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空想・幻想小説

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2
投稿者:有松真理亜
◆p503wDVxoE
「神官さんいらっしゃっい」(約33枚)

作:有松真理亜



「王子っ!」

 その場に似合わない、転がるような声が響き渡る。いっせいに、酔客たちの視線が入り口に向いた。

 下町の酒場……といっても裏さびれた小さな店ではなく、かなり盛ってるサルーンだった。数多くのランプがきらびやかに萌え、着飾った酒場女が客の間を行き来して場を盛り上げている。テーブルではサイコロやカードを使ったギャンブルが行われている。奥のカウンターの中には樽や便が並び、3人のバーテンダーによって上級からどぶろくまでさまざまな酒が提供されていた。

 そんなサルーンの入り口に、あまり似つかわない人物が…この職業の人々に独特の大きな帽子をかぶり、聖印の刺繍された胴衣を長衣の上にまとって、同じく聖印の銀細工を載せた杖を手にした少女……もしくは若い女。

 小柄だが、起伏はある。酒場女が思わずジェラシーを感じるくらいの、女神官にはもったいない程度のバストも持っている。ただし、青系の衣の色が、まだ正規の神官位を得ていないことを示していた。つまり、見習の女神官がこの悪所に飛び込んできたわけだ。

 酔客たちの視線は、入り口から、次にこの女神官のにらみ付ける先へと動いていった。

 バーカウンターに、貴族の坊ちゃん風の若い男がいた。名をアセルスタンという……北方系の王朝が治めるこの国の王子だ。お忍びでこんな悪所にやってきたのだが、遣り手の年増女と何か話していたらしい。

 だが、女神官に呼ばれてしまい、驚愕し絶句してる遣り手女の前で、「あっちゃぁぁぁ~……」とつぶやいて舌打ちした。

 そこへツカツカと、

「王子っ! 城では大騒ぎですよ!? シルヴィア姫様との結婚式が4日後に迫っているというのに! 側近の私たちの立場もお考えください!」

 女神官は、必要以上にプンスカした様子で王子に詰め寄った。

「あ、いや、それはだな、シーナ……」

「もしかして……この結婚、お嫌なんですか?」

 なぜか微妙に嬉しそうな顔をしてしまう神官・シーナ。が、王子はそんなことに気がつかず、

「政略結婚に嫌も応もないだろ」

「じゃあ、なぜ……」

 王子に詰め寄る見習いシーナの目には、涙がにじみかかってるようにも見えた。

 王子は周囲を見た。さっきまで騒がしかった酒場がシーンとなり、全員の視線がこちらに注がれている。

「とにかく、ここでできる話じゃないから……」

 年増女に形だけ詫びるとと、王子はシーナの背を押してサルーンから出た。



「つまり……問題は結婚にあるんだ」

 王子は夜の小道を歩きながら、言いにくそうにつぶやいた。

「お相手のシルヴィア姫様に、何かご不満でも?」

「名前しか聞かされてない相手に不満なんか持ちようないだろ。自分の側に自信が無いんだよ」

「自信?」

「つまり……結婚生活を、ちゃんと行えるかどうかの自信だ」

 意外そうな顔でシーナは目を見開いた。

「王子に、自信がないなんてことあるんですか? 内政では担当地域の減税政策で経済が上向いてかえって増収、戦争では敵の大軍を奇襲と示威で犠牲も少なく撃退、外交では敵国と和平どころか有利な攻守同盟まで成立させて、音楽や絵画にも造詣があり、医学や数学にも通じるなど、まさにオールマイティな方なのに」

