今日は日曜日の真っ昼間から公園に来ている。
未練がましく裸の女事件に執着している自分に、終止符を打つ為だ。
毎日仕事帰りに真っ暗な公園で2度目の機会を伺っていたが、そんな事あるわけもなく、一度明るい時に大捜査をしてみたかったのだ。
その理由には、あんな時間に裸で逃げるんだから、絶対に近所の女だと言う確信があったからだ。
日曜日の昼間だと言うのに、この辺りには誰もいない。
遠くに遊具があるので、微かに子供の騒いでる声が聞こえてくる。
私はトイレの前で、あの時の再現をし始めた。
トイレの入り口に向かいあの時と同じ様に立ち、「女が横を走って逃げて…振り向いた…と」
あの時の様に振り返る
と…公園の外からキャリーカーを握ったまま、こちらを見てるバアさんと目が合う…
そのまま腰を捻り体操をしてる様に誤魔化しながら「腰が最近な…歳かな…」
聞こえもしないのにボソボソと呟いた。
そりゃそうか、こんな昼間に40過ぎのオッサンが怪しすぎだろ…
通報されちゃうよ…
「ん?」
て言うか、自分の再現してもなんもわからんだろと言う事に気付いた。
トイレの中から女の再現としてやり直し。
入り口から左回りにトイレの裏側にまわる…
「ん~~」
顎の皮膚をつまみながら考える。
あの時、私が転倒したように、慌てて走ったら、この急に盛り上がった傾斜を駆け上がっていけるって難しいよな…
やっぱりこっちの生垣づたいだな…
と生垣づたいに歩いていく。
生垣の途切れた隙間まで来てまた考える。
「真っ直ぐ行ったのか、ここから出たのかがわからんな…」と独り言。
真っ直ぐ歩いていくと、途中に樹木が植えられ、歩きにくい樹木を避けながら次の裏手の出入り口に辿り着くと出入り口両側に街灯が建っていた。
私の自宅はこっちまで来ないから、ここの入り口を見るのは始めてだが、こんな明るくなる場所に来るはずないし、この樹木を避けながら走るのは大変すぎるだろと、このルートはないと引き返した。
――――――――――――――――――――――――――――ふとあの時、私が生垣の途切れまで行くのに、何分くらいかかったのかな…
探偵「山本剣次」は無駄な推理を始めた。
トイレから生垣の途切れまで、あの時の様に足早に歩いて時間を計ってみた。
1分30秒…
そして、視界の回復に1分はかかってないはずだ。
4,50秒って所だろう…って事は2分強だな。
今度は走ってタイムを測った。
53秒…
暗闇だったし女だし、もっと遅いだろと1分以上に設定。
エロもここまで執着心が強いと怖すぎる
はたから見たら完全に不審者に見えるに違いない。
こんな事をしても意味がない事は分かっている、ただ、そんな理論的分析をして探偵の真似事をしている自分に酔っているだけだった。
更に生垣の隙間から側道に出て考える、
あの時、道に出てから左右と脇道を確認して人影はなかった…
1分であの道から姿が消えるって不可能だ。
って事は?
道に出てから一番近い家しかないな。
と住宅街を見渡し
「ん~~1分でとなると、近い家はいっぱいある」
結局、検証は何の役にもたっていない。
それに女の顔も見てないのに、わかった所で…
一通りの無駄な検証と無駄な時間だったが、どおせ家でゴロゴロしてるだけだし、楽しい時間だったじゃないかと妙な満足感があった。
まぁ、何より、これで諦めがついた。
そのまま側道を生垣沿いに何歩か進んだ時、生垣の隙間から根元に何かが見えた。
しゃがみながら覗き込んでも奥に引っ掛かってる様で何かわからない。
もう一度生垣の隙間から公園に入り、裏側から覗き込み、それを拾ってみると、白っぽい靴だった。
パンプス?女の靴…
サイズは24,0…
結構小柄な女のだな…
生垣の下を覗きながら、もう片方の靴も探して見たが結局見つからずじまいだった。
「靴が見つかってもなー」
「あの女のとも限らないしな」
生垣の上に置いて帰える事にした。
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