第三話 (約14枚)
魔機の触手がシンクロイザーの脚に絡んだ。まずい! 僕はとっさにそう思い、プロト2の足の付け根、敏感なふくらみが割れ目を守っているところに指をつっこんだ。
「かっ!」
プロト2が喉からの悲鳴を上げる。連動してシンクロイザーの脚が触手に抵抗するが、どんどん引っ張られていく。
負けないように、割れ目の内側を人差し指でなぞった。
「んひぁぁぁっ!」
プロト2が僕の腕を掴み、涙とともに叫び声をあげて、脚をばたばたさせた。同時にシンクロイザーも脚を振り回す。が、触手のパワーに勝てない。
「腕だ!」
僕は気がついて、両手の指を立て、プロト2の胴からわきの下までをなぞった。
「んはあっ!」
プロト2はまたも鼻声を上げ、両腕をすぼめる。シンクロイザーの腕にエネルギーが行き、触手を掴んだ。そして引きちぎろうとするが、これは無理っぽい。
シンクロイザーのエネルギーを最強にするには……遙さんの声がよみがえる。
『ぶっちゃけ、イッちゃった瞬間にリミットいっぱいの力を出せるのよ。』
「よし、プロト2、イッちゃえ!」
僕は必死になって手探りでプロト2のクリトリスをみつけ、右手の指で激しくこねくり回した。同時に左手は右の胸に当て、指で乳の先を弾き続ける。かすかに香水の匂いのする髪を掻き分けて、舌もうなじを這わせた。
「ひっ……んあっ、んあっ…」
涙目になり、明らかに感じている。が、なかなか絶頂を迎えない。
「早くイけってば!」
「イくもんですか……指だけでイかされたりするもんですか!」
「そんな意地を張ってる場合じゃないだろ!」
プロト2が振り向き、涙目で僕をにらみつける。
「私をイカせたいんなら、せめて……せめてあなたも一緒にイキなさいよ!」
その言い方に、僕はカチンときた。僕のものは、遙さんとの未遂でずっと屹立しっぱなしだ。意を決すると、その熱く堅くなったものを取り出し、露出してるプロトの性器に当てた。
「ひっ! ちょっと! まさか私に入れる気じゃないでしょうね!?」
「……安心しろ。僕の童貞はお前なんかにやらない。」
その代わり、腰を前後させて、それをプロト2の割れ目にこすりつけた。トロトロの粘膜が上からそれを包む。温かい液を分泌しているその粘膜に、激しくこすりつける。
両手も忙しく、脇腹から胸、首筋から耳と、少しでも性感のありそうなところを愛撫し続ける。
「んっ…んぁっ…んぁっ…!」
プロト2の呼吸がだんだん激しくなる。僕のほうも限界が近づいてきた。割れ目だけでなく、豆にも当たるように擦りつけた。
「んぁっ、だめ……イッちゃう! 先にイッちゃう! ダメ、私が先はダメ!」
「大丈夫だ、僕も後からイくから!」
「いや! 私が先はイヤ! 早くイッて、早く!」
首を横に振るプロト2。でも、容赦なく僕は攻め続ける。僕にも、わけがわからなくなりそうな快感が下半身に走り続けた。
外では、シンクロイザーが魔機の触手に絡まれてもがいている。
「イッちゃえ!」
「いやあああああ!」
プロト2の頭に手を当て、こっちを向かせる。涙目で激しく息をしているその唇を、強引に奪った。すると、プロト2の方から舌を入れてきた。僕の舌とプロト2の舌が触れ、絡んだ。
次の瞬間、プロト2が背をえび反らせる。わずかに遅れて、僕の下半身にもなにか律動が走った。射精だ……思考を失いそうになる脳裏でそう思った。
……素股で、一緒にイッてしまった。
その瞬間、シンクロイザーは胸から熱線を発射した。熱線は魔機を包み込むように伸び、本体を溶かしていった。
コクピットに、電子音声が流れた。
「ミッション、コンプリート!」
魔機は撃破できたけれど、なんだか嫌な気持ちが残った。
