その2
佐藤からの返信に気づいたのは3日後の朝であったが、佐藤の返信は3日前の14時。つまり私がDMを返した30分後には返信が来ていたようだった。
全く協力的ではない旦那のせいで、仕事、家事、育児に常に追われていた私は3日間もfacebookを開かずに放置してしまっていた事に申し訳なさを感じ、慌てて佐藤からのDMを開いた。
「ご返信ありがとうございます。それでは遠慮なくお誘いさせて頂きますね。9/10.11.14.17.18.21.22いずれかのお仕事終わりにいかがですか?
銀座だとお互い人目につきますので、上野辺りまで出ましょう。ご返信お待ちしております。」
佐藤のDMを読み、私は背筋に冷たいものを感じてしまっていた。
まるで気づかないうちにヘビに飲み込まれそうになっているカエルのような気分と言えば良いのか、恐怖を感じるに充分の内容だった。
私自身はてい良くお断りをしたつもりだった。
ある程度勘が良い人ならそう気づくだろうと思っていた。それを佐藤は気づかないのか、いや。気づいていないふりをしているように感じるのだ。
それが言外に「断れると思うなよ」という執念のようなものを含んでいると感じられるのだ。
提示してきた日程の多さにも逃がさないぞという執念を感じるし、何より恐怖を感じたのは、「お互い人目については困る」という関係性をすでに匂わせているところにあった。
これは絶対に行ってはいけない。
そう思った。
寒気を催す自身のカラダを摩りながら、佐藤に返信をした。
「DMに気づくのが遅くなってしまい申し訳ございません。仕事の方が新しいプロジェクトが始まり、しばらくはバタバタしてしまいそうです。
落ち着いた際に改めてこちらからお誘いさせてください。」
最後の一文は入れたくはなかったが、あまりにも佐藤の気分を害すると息子が冷遇されるのではないだろうかという思いが一瞬よぎり、強く突き放す事が躊躇われたためのものであった。
そして最初のDMから1ヶ月ほどが経った今日、facebookを開くと佐藤のDMが数週間ぶりに届いていた。
「その後お仕事はいかがですか?暑さもやわらぎ、練習もしやすくなってきましたね。新人戦に向けてシンジ君も頑張ってます。
プロリーグの監督をしている柳澤はご存知ですか?昨日連絡があり、プロに上げられる選手を作ってくれと檄を飛ばされました。笑
明日は東都川学園高等部の総監督津島と会って、高等部との練習試合を申し込む予定です。
それではご返信お待ちしております。
PS:旦那さんの目があり、夜が難しいのであれば、昼でも可能ですので、併せてご検討ください。」
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