〜長い夢〜
ごく普通の大学を出て、真面目一筋。
これといって特別な才覚はないが、人の懐に入る事だけは無意識にできる。
余計な事は言わないイエスマン。
それが早世智成という男。
この会社に入社以来、全てにツイていた。
主任に気に入られ手足の様に使われた。
文句一つ言わず、慣れないお世辞を使い周囲から犬と言われながら3年後、主任の異動をキッカケに異例の早さで主任昇進。
有能な部下に恵まれ、部署の実績が自身の評価に繋がり、上司の犬に成り下がりながら10年で部長まで昇進した。
若きカリスマと持て囃されるも、これまで自身の残した実績はほぼ皆無。
常務、専務に私の噂が広まり、本部長をやってみないかと、話を持ちかけられ、5年後、本部長に昇進。
その年、ネット事業参入が大成功し、売り上げは右肩上がり。
そんな中、持病を悪化させた河上常務の訃報。
会社の好調な波と篠川専務の後押しに、41歳で常務に上がる。
更にその後、業績悪化に現社長の辞任に篠川新社長が誕生する。
私が43になる頃篠川社長から専務に引き上げられた。
しかし、そんなサクセスストーリーも終焉を迎える。
篠川に裏金疑惑が浮上し、各メディアが取り上げ、世間を騒がせた。
結局真相はわからずも篠川は悪あがきを続けたが、世間から辞任に追い込まれ失脚した。
篠川の一番の側近だった私は加担を疑われるも証拠不十分で放免。
しかし、一連の騒ぎに会社のイメージを著しく損ねた一端はあるとされ責任を取らされる形で出向となった。
長い夢の終わる瞬間だった。
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