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今年もジメジメとした梅雨時が終わり本格的な夏がやってきた。
例年であるなら何も変わらない夏のはずだった。
しかし1ヶ月前のあの事件を境に私と隼人くんの関係はお互いが表向きは何も変わっていないように装っているが、ふとした時に微妙な空気になることがある。
「ありがとうございました。」
私は常連客にお辞儀をしてお会計のお釣りを返した。
「ごちそうさん。で?どうしの凛ちゃん?隼人と喧嘩でもしたのかい?」
常連客が私たち二人の様子を気に掛けて、でも少しだけ茶化すように言った。
「え?なんでですか?してないですよ?喧嘩なんて」
「そうですよ。あー最近暑くてだるいですかね……僕暑いの苦手で……」
私と隼人くんは揃ってそのお客さんに何でもないと伝えた。
「なんだ、二人とも夏バテかい?まぁ確かに今年は本当に暑いからねぇ。体調には気を付けてくれよ?ここに毎朝来ることが俺の楽しみだからね……じゃごちそうさぁん。」
その年配の常連客はそう言うと暑い暑いと言いながら店を後にした。
常連客がいなくなると重たい空気がお店に流れる。そして隼人くんからの粘つく視線……
あの事件以降私は隼人くんの視線が気になって仕方がなかった。
事件前からなんとなく隼人くんの視線は気になってはいたものの、私は自意識過剰かとそんなはずはないと気づかないふりをしていた。
しかし隼人くんとあんなことになって以降、日に日に隼人くんの視線が粘つくようになったのは間違いがなかった。
私のせいで隼人くんに酷いことをさせてしまった。
隼人くんを傷つけ、ファーストキスも、そして初めての性行為も………。
事件直後、私と隼人くんはあれはなかったことにしようと約束した。
二人の間には何もなかったと。
あれ依頼、このことについては話していない。警察にも話していない。
泣き寝入り……そう、泣き寝入りだ。
でも………警察沙汰になればあれこれ話さないといけないし、こんなあ小さな街ではすぐに周りに知れてしまう。
そしたらお店の経営だって……。そう思うと言えなかった。
私が隼人くんを傷つけたことを謝ってもいない。なかったことだから謝るのは違うと言うよりは話をぶり返して思い出すのも思い出させるのも違う気がした。
だって、話をすれば、また隼人くんを傷つけてしまうから……。
それにきっと嫌われているに決まっている。
いくら男の命令だったとは言え、私の汚れたアソコの匂いを嗅がせたり、舐めさせたり、「嫌だ、やめて」と言う隼人くんの思いを無視してセックスまでしたのだから………。隼人くんは苦しそうに泣いていた。あんな表情は二度と見たくない。
悲しませたくもない。
私は仕事中、またあの日のことを思い出してしまい、頭を振ってその思いを追いやろうとする。
でも、ふとしたときに、あの隅のシートで隼人くんと繋がったときの感覚が蘇ってくるとなぜか、どうしても体がジーンとするのだった………。
* * *
僕は凛さんに気づかれないように凛さんの体を見つめる。華奢なのにエプロンを押し上げる乳房、引き締まったウエスト、そこから滑らかなS字を描き意外に大きい尻。
今日もパンと張ったタイトスカートに下着の線が浮かんでいる。
まるでスキャンでもするかのように凛さんの頭から脚までを見つめる。そこには凛さんの裸があった………。
僕はあの日、凛さんに私たちの間には何もなかったと言われたときに凛さんが望むなら僕もそうしようと思った。
あの事件は犯罪で泣き寝入りは違うと思ったけど、レ◯プされた凛さんがそう言うなら仕方ないと無理やり納得した。
はずだった……
でも、無理だった。男に無理やりとは言え、凛さんの裸を見れたこと、マンコの匂いを嗅いだこと、フェラチオしてもらったこと、そして僕の童貞喪失、セックスをしたこと。
忘れるなんて、なかったことにするなんて無理に決まっている。
凛さんの汗、匂い、体、表情、声………1ヶ月たった今もハッキリと脳裏と鼻腔に焼きついて離れない。
それには理由がある。あの日男は僕のスマホで僕らのことを撮影していた。
何故かは分からない。
自分のスマホだと思っていたのか、ただ辱めるためだったのか、それは分からないけどとにかく二人のセックスしているシーンが僕のスマホに録画されていたのは事実だ。
それを知った僕は事件当日の帰宅途中、凛さん言うべきか迷った。でも横をトボトボと歩く凛さんの表情をみてこれ以上心労はかけられないなと思い僕は凛さんに伝えるのをやめた。
伝えずに、僕が消せばいいだけだ。その時は確かにそう思った。
だけど……
僕の中の邪悪な悪魔が囁いた。
『消していいのか、黙っていればバレやしないのに?』
いや、ちゃんと僕の中にも天使はいた。
『絶対にダメだ!凛さんが悲しむだろ今すぐ消せ!』
でも、僕の中の正義は簡単に敗北した。
ちょっとだけだ……少しだけ見て、それですぐ消せば……
そうやって僕は自分自身に言い訳をしてスマホの中の動画を再生した。
そこには僕の想像を遥かに超えた生々しい行為の数々が収められていた。
小さいときから憧れでしかなかった凛さんの知ってはいけない秘密を手に入れてしまったと僕はその時罪悪感に苛まれたと同時に沸々と自分の中の邪悪なもう一人が生まれる瞬間をハッキリと自覚したのだった。
この1ヶ月僕と凛さんの動画を見なかった日は一日としてなかった。
毎日最低でも5回は出さないと済まなくなった。
しかも、イッてもイッても勃起が治まらず、気づくと朝方なんてことがざらになった。
睡眠不足になると毎日体がだるくなるのに、それでも僕はオナニーをやめなかった。やめれなかった。
アパートのドアの向こうの部屋にいる凛さんを思って僕は何度も何度も射精した。
人間というのは睡眠不足になると判断力が鈍くなる。
厄介なのはその事に自分自身気づけないことだ。
結果………、
僕の思考は日に日におかしな方へと変化していった。
(僕のファーストキスも童貞喪失も凛さんが奪ったんだ……)
(凛さんがあの日コーヒーさえこぼさなければ僕は殴られたり蹴られたり痛い思いもしなかった……)
(悪いのは凛さんだ……)
1ヶ月経つ頃には善人ではるはずの僕のは存在しなくなっていた……。
凛さんと仕事をしていても姿を見れば汗をかいて僕の上で揺れている姿を、
後ろを通ったときの残り香を嗅ぐと凛さんのマンコやアナルの匂いを思い出した。
(責任を取らせたい………僕をこんな風にしたのは凛さんだ……)
いつしか僕の頭はそんな危険なことを考えるようになっていた………。
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