ブンッ
まるで今まで電源が切れていたかのような鈍い音がしてエレベーターが動きはじめた。
そして、ガラスの向こうでゆっくりとカゴが位置に着いていく。
エレベーターの中はエレベーターホールよりも明るかった。
ガラス越しにでも丸見えで、中に誰も乗っていないのがわかる。
ガコン
まるで誘うように扉がゆっくりと開いていった。
中に入って振り返ると、扉はまるで巨大な怪物の口のように閉まっていく。
ガラスの向こうに暗闇が見えた。
エレベーターの中は とても明るい。
外から見た自分の姿を想像し、まるで標本のようだと思った。
大勢の群がる男を想像し、見せ物になりさがった自分の姿を思うと興奮した。
いや、事実そうなるだろう。
もしもエレベーターが動いたら、それは自分以外の誰かが呼んだのだ。
逃げ場所はない。
隠す方法もない。
そう考えただけで、怖くて怖くて仕方がない。
興奮して足が震えてしまう。
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