第六話 (約16枚) ~最終話
僕は急いで10秒くらいだけシャワーを浴び、下着もつけずにズボンをはいた。
そしてぐったりしている仁子を横抱きにして、シャワー室を飛び出した。
ブザーは鳴り続けている。
シンクロイザーで出なければならない。が、仁子はこんな状態……ならば普美しかいない。
僕は自分の部屋に飛び込み、失神している仁子をベッドに寝かせて毛布をかけると、いそいで「始動室」へ駆け込んだ。そこにはすでに、スーツ姿の普美が来ていた。
僕はとっさに叫んだ。
「脱げ!」
「え!?」
「シンクロイザーは、肌と肌が触れてるほうが強い……僕も脱ぐから普美も脱げ!」
「は、はい!」
有無を言わさぬ僕の勢いに、普美はおそるおそる、スーツのジッパーを下ろす。
僕はそれよりも早くズボンを脱ぎ捨てマッパになると、まだのろのろしている普美のスーツをはぎとった。
「嫌ぁっ! 乱暴にしないでください!」
ちょっとぐずっている普美を膝に乗せると、僕は座席に座った。普美と僕の肌がじかに触れ合う。それに快感を感じた。と、普美が振り向いて嫌そうに言った。
「滝斗さんから、仁子ちゃんの匂いがします……」
僕はドキッとしたけれど、誤魔化すように座席を射出させた。
座席がコクピットに飛び込む。シンクロイザーを始動させようと普美のあごに手をかけると、いつもは素直な普美が逆らった。
「仁子ちゃんと、何してたんですか?」
このころには普美と仁子の二人は愛称で呼び合うようになっていた。が、妙な対抗心は消えてないようだ。
「答えてください。何をしてたんですか!?」
普美が涙目で僕を責めてくる。
「おい、始動できないよ!」
「答えて!」
完全に普美は臍を曲げてしまったようだ。
「正直に言うけど、怒るなよ?」
「はい。」
卑怯な言質だ……でもしかたない。
「裸で体をいじり合ってた。」
普美の表情に、ショックが見て取れた。
「でも、最後まではしてない。」
だから何だというのだ。自分を責めたい気持ちと、とにかく急がなきゃという気持ちの葛藤で引き裂かれそうだ。
「今の滝斗さんとは、キス、したくない。」
普美がぷいっと顔そむける。でもそんなこといってる場合じゃない……
僕は普美の頭を掴んで強引にこちらを向かせ、唇を押し付けた。まさに「奪う」といった感じに。甘い感触とともに、しょっぱい味もしたような気がした。
それでもシンクロイザーは起動し、ランプが次々と点灯した。
「ユニット、プロト3を確認。パイロット、時田滝斗を確認。シンクロイザー、始動。」
普美が涙をこぼしながら抗議する。
「ひどいです……無理やりするなんて。」
かわいそうとも思ったが、やさしい言葉をかけてあげてる余裕は無い。といって「ごめん」と謝るのもなんだか変だ。
僕は無言のまま、普美の薄い微乳を手で覆い、発進に備えた。いつもなら吐息を漏らす普美が、今日は体をこわばらせて耐えている。もうひとついつもと違うのは、スーツ越しでなく生乳だということだ。
「カタパルト始動、シンクロイザー発進!」
前方からのGに引き続き、モニタに青空が写る。いつもの発進情景だ。僕も操作に慣れてきていたから、左右の手のひらと指を使って「操縦桿」である普美の胸とそのピンク色の先っぽを、上下左右に転がした。
シンクロイザーは操作に反応して空を飛ぶ。だが、普美は少し呼吸音を強くしているほかは、歯を食いしばるように力んで、反応しないようにしている。
それが、前二回の敏感すぎるまでの反応と違っていて、とんでもなく新鮮さを感じさせた。平家物語だかに出ていた「万度(ばんたび)、処女の如く」っていうのはもしかしてこういうことなのだろうか? なんていう考えが頭に浮かぶ。が、普美はもともとまだ処女のはず。自分の考えを自分で否定した。
