27.~相談~
土曜日。またゴルフに出掛けた雅明さんを見送って、今日は由紀。♡ として迎えの車に乗り込む。
走り出した車が意外に早く止まる。
「エッ!此処って… 」
「由紀も此処は何回も来た事あるよね。」お兄ちゃんにそう言われる。
「此処はお義父さんの… 」
「さぁ、入って。」と中へ入って行く。そう、此処はお義父さんのお店…
って言っても、実は近くにあった市役所が移転した為に多くのお客さんが職員だったお義父さんの店もそれに合わせて移転した。
なので、店は今のとこ空き家状態。土地も建物もお義父さんの所有だったので貸店舗として募集をかけてたけど、市役所が移転してしまって集客があまり見込めないので借り手が見つからないでいた。
「どうしたの?こんな所で。」
「まぁ、座りな。」って言われて隣に座りたいもんだから、テーブル席の椅子には座らずに座敷の縁に腰をかける。
隣に座ったお兄ちゃんが話しかけてくる。
「なぁ、由紀。相談があるんだけどな… 」(うわぁ、何かいつもと違う感じ。もしかして、もう甘えさせてくれなくなるのかな?それとも奥さんにバレた?)って思いながら聞く。
「そ、相談?」
「あぁ、 雅明に前々から聞いていて知ってはいたんだけどさ… 」 (何の事だろう?私に補導歴(高校の時に無免許でバイクに乗ってて捕まった事がある。)がある事かしら。それとも中学の時に一時期不登校だった事かしら。)
「何を?」
「由紀には夢があるんだろ?」
「エェ、まぁ… 」(違った。良かった。)
「あのな。その夢を此処で叶えてみないかい?」
「エッ?」(夢と言うのは自分のお店を持つ事だった。)
「実はな。此処が空いて雅明とも相談していたんだけど、由紀はまだ若いし心配な部分もあるんで悪いけれど仕事ぶりや実績を少し調べさせて貰った。」
「エェッ!そうなんですか?」
「で、大丈夫と判断したんで、親父に此処をリフォームして由紀にお店を出して貰うのはどうだろう?って相談をしたら、空き家にしてるよりはその分だけでも賃料貰えるなら構わないよって言ってくれたんだ。勿論、由紀が望めばって話しだけどね。」
「でも、私そんなお店を出せる程の資金も無いし… 」
「由紀。俺の仕事は何?」
「設計事務所。」
「勿論、タダって訳には行かないけど、リフォームとかもリーズナブルに請負いますよ。(笑)」
「嬉しいお話しですけど、やっぱりこれは雅明さんとじっくり相談しないと… 」
「だな。一応ちょこっと調べたけど此処は駅から10分も掛からない徒歩圏内だし、市役所が移転して道路も混まなくなったから飲食店じゃ無しにエステとかリラクゼーションとか郊外型店舗でやる分には集客も見込める感じなんだよな。」(現実的なお金の事はさておき、こんな話しをされて頭の中で自分がお店をしている事を妄想して喜んでいた。)
「これはコッチで勝手に話してたんだけどな。もしホントに店をするのなら俺と親父が出資するから、ウチの家族と由紀の御両親の名義で株式会社で登記してもイイんじゃないかって… 」
「エェッ、そんな話しまで。」(妄想が膨らみ過ぎる。)
「それとまだ未確認だけど、どうも市役所の跡地の一部は人口減少対策の一環で、結構大きなマンションが出来るらしいんだ。」
「そうなの?」
「これは今のとこ俺と由紀だけの秘密。」
「何か夢が近付く『夢』みたいな話しなんだけど、こんな事を考えてくれてたなんて凄く嬉しい。♡」と抱き着いてしまう。
「但し、条件がある。」
「エッ?」
「まぁ、そんな困らせるような事じゃ無いから、その条件の事は何も心配しなくてイイから本当によく考えておくれよ。」(って、相談の内容が大きかったなぁ。)
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