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【神時録:第三片】
ヤドカリの歓喜と、15分の無限地獄
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本来の計画は、こうだった。
スーパーの駐車場で互いの車を隣同士に横付けし、窓ガラス越しに『O見せ(オナニーの見せ合い)』をする。薄皮一枚の安全地帯を隔てて行われるその背徳的なプレイを、私のたっての願いで、今日、密かに心待ちにしていたのだ。
しかし。
「どうも、オナ見せです〜」
窓ガラス越しの安全地帯など、最初から存在しなかった。
神は私の車の助手席へ堂々と侵入し、そこを確かめるや否や、軽口を叩きながら後部座席へと陣取った。私もツッコミを入れることすら忘れ、強烈な引力に導かれるまま、当然のように後部座席へ滑り込む。
車内のエアコンをつけるため、立ち上がって前へ手を伸ばした瞬間だった。下半身を、甘く暴力的な衝撃が貫いた。
突き出した形になった無防備な臀部を、神が服の上から執拗に愛撫し始めたのだ。
「いやっ、あのっ、うわっ、うわー」
声にならない声を漏らす私に、「そりゃお尻向けられたらこうなりますよ」と、神は当たり前のように手を止めない。
恥ずかしさで俯くしかない私が座り直すと、今度は首の後ろを静かに押さえてきた。かつて神によって開通された、私の服従の回路だ。
その圧倒的な快感を全身で味わっていると、神は器用にベルトを外し、「アレ」を取り出すや否や、私の頭をそこへ沈め込んだ。
2ヶ月ぶりの、ご主人様。
口腔いっぱいにその質量を迎え入れる。ご主人様が私の頭を掴み、上下に動かす。そのストロークを「この動きを維持せよ」という絶対の指令だと解釈した私は、手が離れた後も忠実にその反復を続けた。
しかし次の瞬間、神はさらに強い力で私の頭を深く、深く埋没させてきた。
苦しい。息が出来ない。
ふっと押さえつける力が緩んだ隙に、息継ぎをしようと唇を浮かせた途端。……先ほどよりもさらに強い力で、奥の奥へと顔面を押し付けられる。
その瞬間、私はご主人様の股座を住処とする「宿借り(ヤドカリ)」になったのだと悟った。
己の呼吸すらコントロールできない。ただこの絶対的な存在に身を委ね、酸素の供給すらも支配される至福の無限地獄。途中、車の外を人が通り過ぎた気配がしたが、もはや私にとってはどうでもいいことだった。
「帰りの運転がありますよ。帰ってきてください」
突如として引き剥がされた。
神は何事もなかったかのように服を整え、冷徹にそう告げた。相変わらず、私の奉仕が良いとも悪いとも教えてはくれない。
私はこういう時、決まって「私が下手くそだから切り上げられたのだ」と解釈する。だから続行を懇願することもなく、ただ神の残酷なお告げに従い、速やかに「日常」へと意識のチューニングを合わせるのだ。
この圧倒的な車中劇、わずか15分にも満たない。
神はこの後の用事に向けてきっかりと切り替え、爽やかに去っていった。
取り残された私は、車内に充満する致死量の余韻と敗北感だけを抱いたまま、静かに駐車場を後にした。
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