「それは、有能な内政官僚、参謀、交渉家、芸術家、学者など、ベテランの専門家の下でそれぞれ経験をつんで練習済みだったから、こなせたんだ」

 王子はため息をつく。

「だけど……男女の交わりについては経験が無い。それができないと、夫婦生活はうまくいかないって聞いた。だから、ベテランの娼婦に練習をお願いしようと……」

「ま、まさか……商売女で、ど、どっ……そのっ、つまり、童貞切ろうとしてたんですか?」

「うん」

 立ち止まったシーナの顔がたちまちゆがみ、悪魔のごとき形相が浮かんだ。

「ダメですっ!」

 絶叫が響き渡る。

「シーナ?」

「姫様との結婚はしかたありません、政治ですから。でも王子は、そんな下賎な女としちゃダメです! 不潔ですっ!」

「不潔って……彼女らだってビジネスだ、評判のいい娼婦なら衛生にはちゃんと気を使ってるだろ。それに職業に貴賎は無いっていうし」

「じゃ、そこも譲ってもよろしうございます。でも、王子の初めてをそんな女にあげちゃダメです! ダメったらダメ! 絶対にダメっ!!」

「ダメったって……」

 興奮してまくしたてるシーナを、アセルスタンはあしらいかねた。

「貴族の令嬢や、ましてや既婚者に頼むわけにもいかないし。宮廷にいる離婚者や未亡人に、このことを政治的に利用しないでくれそうな相手も見当たらないし」

 ちなみに中世ヨーロッパの王侯貴族には親族の妻女に初体験の指導をしてもらう習慣があったというが、この世界には無いようだ。

 シーナは怒りにハー、ハー、と息を荒げながらも、王子のつぶやきに言葉が次げなかった。しばらく黙り込んでいたシーナは、息が整ってきてからつぶやいた。

「……ようするに、あとくされなしで練習のできる女が要るってことですね?」

「ああ」

「じゃあ……」

 シーナはうつむいて、しばらく言いにくそうにしていたてが、やがて意を決して顔をあげ、自分の胸に手を当てた。

「私で! 私で練習してください!」

「……シーナで!?」

 王子が驚いたのも無理は無い。修行中の身で性行為をすれば、神官への道は閉ざされたも同然だ。いままで何年も修行し勉学してきたことがすべて無駄になってしまう。

「そうなっちゃってもいいのか?」

 アセルスタンも言葉に詰まりながら、なんとかそんな質問を口に出せた。

 シーナは顔を真っ赤にしつつも、力のこもった目でアセルスタンを見つめ続けている。

「よろず万端、王子のお手伝いをすることが、大神官様に命ぜられた私の役目です」

「たしかに君が側近になってくれてから一年、いろいろ相談に乗ってもらったり用事を頼んだりはしたけど」

「でも、政治や軍事に充分な知識の無い私が、それほどお役に立ってきたとは思えません」

「そっちはおいおい勉強してくれればいいさ。君のような秀才なら、将来は軍師にだって……」

「……ただの軍師とかじゃ嫌ですっ!」

 言ってしまってから、シーナはハッと気づいて口に手をあてた。が、アセルスタンにはわかっていない様子。

「とにかく……王子にお悩みがあるなら、身も心も投げ打ってそれを解決するのが私の役目! ……どうか、手伝わせてください。 お役に立たせてください!」

 シーナの目は燃えている。

「それとも、私じゃダメなんですか? 私なんかとでは、お嫌なんですか!?」

 その燃えている目から涙がこぼれ始めた。こうなるともう、男に逆らうことは難しい。



 場末の連れ込み宿の、薄暗いランプの灯の下。ベッドに腰掛けて寄り添いあった二人だが、どうもギクシャクしている。手が触れればビクッと引っ込め、衣が触れただけでもビクッと身を硬くする。

 この固い雰囲気をほぐそうと、アセルスタンは話を始めた。童貞男が性行為を前に「語り」を始めると、そのままやらないで終わってしまうという望ましくないパターンもあるのだが、そんなこと彼は知らない。