そうこうしているうちに、魔機が迫ってきた。今度の魔機は、スライム状の物体だ。それが意思をもっているようで、ぶるぶると半球状の一塊となり、森の木々をのみこんで転がってくる。飲み込まれたものは融けてしまうようだ。
「液体なら、熱線で蒸発させるのがいいな。」
僕はつぶやいて、下手に地面に降り魔機の進路に巻き込まれたりしないよう、空中を移動した。
「普美、熱線砲だ。いくぞ。」
僕は自分のものを普美の股の間に当てて、前後させた。が、普美は応えない。あいかわらず体を硬くしたまま、力んで耐えている。
「普美、だめだよ、感じなきゃ。」
「……嫌です。」
か細いつぶやきが聞こえた。
「私……仁子ちゃんの『次』じゃありません……私……私っ!」
肩が微妙に振動し、普美が嗚咽しているのがわかった。
それはそれでサイコエネルギーになってはいるようで、シンクロイザーは安定した周回軌道を描いている。が、性感があるときと違って、胸や乳首で操ろうとしてもどうも微妙な調整が利きにくい。
必死に腰を動かして擦りつけ、胸も刺激し、背筋に舌を這わせもした。だが、普美のそこは湿って汁をたらしてはいても、本人が気持ちよくなっている様子が無い。
「だめだ、これじゃ……」
熱線砲はあきらめ、普美の口の中に指を突っ込む。音波砲のスイッチだ。
だが普美は歯を強く閉じて、それ以上奥へは行かせようとしない。
「おい、だめだってば!」
「らって……らって……」
まだすすり泣き続けている。
逆に、落ち着いてサイコエネルギーが下がってきたらしい。シンクロイザーの飛行高度が落ちてきた。
「あ!」
どんどん落ちていったシンクロイザーは、とうとう魔機の中に墜落してしまった。そこは半球状になった粘液の塊だったから、クッションのようになって衝撃は少なかったが、シンクロイザーごとスライムに飲まれてしまった。
「まずい…! 脱出しないと!」
だが、普美が体を硬くしているため、シンクロイザーの力が発揮できない。
と、モニターに写っているものが僕の目に飛び込んできた。
「溶けてる…!」
シンクロイザーの手が、スライムの粘液に溶け始めている。もはや、迷っている場合じゃない……。
僕は普美の方向を変え、こちらを向かせた。正面から抱き合う体勢だ。
「普美、こうなったらシンクロニウム弾を試すしかない。」
「……私の処女を奪うんですね? 仁子ちゃんとさんざん遊んだもので?」
目をそらして口を曲げている。
「普美!」
僕は、手で無理やりこっちを向かせた。
「仁子とは、最後まではしてないって言ったろ! 初めては、普美とがいいんだ!」
普美に動揺はみられたが、まだ納得しきれてない様子だ。
「記憶喪失で目がさめたとき、僕が最初に見たのは普美だった。そして君を見て安心した。普美となら、どんな苦しみでもきっと乗り越えられる。……ずっと一緒にいたいんだ、普美と!」
「滝斗さん……」
「……好きだよ、普美。」
「わ……私も!」
普美が、ようやく自分から抱きついてきた。
唇を重ね、舌を絡める。仁子よりすこしやわらかい感触の唇が触れ、これも仁子と違う未熟な味の液体が、口の中に広がった。
「シンクロイザーをテストしている間は、普美だけを選ぶことができないんだ。わかってくれるね?」
「はい。」
いつもの素直な普美に戻った。
下も、充分に濡れている。
「入れるぞ。」
「入れてください。滝斗さんので、私を大人にしてください……。」
その言葉が終わらないうちに、僕はその先端で普美の入り口を探り出し、できるだけ痛くないように一気に刺し貫いた。
「あっがっ……くわはぁぁぁああぁっ!」
絶叫が耳をつんざき、僕のそこに、愛液とはちがう液体の感触が混ざった。狭いコクピットに血の匂いがかすかに漂う。
「いっ、痛……いいいっ」
普美の涙を指で救う。
「力を抜いて……僕に任せるんだ。」
