あの時被害者である筈の冴子に局の上層部は冴子から花形キャスターの地位を引きずり下ろした。
より影響力の強い大物タレントを局は選んだのだった。
事情を知らない世間は冴子が自ら退社の道を選んだと思い込んでいた。
独立して再起の希望を抱いていた冴子であったがいつか世間は彼女のことを忘れていった。
あの後、冴子の痴態を収めた写真で脅迫されたが彼女は決して応じなかった。
タレントたちもこれ以上脅すのは危険であり冴子よりも若いアナウンサーを肉の接待に要望していた。
冴子が再び脚光を浴びたのは他のタレントの肉接待問題がマスコミを騒がす七年後の事だ。
ある週刊誌がその事件を嗅ぎつけたのだ。俄かに冴子の周囲が騒がしくなった。
今は別のペンネームでライターとして静かに暮らしていた冴子に記者が纏わりつき始めたのだ。
一般の女性も被害者の冴子を応援しだしそのタレントを訴えることを望む雰囲気がたかまる。
普段は化粧をしない冴子だが40歳になったばかりの彼女はアイシャドーなど濃いめの化粧で記者の襲撃に備えた。
以前にはなかった大人の色気も増し男連中も冴子に注目した。
キャスターをしていた頃とは全く違う方法で冴子は時の人になった。
今こそ彼らに裁きを、冴子は考えた。
しかしあの時の恥ずかしい事実も公になる。とても世間に知られてはならない恥辱を冴子は味わったのだ。
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