「それにしても意外だったな」

「何がです?」

「シーナに性経験があったなんて」

「!」

 シーナは一瞬、複雑そうな表情をしたが、すぐに取り繕った笑顔に変わり、上から目線になる。

「お、女は、いろいろ経験してるんですよン」

「じゃ、よろしくご指導をお願いしようか。まずどうすればいい?」

「そうですね……まず、そっと手を握ってください。やさしく、やさしくですよ?」

 そっと、彼がシーナの手を握る。

「(きゃあーーーっ、手ェ握られちゃった! 王子に手ェ握られちゃったぁっ、きゃあああっ、きゃあああっ!)」

 シーナの心臓はもう爆発寸前だが、それを悟られないように必死に平静を装う。それでも、息が早くなったり顔が真っ赤になったりしてくるのは隠し切れなかった。

「次は?」

 彼の声にハッとするシーナ。

「つ、次は……キスです、そう。キス!」

 彼が、ドキドキしながら待つシーナの額にそっと唇をつける。

「やんっ、そういう親愛のキスじゃなくって……恋人同士みたいなキスです」

「でも、シーナとは結婚できるわけじゃないんだから……」

 王子の一言は、舞い上がっていたシーナの心に冷水を浴びせ掛けた。

「(そうだった……私、結婚できるわけじやない。王子にとって、これはただの練習なのよ)」

 シーナは上目遣いで彼を見つめる。

「(勘違いしかかってたけど、私、別に愛されてるわけじゃない。王子のお相手は、あくまでシルヴィアとかいう姫様……)」

 なんだか涙が出かかった。

「シーナ? やめようか?」

「なっ……やめないで!」

 シーナはあわてて頭を振った。

「でも、なんか嫌そう……」

「嫌じゃありませんよ! 私、王子のお役に立てることが最大の喜びなんです。それに、敬愛する王子に抱きしめられてキスしてもらえるなんて、夢のようで、私、嬉しい」

「じゃ、続けていいのか?」

「続けてください。次はキスですよ? 恋人のように、やさしいキス」

 それでも戸惑っている彼にシーナは、

「いいですか? これは練習だから、ノーカンなんです、ノーカン。キスしようと、やさしい言葉をささやこうと、永久の愛を誓おうと……最後までやっちゃっても、終わったら綺麗さっぱり忘れていいんです。だから……」

 自分で言っていてシーナは、感極まってきた。

「今だけ……恋人だと思って、思いっきり、これ以上は出来ないってくらいに愛してください……」

 そう言って、彼の胸に顔をうずめる。

 驚いた王子だが、なるほどと納得して、やさしくシーナの髪を撫で、背に手をまわして抱き寄せた。

「(ウソみたい……王子と抱きしめあうなんて、こんなの、ウソみたい~!)」

 ぶるぶると震えがくるシーナ。

「……こわいの?」

「ち、ちがいます。これは、嬉しくて震えてるんです」

 シーナが顔をあげる。上気して潤んだ目に、吐息の甘い香りが漂って王子もドキッとした。

「だから、やさしくキスして……それから、したいようにしてください。はげしく愛してください……」

 最後まで言わせず、彼はシーナと唇を重ねた。

 濡れた、やわらかくて暖かい感触……そして、お互いの香り。それが、二人の神経を昂ぶらせていく。

 王子の舌先がシーナの唇をそっと舐め、それから閉じた歯をそっと叩く。

 緊張のあまり力の入ってしまったシーナの歯はしばらく固く閉じられていたが、舌でノックされる感触に気が付いて、やがてそっと扉をあけた。

 おそるおそる出迎えたシーナの甘い舌を、王子の舌がそっと撫でた。

 二人の脳髄に、初経験の快楽が走る。彼ももはや節制を失い、必死にーなの舌を求めた。シーナもそれに応じる。と、舌から脳へと走る甘い電撃に、思わず喉の奥から声が漏れた。