「はい。」
普美は僕にしがみつきながら、身を任せようと努力した。
僕のあそこにも、信じられないような刺激が走り続けている。仁子の口の、包み込むような感じとはまったく違う、搾られるような感覚だ。
僕はその感覚を夢中でむさぼりながら、どこか醒めた目で見ている自分もいた。
さっき普美に言ったことは嘘じゃない。でも本心かと言われると正確でもない。いま、たまたま普美の純潔をを貫いてしまっているけれど、場合によってはこれは仁子だったり、いやもしかすると他のプロトだったかもしれないんだ。
普美以外のプロトだったとしても僕は、きっと似たようなことを言っただろう。……最低だ。
そう思うと、そんな僕にしがみついて涙を流している普美も、こんなつまらない男に処女をささげたつまらない女に思えてきた。
「あっ……中で! 中でおっきくっ!!」
普美が涙声を上げる。僕のそれは、さっきより熱く固くなっているようだ。
そのとき、僕はふと気がついた。そうか! 仁子のことを、僕は大切にしているような気がしていたけれど、もしかすると侮蔑していたのかもしれない。
「性交するときは、相手のことを大切に思いすぎるより、つまらないものと思ったほうが、かえってうまくいく──」
「養生訓」の教えだ。だから、普美より仁子との快楽の方が大きく、溺れそうになってたのかもしれない……!
そんなことを考えながらも、腰は激しく動き、普美の中を僕のものがかき回していった。螺旋を描いて、また前後に、軽く軽く深く、さまざまなリズムでそれは普美を犯していく。
普美も、もう体が伸びきってしまい、顔はよだれや涙で汚れている。僕は、それを舌で舐め取った。
最低同士。侮蔑しながら愛している……。
そう思うほど僕は快感の中に自分がいるような感覚になり、そのときが近づいていることを悟った。さらに激しく突き入れる。少しでも、少しでも深く、普美の中へ……。そして、先端がなにかにこつっと当たった。子宮口と、ペニスとのキス……2度、3度、4度。
「普美! 愛してるぞ!」
「! 私も! 私も愛してます、滝斗さぁん!」
その声が終わらないうちに、普美が僕を抱きしめる腕に激しい力がこもった。普美の薄い胸が僕に押し付けられて、鼓動が伝わってくる。僕のものを包み込んでいる膣にも、根元のほうから絞るようなぜん動が走った。
僕はもはや耐え切れなくなり、その熱いエネルギーを、普美の中にこれでもかとぶちまけた。
「はああああああっああああっ!」
叫んで硬直した普美が、だんだんと脱力する。そこを締め付ける膣の力もだんだと弱くなっていく。が、普美が脱力してしまっても僕は、何度も何度も普美の中に腰を突き入れ、快楽のエッセンスを注ぎ込み続けた。
だが次第に白濁していく脳裏では、なぜか普美でなく仁子の中にそそぎ込んでいる感覚もあった……。
ふと気がつくと、僕は医務室のベッドに寝かされていた。
「あっ、よかった、滝斗、目が醒めたのね!」
いきなり視界いっぱいに女の子の顔が広がり、首を抱きしめられた。
驚いているうちに、その女の子が手を放して、心配そうに問い掛けてきた。
「憶えてる? 私の名前、憶えてる?」
「え? プロト2……仁子、じゃないの?」
「わーーーんっ! よかった!」
仁子がまた抱きついてきた。胸から嗚咽の振動が伝わる。
「また記憶喪失になったら、どうしようかと思った……」
「うん、大丈夫みたいだ……憶えているよ、全部。……全部だ。」
そう。僕の名は時田滝斗(ときた・たきと)、高校三年生。時田歌貴人(ときた・うたきと)博士の弟で、シンクロイザーのテストパイロット。兄貴に借金があって、体をカタにとられたんだ。で、訓練中の事故でここ数日間、記憶が飛んでいた。
その間、人間や合成人間のいろんな女に遊ばれたけど、いまだ童て……いや。
