変態な事をしている。
今更そう思った。
けれども不思議なくらい嫌じゃない。
身体に広がる心地よい熱さと疼きを感じながら
ガラケーのシャッターを切った。
「クリが一番感じるんだ」
エレベーター待ちをしている時、
あの人が平然と言った。
さっき撮った写真まで平然と見せてくる。
私はびっくりして、スマホの画面を両手で
覆いながら首を振った。
あの人は面白がって笑う。
周りを見渡したが辺りに人はいない。
多分、こちらはメーンエレベーターと
比べて小さいからだろう。
ピン。
エレベーターの到着音が鳴った。
ガラス張りの内部から
お年寄りとベビーカーを押す夫婦が出た後、
私たちは中に入った。
あの人がレストランのある最上階を押す。
ドアが閉まり始めた時、駆け込もうとする
中年女性が見えたがあの人は気にも留めなかった。
「上着を捲りなさい」
ドアが閉じた直後、あの人が言った。
エレベーターが動き始める。
こんな所でと思った。
ガラスに背を向けているとはいえ、
周りから丸見えだ。
ついさっきあんなこともしたのに。
時間にすれば一瞬だが、
私は何度も何度も葛藤して
脳が沸騰しそうになった。
すればもう戻れなくなる。
けど、その先が知りたい。
いやダメ、ダメなんだけど、ダメなのに……。
私の両手が服の裾をたくし上げていく。
肌に擦れる生地が羞恥を煽って
自分の表情筋がだらしなく崩れていくのが分かる。
きっと今、
とてもふしだらな顔をしているんだろう。
そして全てを露にした時、
脳が沸騰して蕩けていく感覚に襲われた。
「今何してるの?」
あの人が聞いてきた。
意地悪な質問に心と身体が最高に疼いて、
再び嬉しさに似た感情が込み上げてくる。
多分、これは「悦び」なんだ。
虐げられると湧き起こる
心も脳も蕩かしてしまう感情。
それに浸りながら
「エレベーターでおっぱいを出しています」と答えた。
一分にも満たないであろう出来事に
私は大きく変えられてしまった。
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