「んっ……んんっ、んーーっ!?」

 そっと、唇が離れた。

 シーナは体中から力が抜けて、彼の腕の中で崩折れた。が、彼も片手を離したので、もう片腕を背中に当てたまま、ベッドに倒れこんでしまった。

 はーっ、はーっ、はーっ、とシーナは激しく胸を上下させ、潤んだ目で王子を見ている。

 一方で王子は、視線をそらして、ばつが悪そうにしていた。

「?」

 目を潤ませたまま、シーナは彼を見つめる。

「……ごめん」

 王子がつぶやいた。

「いまのだけで、いってしまった」

 最初、シーナはその意味がわからなかったが、十秒としないうちに理解して驚いた。

「あの、王子、もしかして……」

「ああ。出た」

 ぱあっ、とシーナの頬がピンクに染まる。

「情けないよな、ハハハ……」

 自嘲する彼の背中から、身を起こしたシーナはそっと抱きついた

 彼の背に、やわらかいものが押し付けられ、その部分が熱くなったように感じた。

「とんでもない。私、むしろ喜んでますよ」

「喜んでる?」

「キスだけでいっちゃうほど、私で感じてくれたんでしょう?」

「う、うん、まあ」

「それに、私も……」

「え?」

 二人の視線が合わさる。

「いまので、すごいの、来ちゃいましたし」

「……シーナもいっちったの?」

「た、たぶん」

 はにかみ笑いが浮かぶ。

「王子……私たち、一緒に絶頂を迎えちゃったんです、キスだけで」

「うん……」

 王子は安堵して、シーナの手を握った。

「(すごい……キスだけでなんて、私たち……もしかして、相性バッチシなのかも!?)」

 シーナは、体の奥から嬉しさがこみ上げてくるような感覚を覚えた。

 が、すぐ我に返る。

「(でも私は神官……王子は4日後に結婚。けっきょく、結ばれない運命なのよね)」

 なんだか悲しくなってきた。が、ぐっと手に力を込め

「(ううん、だからこそ……だからこそ、今だけは思いっきり愛してもらおう。嘘でもいいから、愛してもらおう。たとえ神官をクビになっても、この思い出さえあれば、一生、生きていける……)」

 そんなことを考えているうち、胸を突然、重くて暖かい感触が包んだ、

「!」

 思わず身をよじって逃げようとしてしまう。

「あっ、ごめん!」

 王子があわてて手を離した。シーナもあわてた。

「ご、ごめんなさい、大丈夫です。いきなりなんで驚いただけ!」

「……じゃ、触ってもいいのかな?」

「い、いい……と思います。触ってください」

 今度はあらかじめ覚悟をして、豊かなバストを突き出した。そこへ、王子の両手がそっと添えられる。

「んっ……」

 シーナのバストに載せられた王子の手は、やがてそろりそろりとそれを撫で始めた。布を通してのじれったい感触に、シーナは顔をゆがめる。

「これでいいのかな?」

 自信なさげな王子に、シーナは

「いっ、いいと、思います……っ」

 とつぶやくのが精一杯だった。でも内心ではいいと思っていない。じわじわと胸にしみこんでくる快楽だが、とても足りたものじゃない。しばらく耐えていたが、思わず声に出てしまった

「もっと……」

「ん?」

 言ってから、シーナは顔を真っ赤にして目をそらす。

「もっと、何?」

 シーナは両手で顔を隠してしまい、答えられない。

 だが鈍い彼にも、何が求められているのかは想像できた。

 彼は胴衣の下の長衣の胸元をぐいっと広げる。しかしうまくいかない。やり方を変え、彼はシーナの足元のほうから長衣を捲り上げた。

「きゃああっ!?」

 驚いたシーナが両手を下にやり、きつく脚を閉じる。

「あ……」

 真っ赤になったシーナの顔を見て、彼は手を止めた。

 下半身が、あらわになりかかっていた。

「あっ、あの……」

 気まずそうにシーナが言う。

「じ、自分で脱ぎますから、ちょっと待って……」

 シーナはそろそろと身を起こし、ためらいがちに衣服を脱ぎ始めた。薄暗いランプの灯の中に、きらめくような肌がみるみる現れる。彼は思わず見とれて、我を忘れそうになった。