失神寸前で、胸を激しく動かしているプロト2を後ろから抱き支えるように、僕は、始動室の隣にあるシャワー室へ入った。
「ほら…自分で立てよ。」
脱力してるプロト2をシャワーブースの中に立たせ、ぬるま湯を浴びさせる。
「洗って。」
壁に寄りかかったままプロト2が命令口調で言った。
「自分で洗えよ」
「あんたが汚したのよ?」
たしかにプロト2の腹部には、僕から出た白い液体がこびりついている。
「ちゃんと、一緒にイッてやったんじゃないか。」
「……屈辱だわ。グズ滝斗にイかされるなんて。」
言い捨てたプロト2に僕は怒りを覚え、腕を掴んで壁に押し付けた。シャワーのお湯が僕とプロト2の髪にふりかかる。
でも、冷静に考えている自分もいた。
こいつは負けず嫌いなんだ。僕に負けたと思うのが嫌で、必死にがんばってるんだ。そう思うと、なんだかかばってやりたい気もしてきた。
そう考えた上で、僕はこう言った。
「僕だって屈辱だ。プロト2なんかにイカされたんだからな。でも気持ちよかったのは否定できない。だからお前の勝利だよ。」
「ふ、ふーん。負けを認めるの?」
「ああ認める。プロト2は僕がイかされたくらい気持ちいい女だった。それは認めざるをえない。」
プロト2は、満足げな笑みを見せた。が、僕は続ける。
「ただ、好きじゃない。それだけだ。」
「! 私だって、あんたみたいなテストパイロットは願いさげよ。」
「じゃ、そういうことで。」
話はついた。僕は背を向けて、隣のシャワーブースに入った。
「好きじゃない」はずのプロト2の汗が、僕の肌にもこびりついている。が、汚いという感じはしない。遙さんほどではないけれど、でも普美よりは成熟に近づいた、甘酸っぱい匂いがシャワーで落とされていくのが、なんだか惜しい気もした。
そんなことを考えていると、先に終わったらしいプロト2が、こちらのシャワーを覗き込んでいるのが見えた。
「わわっ! 覗くなよ! エッチ!」
反射的に男のものを隠す。
「あんなことまでしといて、いまさら……」
「あれとこれとは状況が違うだろ!」
不思議だ。座席で抱いてるときと、シャワーを覗かれてる時ではたしかに感覚が違う。
「あのさ……」
「なんだよ!」
「あんたのことは、私も好きじゃない。」
「もうわかったよ!」
「だけど、ああいうことくらい、またさせてあげてもいいから。」
「……………………は?」
ああいうことって……もしかして素股?
「またしたいの?」
僕が呆然とつぶやくと、プロト2は怒ったように顔を真っ赤にして怒鳴った。
「ちょっと思っただけよ! 別に深い意味は無いんだから、誤解しないでよね!」
そう言うと、体にタオルを巻きつけてさっさと出て行ってしまった。
僕は疲れた気持ちでぬるま湯を浴び続けた。
喫煙所……というらしい。この施設の廊下の一角に、自動販売機やソファ、そして灰皿が置いてあるところをみつけた。
そこで僕は、疲れきってタオルを顔に当てソファに寄りかかっていた。
と、前を誰かが通りかかる気配を感じた。
「……普美?」
声をかけてタオルを取る。立ち止まってこっちを見ている普美がいた。でも、さっきまでの笑顔はない。
「よかった……部屋に戻りたいんだ。教えてくれないか?」
「プロト2に聞けばいいじゃないですか。」
「!?」
なんだか、態度がよそよそしい。
「どうしたんだよ、普美?」
普美がこっちをにらむ。なんだか涙目になっている。
「滝斗さんは狩畑二尉やプロト2としちゃったんでしょ? 指だけの関係の私より、もう他人じゃないあの人たちと仲よくすればいいじゃないですか!」
僕は頭が混乱してわけがわからなかった。
「なんか誤解してないか、お前……」
「滝斗さんにお前呼ばわりされるいわれはありません!」
