次の日の夜8時、再び二人は地下鉄で巡り合った。相変わらず革ジャンと作業服の立花の前にパンツスーツとコートの貴子が立つ。ポンポンと隣の席を手で叩き座るように促す立花 貴子は立花の横に腰を下ろす。そして立花にしなだれかかる。
「ちょ・・ちょっと、貴子さん??」
「迷惑ですか?」
「人が見てますよ・・・」
「心地よいです。このままで・・・・」
無言のまま時間が過ぎる・・・・駅に着き路地を並んで歩いてもどちらも一言も発しない。無言のまま歩く二人。
だが、立花はそっぽをむき落ち着かない様子。貴子はうつむき上気した顔を悟られまいとしている。
マンションのエントランスで向かいあう二人
「30分後でいいかな?」
「もう少しお時間をください。」
「大丈夫、ちゃんと待ってる」
「はい・・・」
40分ほどたったマンションのエントランスでは立花がそわそわと落ち着かない様子で貴子を待っていた。さらに5分ほど待った時ようやく待ち人が現れる。黒いロングスカートにグレィのニットセーターの落ち着いた雰囲気の彼女・・・
「お待たせいたしました。立花さん?」
貴子が戸惑ったもの無理はない立花はめずらしくスーツの上下にスウェードの革靴という普段の恰好とは真逆だったからだ。
「似合わないかな?」
「よく似合ってますよ。吃驚しましたw」
「布袋さんとおなじスーツやから大事にしてるし、めったに着んへんのやけどね。」
「だれですか?その方?」
「・・・・・・」
世代の違いを思い示され絶句する立花に貴子が追い打ちをかける。
「でも。布袋寅泰さんならもっと長躯で・・・・」
「知っとるんかいw」
クスクスと笑う貴子
「行きましょうか?」
「はい」
夜の街に出かける二人を見下ろす人が1つ
「あらあら、友達って言ってたのに・・・あの子ったら・・・」
歩いて10分もかからないところにある小料理屋の暖簾をくぐる二人
「いらっしゃいませー お待ちしてましたぁ うれしいわぁ」
関西出身らしいおかみが立花を出迎える。おかみに横では2人の板前が包丁を握っている
お座敷へどうぞーと関西弁で送られながら座敷に上がる二人。
「立花さん、今日は”がっちょ”ありますけどどうします?てんぷらにします?」
「ええね!それで!」
「がっちょ??それなんですか?食べ物?」
「大阪の堺のほうでとれる魚。うまいよ!わすれてた!魚食べれる?」
「すきです。大丈夫です。」
「では、コース料理に追加でお持ちいたします。お酒の方はどうされますか?」
「ビールで好きなの頼みや」
「では、日本酒の美味しいのでお願いします。」
「特別美味しいのでしたら、鷹の目 ひやおろし 獺祭スパークリングがございますが?」
貴子の目が輝く。
「3つとも小瓶でお願いします。ありがとうございます。立花さん!」
「いや、あんまり酒詳しくないし・・・好きなの頼んで」
2時間後・・・(結構いったな・・・しかし高い酒やったわ・・・まあええか・・・)ふらふらと千鳥足の貴子が立花にしがみつきよたよたと歩く。貴子の髪の・・・石鹸の香りが立花の鼻腔をくすぐる。
「貴子さん、次、どこいこ?」
「・・・・」
「バーとかがいい??」
「・・・・」
「ホテルとかw」
関西人らしいストレートな質問を投げかける立花、貴子がおずおずと口を開く。
「立花さんのお部屋が好いです・・・」
「俺の部屋ぁ?なんにもあらへんよ?」
「立花さんのお部屋が好いんです!」
「わかった」
二人はマンションへの道のりを歩き始めた・・・
つづく
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