 その視線に気づいたシーナが、脱いだ衣を両手で持って胸に押し付ける。

「あんまり見ないでください」

「ご、ごめん……でも、きれいだから」

「いやん、恥ずかしい……」

「すごくきれいなんだ。……もっと見せてくれ。あ、でも帽子はかぶっててくれ」

「え゛?」

「そのほうがシーナらしいから」

「は、はい……」

 恥ずかしいやら誇らしいやら気持ちいいやらわけわかんないやらで混乱しながら、シーナは大きな神官帽を頭に載せなおし、そろそろと衣を下にずらしていった。

 豊かな白い丘の上に、米粒大の突起が見えた。その周囲のピンク色の部分は、恥ずかしいほど広がっている。

 思わず、シーナはそこを手で隠す。

「隠さないで」

 彼の声が響く。

「シーナのきれいな体を見たいんだ」

「でも……」

 普通の状態じゃない。興奮してぷっくりと脹らんでしまった乳輪を見られるのは、とんどもなく恥ずかしい気がした。

「見せて……くれないのか?」

「うう……」

 シーナは断りきれなくなり、そろそろと手をずらしていった。

「下も」

「え!?」

「下半身も」

 衣を当てて隠していた下半身。その衣をのけるよう、命令されてしまった。頬を真っ赤に染め、強く目をつぶって、ハー、ハー、と息を継ぎながら、シーナは衣を下にずらし、そして手を離した。バサッ、と衣が床に落ちる音がした。

「(見られている……ああっ、ぜんぶ見られている!)」

 興奮して固くなりかかっている乳首。ちょっと濃いめらしい、恥丘の草原。そして、もう熱を帯び始めてるその奥の割れ目など、恥ずかしいところが全部、さらけ出されてしまっている。

 目をつぶってるから確かめたわけではないのに、彼の視線が自分の体の上をなぞっていく感触を、まるで筆で撫でられ照るように感じた。

「(ダメっ…これ以上はダメ! 恥ずかしさと気持ちよさで、私、変になっちゃう)」

 耐え切れなくなって隠そうとしたその瞬間。シーナは全身を拘束され、体がふわりと浮いた。驚いて目をあけると、王子がシーナを抱きしめてベッドへと倒したのだった。

「シーナ……もう我慢できない」

「は、はいっ!」

 むしろシーナのほうが緊張している。

「我慢しないで、私を好きなように……」

 彼は一瞬だけ、シーナと唇を重ねると、そのまま喉、そして胸へとキスを降らせた。

「あっ!」

 胸の先の敏感なところに、冷たいような暖かいような、じっとりと濡れた感触が降りそそいだ。そして、固くなった粒を唇できゅっと吸われる。

「ひぅんっ!」

 シーナが身を捩じらせる。が、「我慢しないで」と言質を取った彼は、もう遠慮しない。片方は手、片方は口で、シーナの双つの胸先をこねくり回した。チュバッ、チュバと、吸い付く音が響く。

「お、王子……」

「ん?」

「なんだか、赤ちゃんみたい……」

 胸に吸い付いている彼を、潤んだ目の微笑で見つめるシーナ。彼はふっ、と軽く笑うと、

「ふーん、君の赤ちゃんはこんなことするんだ?」

 言うなり、舌や歯を使って、シーナの乳首を転がし始めた。濡れた感覚、やわらかいもの、硬いもの、暖かい吐息……次々と、シーナのぷっくり脹らんだ胸の先に、快楽の槍となって突き刺さり続ける。

