訪れた婦人がチェックアウト間際に部屋で手荷物の金具かなにかを引っ掛けて、その金具を無理に取ろうとした際にボタンが取れて何処かに転がり、探したが見付けられずに
チェックアウトの際にホテルのフロントに事情を説明して,ボタンが出てきたなら連絡貰えるように申し出ていたのである。
で、
旅行から帰ってすぐにブランド店にボタンを注文して縫製してもらっていた。
ゼツが暗い中、無造作に二つあるボタンのうちのホテルで拾った本物のブランドのボタンの方を放っていたなら。
8ヶ月前のこととは言えゼツに捜査の手が延びていたに違いない。
ゼツは
幸運好運を呼ぶ長財布、横山幸恵が手にした黄色い長財布を大事に愛用している。
声にならない悲鳴、
モフモフとゴフゴフと
怯えた目
睨み付けるような目
涙目
食い縛る様な目、表情
これでもかと言うぐらいに目を見開き
毛細血管が浮き出た目
ガックリと首が項垂れた
鮮明に頭の中に瞼に刻みつけて
何もなかったように会社に行く毎日を送っている
幸運好運を呼ぶ財布を肌身はなさずに。
ー完ー
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