篠川の自宅前で張り込みすると、電動のガレージシャッターが上がり玲王のアウディQ5が出てくる。
暫く走ると、ほどなくして9階建てビル地下駐車場に入っていった。
早世は近くに路駐し、ビルの案内板を見て、それらしい会社をスマホで調べると、グローバルリンクスと言う派遣会社の代表が篠川になっていた。
玲王の職場はここだと確信した早世は日中時間を潰し、17時頃からビル駐車場の玲王のアウディ付近に駐車して数日張り込む決心をした。
3日後、今日は17時10分と早くに駐車場に玲王が現れた。
早世に気づく事もなく、鞄を手に3メートル手前でアウディのキーを開け、ドアを開ける。
その直後に早世は車から出た。
「縞野咲蘭か?」
と早世が言葉を発すると玲王はアウディのドアを開けたままこっちに振り返った。
一瞬、時間が止まったが、玲王はハッと思い出した様にドアを閉め、こちらに向き返った。
「たしか…早世…さん…ですよね。その節はお世話になりました。」
と軽く会釈をした。
「玲王君の恋人がまさか縞野咲蘭とは、してやられたな。」
「…」
篠川玲王は早世の意図が読めずに困惑した表情で軽く会釈した。
「玲王君のご両親はご存知かな?」
「…」
篠川玲王は気まずそうに俯いた後で
「父が早世さんには迷惑かけたと…そう申してました。」
「自分の人生がこんな波乱だったとは思いもしなかったよ。おかげで今は悠々自適な生活を送っているよ。君のお父さんの会社は順調そうで何よりじゃないか」
と笑顔で言うと篠川玲王は
「おかげ様でなんとか…」
と笑顔は引きつっている。
「それはさておき、今日は別に玲王君をその事で脅迫したりしにきた訳じゃないんだよ。」
「は、はぁ…」
「玲王君にちょっと話したい事があるんだ時間を作ってくれないか?15分くらいでいいだ」
と言うと、篠川玲王は腑に落ちない様な表情を浮かべながら、ちょっと待って下さいとスマホをいじり出した。
おそらく縞野咲蘭に連絡したんだろ。
そして玲王は
「この建物内だと父に見られると困るので、近くに喫茶店があるので、どうですか?」
「ありがとう」と告げ篠川玲王はビルを出て側道に入ると、裏道の角に建つ小さい喫茶店に入った。
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