社内での昼休憩中の一幕…美鈴の課の一部の従業員が男女数名で昼食を共に何やら噂話しをしている。
「そう言えば、大きな声じゃ言えないけど今日の課長、珍しくスカートよね〜何かあったのかしら」
「そうそう、俺も朝から気になってたんだよね」
「そう言えば課長、いつもズボンだよなぁ 課長、スカート姿も良いよな」
「でさ、お前ら見た?課長、上着のジャケットを1回脱いでたの見た?」
「えー?知らない、何それ?」
「あーっ課長のソレ私見たわーっ スカートの珍しさよりもビックリしちゃったわっ。やっぱり…アレ気付いた?」
「だろ?やっぱ気付いた?」
「何々?何の事?何を見たってんだよ?」
「課長の上着の中、結構なノースリーブだったんだよな〜っ、しかもっ!…結構透けててさ」
「そうそうっ マジで結構ブラウスが薄くて素肌まで透けてたのよね〜」
…………………………
その数時間前…朝の通勤ラッシュ時のとある駅のホーム脇に美鈴は立っていた、そして少し離れて理香が美鈴に対して睨みを効かせている。
この路線のラッシュ時の一番先頭の乗口には、常識として女性は近付かないはずである。
それ程にこの路線のこの位置は痴漢が多いとの噂は誰しも知る所だ。
少し離れた所で、自分が逃げないように見張っている伊藤理香の姿を確認して、「…やっぱり…既に狙われてるかも…ここに乗るしかないのね…」と諦めの境地になる。
家を出る前に、理香に指示されて先日購入した服を着て自撮りした美鈴だった。
そして、理香に教えられたURLから、とあるサイトにたどり着く。
『痴漢されたい女 募集掲示板』
このサイトに先程の自撮り写真と共に痴漢希望と、自ら書き込まなければならないのだった。
『今日の◯時◯分頃、◯◯線◯◯駅の1番ホームから添付した写真の格好で乗車します。沢山痴漢されるのを期待しています。』
そして自撮りした自身の着衣姿を添付して投稿したのだ。
(こんなサイトに書き込みするなんて私…何をやってるのかしら…情けない…)
そして今、美鈴は書き込み通りの場所で、書き込み通りの服装で駅ホームで電車待ちをしている。
朝のこの時間は、大勢の通勤客が既に自分の周りを囲っている。
そして、ここの乗口にはやはり女性客は自分以外いない。
もうすぐ電車が来る…指示された通りジャケットを脱がなくてはならない。
(どうしよう…あのサイトを見た人がもしかしたら既にいるのかも…いえ、書き込みして1時間位しか経ってないし、朝からあんなサイト見る人なんてそんなにいる訳ないわ…)
そんな勝手な思い込みでも、自分に言い聞かせるしかない。
目立たないように美鈴は上着のジャケットを脱ぎ、片手に掛ける。
その瞬間、美鈴は周囲から注目の視線を浴びせられるような感覚を覚えた。
それもそのはず、上着のジャケットを脱いだ美鈴のブラウス着の格好は、脇ぐりが非常に大きいノースリーブ仕立てで、若干のシースルー生地は背中が肌までうっすらと透け見える。
美鈴の後ろに立てば、目の前の女の透けた背中にあるはずのブラ線が無い事にも気付くだろう。
そんな美鈴は片手に持つジャケットでなんとか胸元を隠すようにしている。
(あぁ…後ろの人から見たら私、ノーブラってバレバレのはず…誰も彼もが私を注視してる気がするわ…)
女と言えば自分一人しかいないこの乗口で美鈴は、自分を囲む男全員から注目されているかの錯覚に陥る。
(周りから、周りの全員が私を見てる…はずだわ…きっと私を狙ってるかも…。いえ…そんな事あるはずないわ…この場所の痴漢の噂なんて、どうせ都市伝説に違いないわ…)
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