「ひあっ……はうんっ、ひぃん!」

 容赦なく押し寄せてきたゾクゾクする快楽の波に、身を捩じらせながらシーナは頭が混乱した。

「(もうどうなってもいい……王子、王子、愛してますぅ!)」

 心の中で叫ぶが、口に出る音は言葉になってない。

「はうっ、くあんっ……くっ…あっ……あうぅっ!」

 と、突然、撫でまわされ弾きまわされこね回される快楽が、胸の先だけでなく下半身の割れ目にも走った。

「ひやぁんっ!」

 思わず全身が跳ねる。

 それでも彼はやめない。指先が、襞を撫で、その奥からはこんこんと液体が漏れ始めた。

「濡れてる……すごい濡れてる」

「いやっ、恥ずかしい!」

 彼のキスが胸から下半身へと移っていく。

 そして、シーナの下半身の敏感なところにも、濡れた感触が襲い掛かった。

「きゃあっ、ダメ、そこ汚いからダメですぅっ!」

「汚くなんかない……」

 そうつぶやいて彼は、べろべろと下でそこを撫で回す。やがて襞の中から顔を出した豆粒状の突起を探り出し、べろんと舌で愛撫した。

「ひぎぃぃぃぃっ!」

 シーナはシーツをつかんで、体を痙攣させた。

「ここがいいんだ?」

「いいけど……ダメ! いいけどダメですぅっ!」

 たとえ初心者でも、シーナが感じていることはわかる。彼はそのあたりを舐め続けた。

 古いチーズのような、鼻をつくすっぱい香りが彼の口の中に広がる。洗い方が足りないのか、それとも、もしかして……とにかく、経験の浅い彼にはまだそんな区別はつかない。

 とにかく、ひと舐めごとに声を漏らし、いきのいいエビのようにビクンビクンと体をそらすシーナがかわいくて、彼は夢中になって舐め続けた。

「ダメっ…ダメっ……ダっ、あっ、あっ、あーーーーーっ!」

 シーナの腰が浮き、全身がわなないた。また絶頂を迎えたらしい。力が抜け、がくんとベッドにシーナの体が沈んだ。

 ものすごく息が激しく、喉が音を立てる。下半身からは盛大に熱い愛液が滴っている。

 彼はふと気が付いて、自分も服を脱ぎ、うつろな目で胸を上下させてるシーナの横に横臥した。そしてシーナの脇に手を回し、くっと抱きしめた。

「あ……あ……」

 漏れるような声をシーナがあげる。

 唇から太ももまで、全身の肌と肌が触れ合い、お互いの体温と吐息とが混ざり合う。もう、体の中まで混ざり始めたような感覚だ。

 と、シーナの腰がびくんと引けた。

 固くて熱くなった彼のものが、濡れた襞に触れたからだ。

「あ……」

 嬉しいのか悲しいのか恐いのか、まったく判断のつかない表情がシーナの顔に浮かんだ。

「じゃあ、いくよ?」

「は、はい。でも、どうかやさしく……」

 初体験の男に、やさしくとかはげしくとかの調整ができるものではない。彼のそれは、遠慮会釈なく、シーナの膣内に一気に押し込まれていった。

「や、やさしくっ、やさしくですっ……ひぎぃぃぃーーーーっ!」

 そしてついに、決定的な一言が出てしまった。

「痛っ……痛っ、あーーーーっ!」

「シーナ……!?」

 彼の動きが止まる。シーツに赤い染みができていた。

 シーナはぼろぼろと涙をこぼし、痛みに耐えながら、それでも精一杯の笑顔を作る。

「つ、続けてください……」

「いいのか?」

「もう、引き返せません……私、もう女になっちゃったんです……王子に、女にされちゃったんですぅ~」

 その涙を、彼はキスで舐めとった。

 そして、性器に絡み付いて締め付けてくる濡れた粘膜の感触に、逆らうことが出来なくなってきて、思わずそれをこすりつけた。

「あうっ、うっ、動かない、でぇ……」

「ムリだ……気持ちよすぎる」

 シーナは、痛みと初めての快感に耐えながら微笑んでみせる。

「気持ち、いいんですか? 私の中、気持ちいいんですか?」

「ああ、気持ちいい……ぬるぬるして、きゅんきゅんして、我慢できない」

「我慢しないで。いっぱい、いっぱい気持ちよくなってください」

 その言葉が耳に飛び込むと、彼はシーナを抱きしめてぐんぐんとそれを突き入れた。

「あっ!? ひっ! ひぁっ、んはぁぁぁんっ!」

「痛いのか?」

 言葉では心を使いつつも、下半身はもう止まらない。

「痛いけど……痛いけど、すっごく気持ちいいんですっ!」

 つぶった目から涙を流しながら、シーナはいっしょうけんめい微笑もうとしている。

「っ、ダメだ、そんな顔でそんなこと言われたら!」

 彼の叫びに、シーナが目を開いた。

「もうダメだ、気持ちよすぎて、耐えられない!」

