芙美子の回想 (5. 調教師との対面)
「やっと気がついたな。」
意識が戻ってきた私は、下着を奪われ、両手を後ろに捻じ曲げられたまま、きつく縄掛けされているのに気付きました。 最愛の夫にさえ見せたことのない裸身を白昼、大勢の男たちの前に晒され、自分が惨めで涙が止まらなくなりました。
その惨めな気持ちに追い打ちをかけるように、先ほど典子という女性が暗唱させられた「十の掟」が脳裏に蘇ってきました。それは、人としての尊厳を根こそぎ剥奪し、生理現象の自由さえ奪う残虐非道な宣告文でした。それは、女性を辱めるために徹底的に考え尽くした一語一句で綴られた、生き地獄の掟でした。私は例えようもない恐怖と絶望で震えが止まらなくなりました。
若いヤクザが、「これも新入りを迎える儀式みたいなもんや。」と言いながら、私のブラウス、スカート、下着の一つ一つをペール缶に放り込み、その上からガソリンをかけて火をつけました。
あっという間に燃え盛った炎を男は指差しながら、「お前はパンツ1枚履かせてもらえん身分になったんや。これでちっとは諦めついたやろ。」と吐き捨てるように言いました。
下着まで焼き尽くされ、逃亡しようにもできない身となった私は、虚脱感でその場にすわりこんでしまいました。
「立ち上がれ。先生とご対面だ。」
若いヤクザが私の髪の毛を掴んで体を引き起こしました。私の前に、周りのヤクザたちよりも、ひと際、体が大きくて肌が赤銅色の男が立っていました。分厚い胸板に大蛇の刺青が彫られています。元巨人の清原さんみたいな坊主頭の真っ黒な顔で、目だけが異様にぎょろっと光っています。
「芙美子ていうたのう。今日からお前の調教を担当する鬼正という者や。簡単に自己紹介しておくわ。」
私は、この恐ろしい男が「調教」という、動物を訓練するときだけに使う言葉を私に使ったのを聞いて、自分が人間扱いされない蔑みの身に堕ちてしまったことを改めて痛感させらされました。
「ワシは淫売の調教師になってこの道30年や。若い頃は立ちんぼや場末のトルコ嬢とか最低のパンスケの調教からはじめて、腕を磨いてこの組のお抱え調教師まで上り詰めたんや。」
「ワシはお前がどこの生まれでどんな生活を送ってきたんか一切知らんし、知りとうもない。お前が何の因果で淫売まで堕ちてきたのかも関心ない。」
「はっきりしてることは、お前は人間扱いされん最低のとこまで堕ちてしもたということや。そして二度と娑婆に後戻りできんということや。」
鬼正の話は死刑宣告のように私の心に響いてきました。
「これからお前は、淫売の道を極めるのを生きがいにするんや。オメコが客のマラに吸い付いて離れんようになるまで鍛えるんや。ケツの穴も「この女はオメコに入れるよりケツの穴に入れる方が気持ちええ」といわれるようになるまで徹底的に鍛えて、客に悦んでもらうのを生きがいにするんや。」
「ワシの若い頃は、淫売をどつきまわして調教したもんや。どつき過ぎてツブしたパンスケは、もう数えきれんわ。でも心配せんでええ。今のワシのモットーは「好きこそ、もののじょうずなれ」や。淫売も動物と同じで、嫌がるのを無理やり仕込んでも、たいしてじょうずにならん。淫売は、オメコが好きで好きで堪らん体に変えてしまうのが一番や。お前の体がそうなるよう仕込んだるわ。夜昼無く、頭の中はオメコすることしか考えられん女にしたるからな。淫売に堕ちた女にはそれが一番幸せなんや。」
私は血の気が引いて、また倒れそうになりました。すると鬼正は私の胸に手を伸ばし、「乳はええ張りしてて、乳首は陥没ぎみでちょうどええわ。」と言った後、私の乳首に吸い付きました。虫唾の走る強烈な嫌悪感で、私の全身が鳥肌立ちになりました。
「吸ってもあんまり立って来んなあ。一般の女は子供に乳飲まさなあかんから陥没は治さなあかんけどな。お前は一生淫売やから子供は関係ないわ。うちの客は、陥没してて、ちょっと吸うただけでピンコ立ちになる乳を一番喜ぶんや。ワシがそうなるよう鍛えたるわ。」と言った後、「次にオメコとケツの穴調べたるわ。見やすいように縛り直したるからな」 と言って縄を解きはじめました。
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