「普美は!?」
僕はがばっと起き上がった。
仁子の顔が曇る。
「まさか……。」
「私より、やっぱり普美の方がいいの?」
「そ、そういう問題じゃないだろ! 無事なのか!? それとも……」
そのとき、
「滝斗くん、目が醒めたって?」
あわただしく医務室に入ってきたのは遙さん……狩畑二尉だった。そして、その後ろに…
「普美っ!」
「滝斗さんっ!」
僕はベッドを飛び起き、頭に包帯を巻いている普美に抱きついた。よかった…よかった…涙がこぼれる。と、同時に全身に痛みが走って、普美から離れて転倒しかけた。普美と仁子が手を貸して支えてくれる。
「滝斗さん、無理しちゃだめです!」
「バカ滝斗……まだ怪我が治ってないんだから。」
「うん……うん……ありがとう。やさしいね、普美も、仁子も。」
フン、と向こうを向いた仁子は、それでも少し顔を赤らめていた。
「怪我が治ったら……この前できなかったことを、するから、覚悟しときなさいよ?」
「できなかったこと?」
仁子が耳元でささやく。
「今度こそ私の処女でイかせて、普美で童貞捨てたことを後悔させてあげるんだから!」
「あっ……!」
僕が顔を赤くすると、反対側で普美がしがみついてきた。
「滝斗さん……仁子ちゃんとも仲良くしますから、私を用済みなんて言わないでくださいね?」
「そんなこと言わないよ……」
なんとかベッドに戻され、狩畑二尉の説明が始まった。
「シンクロニウム弾の実験は失敗。威力は充分だったけれど、シンクロイザーも破壊されたわ。でも、魔機の活動も止まったみたい。。シンクロイザーのテストはしばらくできないし、これで滝斗くんは元の学生に戻れるわね。」
「すると……普美や仁子ともお別れってことになるんですか!?」
「たしかに、プロト2とプロト3はもう不要だわ。」
普美も仁子も、すがるよな顔をしてこちらを見た。
「でも、合成人間が自然加齢とともにどうなっていくかは、研究しておく必要があるの。普通の人間であるパイロットと一緒に生活できるかどうかもね。」
「え……てことは!」
朝。あわただしい雰囲気の中、僕は学校の制服を身につけて玄関で靴をはいている。扉の外では仁子…古弐谷仁子(こにや・にこ)が
「早くしなさいよ、グズ滝斗!」
と不平をこぼしている。そして小さな声で
「まったく。もう許してって言ってるのに……明け方まで何度も、何度も。もう壊れちゃうかと思ったわよ。」
とつぶやいて顔を赤らめた。
「しょうがないだろ、仁子も普美も気持ちよすぎるんだから。」
僕が小さく答えると、仁子も真っ赤な顔で向こうを向く。それから僕は後ろに向かい、
「普美! 洗い物は帰ってきてからでいいよ!」
と叫んだ。台所から、制服姿の普美…三船普美(みふね・ふみ)が、弁当箱を3つ持ってやってくる。
「お弁当のおかずは、中華炒めのトマト風味です♪」
「わかった、ありがと。でも急いで!」
よく晴れた空の下、3つのトマト……いや3人の人影が駅への道を走っていく。
「復学初日から遅刻か~!」
「私たちなんか、転校初日から遅刻よ、グズ滝斗の所為で!」
「僕の所為かよ!」
そこへ、普美が右から僕の腕に抱きついてきた。
「でも、寝るときも食べるときも……遅刻まで滝斗さんと一緒なんて、私、幸せです。もう一生このままでいたいな。」
肘に微乳の感触があって少し慌てた。
それを見た仁子も、左から腕を絡めて胸を押し付けてくる。
「わ、私だって、グズ滝斗が一緒に暮らしたいんなら、ずっとこのままでいてあげてていいんだから。感謝してよね!?」
「わかったわかった、でも走りにくいだろ!」
僕たちはそんな関係で、普通の学園生活を楽しんだ──僕たちの前に志郎……男性型のプロト4が現れ、次の戦いが始まったその日まで。
── 完
※元投稿はこちら >>