「……わかりました、いってください、私の中でどっぴゅうしてください!」

 話してる間も、腰の動きを止めることができない。

「いっ……いいのか!? できちゃうかもしれないぞ?」

「いいんですっ……もしできても、私、神官やめてがんばって育てますからっ!」

 その瞬間、彼は耐え切れなくなり、熱い液体をびゅくっ、びゅるるるっと放出させた。

「王子、おーじぃ……好きぃぃぃっ!」

 熱い愛が、シーナの子宮の中に満たされていった。



 それから3日間。
 快楽の絶頂で失神したシーナが、王子の腕の中で目を覚ますと、熱いキスからまた始まる快楽の宴……それが繰り返された。王子は容赦なくシーナの外側を濡らし、内側をかき回し、下にも上にも熱い液体を放ちまくった。2日目には、シーナのほうも恥ずかしい言葉を叫びながら王子を押し倒し、激しく求めたりまでした。3日目には、縛ったり叩いたり尿をかけたりと、SMっぽいことまでしてしまった。
 けっきょく愛し合った回数が何十回に達したか、ふたりは思い出すこともできない。

 3日後にシーナは、脳髄から足のつま先まで、体の中も外も彼の精液で満たされ完全に染め替えられたような充実感と、幸せな恋はこれで終わったんだという喩えようもない喪失感の両方を抱きながら、王城へ帰った。そして、アセルスタン王子の側近の文官という顔に戻り、仕事に励んだ。
 初体験については、政争の道具にされないようふたりとも隠しておくことにしたから、見習い神官の資格も返上はしなかった。



 王子の結婚式が無事に終了し、祝宴も終わった夜。

 シーナは燭台を手に、王城の回廊を歩いていた。昼間になら通い慣れたルートだが、こんな時間帯に通るのは初めてだ。

 シーナが王子の側近であることは歩哨の衛兵にもわかっていたので、引き止められることもなく回廊を抜け、飾りの浮き彫りが刻まれたドアの前に立った。ライオンの口に鉄の輪のついたノッカーの音が響く。

「お呼びとうかがいまして……」

「シーナか、入ってくれ」

 そこはアセルスタン王子の私室だった。新夫婦のための部屋が設定されるまで、王子が寝起きしていた書斎兼寝室だ。ランプの灯の下、、昨日まで使われていたベッドに、すでに平服へと着替えた王子が疲れた様子で腰掛けている。

「ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう……でも、意外だったよ、シルヴィア姫……っと、もう『妃』か」

「はい? シルヴィア妃様が?」

「うん。政略結婚とはいえ、いくら可愛くても9才では、ねぇ」

 王子がため息をつく。

「そうとわかってたなら、何も急ぐことなんかなかったんだ……あのコとの夫婦生活なんて、あと数年、ムリだろう。それまで、ゆっくりと練習できたんだ」

 シーナがくすくす笑う。

「でも、私は後悔してません。あれがなかったら、告白もできなかったし、王子に甘い言葉をささやいてもらうことも、抱きしめられながら何度も失神したりなんて体験も、できませんでしたから。あの三日間の幸せと恥ずかしさは、もう死ぬまで忘れられません……」

 笑いながら、ピンクに染まった頬に両手をあてていた。

「あれ? 練習はノーカンじゃなかったの?」

「……一生で一人にだけしか捧げられないものを差し上げたうえ、はっきり記憶に残ってるだけでも20回以上は中にそそぎ込まれたんですもん。ノーカンなんてありえませんよ」

「……だまされたのかな、俺は」

 王子が苦笑する。

「女はね、恋を叶えるためなら、詐欺でも呪いでも人殺しでもなんでもやるものなんです。好きな人をだますくらい、息をするのと同じです」

 そんな恐ろしいことを言いながらも、シーナの笑顔は明るくて屈託が無い。

「ところで、私をお呼びになったのは……あの、その、……また練習?」

 はにかんで微笑むシーナに王子も照れ笑いを見せる。

「練習、私ならいつでもうぇるかむですけど……でも、他の女としちゃダメですよ、おーじっ☆」

「ああ、わかってる」

 ふたりは唇を重ねてベッドに倒れこんだ。



 こうして……恋する見習い神官シーナの、幸せな罰当たりの日々が、王子妃に初潮が来るまで(…!?)続いたのでありました。

 めでたし、めでたし?(笑)




  ~終わり~

※元投稿はこちら >>
11/07/19 23:07 (8022mRp8)
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