普美は、ぷいっと目をそらすと、廊下を走り去ってしまった。
呆然としていた僕は、頭の中を整理した。
「普美は、僕がプロト2と最後までしちゃったと思ってて、自分は指だけだったから、それを怒っている? …え、それって?」
いや、まさかね……と僕は首を振った。
紆余曲折の末、ここの職員という人に自分の部屋に連れて行ってもらうことができ、ようやく僕は休むことができた。
殺風景な部屋だ……窓も無く、ベッドとクローゼットがあるだけ。クローゼットの上には文庫本や雑誌が何冊かつんである。なぜか古典の本が多い。ぱらぱらめくってみると、日暮硯、徒然草、養生訓、などだ。記憶を失う前の僕にはこういうのを読む趣味があったのか? たしかにいくつかには読んだ記憶があった。
なのに相変わらず、今日、目覚めたとき以前の肝心な記憶が何も無い。シミュレータの事故で記憶を失ったらしいとはわかったものの……敵である魔機とはなんなのか? そして、プロトと呼ばれてる女の子たち……3と2ってことは、1もいるんだろうか? まさか、4とか5とかもいたりして……? だいたい、この施設はなんなんだろう? 遙さんが二尉ってことは、自衛隊関係? それと……僕って本当に童貞なんだろうか?
などといろいろ考えているうちに、僕は眠りについてしまった。
顔に甘い息がかかったような気がした。この匂いは覚えがあるぞ……目をあけると、緊張した顔で目をつぶって顔を近づけている女の子がいた。
「プロト2? 僕の部屋で何やってんの?」
口を開くと、そのコは慌てたように身を離した。
「べ、別になんでもないわよ!」
「キスしそうに見えたけど……」
「そんなわけないでしょ! 狩畑二尉が、グズ滝斗を起こしてこいって言うから来てみただけよ!」
起こすのになんで、息がかかるほど唇を近づけるんだよ……そう心の中でつぶやきながら、身を起こして洗面所に向かう。
寝起きの口の中には、う▲こ10gに匹敵する細菌が繁殖しているという。うがい・歯磨きして、それを洗い落とした。時間は7:30……たぶん朝の。着替えようとすると、プロト2がまだそこにいた。
「もう起きたよ?」
「あんたをつれてく責任があるの。早く着替えなさいよ。」
「じゃ、あっち向いてて。」
「し、仕方ないわね。」
プロト2が背を向けた。僕は着替えはじめる。ちらちら盗み見ているのはわかるけれど、言ってもしょうがない。
「そういえば、僕は『プロト3の方がお気に入り』とか言ってたね。あれってどういう意味?」
「どういうも何も、あんたが好きなのはプロト3でしょってことよ。」
「そうなの?」
プロト2がこっちを向いて主張する。
「だってそうでしょ。プロト3には『プミ』なんていう名前まで付けてさ。」
僕はなんとなくピン、ときた。
「そうか、じゃあ君にも名前を付けよう。」
プロト2に一瞬だけ浮かんだ笑顔を、僕は見逃さなかった。
「プロト2だら、『プニコ』でいい?」
が、すぐ不機嫌になる。
「嫌よ、そんなロリプニみたいな名前!」
「じゃ、プを取って『ニコ』。漢字で書くと、『仁子』。かわいいと思うけど、どう?」
「かわいい?」
「うん。似合うと思うよ。」
「『仁子』!」
プロト2……『仁子』は満足げに大きく頷くと、はっと気がついたように笑顔をやめて、背を向けた。
「し、しかたがないわね。それで我慢してあげる。」
でも、なんだか耳が赤くなってるようにも見えた。
結局、着替え途中を見られてたことに気がついたけれど、それはもう問わないことにした。
そうして、狩畑二尉の待つ「作戦室」へと仁子の案内で僕はついていった。
── つづく
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