冴子は衝動的に思わず浜中達の軍門に下ると叫んでしまった。後悔したが遅かった。事務所に残った男達は浜中に今では飼われているのだ。
感極まった様子で浜中に連絡するのを確かめながら冴子は不思議な甘美な気持ちが心の底から溢れ出てくるのを感じた。
示談が成立し冴子と浜中が和解したことが発表された。浜中はマスコミの取材を受けるがニヤニヤするだけで言葉を濁す。
「いずれ揃って会見するかも知れないが、、、」
そんな時に冴子の議員辞職が発表された。記者会見が開かれ冴子は世間の晒し者になっていた。
「私の体を国に捧げます、、、そう申しましたのに反古することになり心よりお詫びいたします。」
深く頭を下げ、再び紅潮した顔をカメラに向けて冴子は続けた。
「私の極端で偏った思想のもと浜中先生、田中代議士、団体関係の皆様を批判し皆様の言論を封じ著しく皆様を不愉快にさせましたる事も
この場を借りまして深くお詫びいたします。」
マスコミの質問にも丁寧に答えるが時間が足りず会見は数回に分けて行われたがある日島田が共同会見することになった。
島田は50歳になる女で無能な癖に浜中と対抗して男女平等を訴えたが相手にされずテレビにもよく出ては無能さを曝け出し落選を重ねてきた。
冴子とも共闘を働きかけてきたが心優しい冴子は邪険に扱わず応援演説にも駆け付けてやったものだった。
落選してからも冴子の友人気取りで浜中を罵倒しつづけていたが今回冴子の裏切りとも言える行動に耐えられづノコノコ出て来たのだ。
「島田さん、石川議員の後釜を狙ってるんですか?」
「それも考えたけど、、、まず女性を裏切ったことが許せません。それどころかまるで浜中を賞賛するかのようなあの言動許せません。
男女平等を訴える前に私は彼女に社会的制裁を加えたいと思います。もし冴子が浜中達に心から謝罪すると言うなら
私は浜中や田中議員とも共闘して冴子を葬る積もりでございます。」
「島田様、、お怒りは当然ですわ。でも葬るとか制裁とか恐ろしいことは仰らないで下さい。もう少し建設的なお考えを。」
「建設的?」
また無能さを曝け出した島田は口ごもった。
「それを今、、浜中様と相談させていただいているところです。」
中途半端な会見で冴子は数日姿を消した。
誰が流した情報か分からないが週刊誌はそれを掲載した。
冴子は孤児院生まれで血縁者はいない。苦学して大学を出て就職したが政治家としては成功しかけたが経済的には余裕が無い、
浜中の愛人になったのかとも噂は流れていた。
浜中邸を訪れて議員の田中はテレビの画面を見ながら浜中と昼間にも関わらずウイスキーを口にしている。
浜中の力の及ぶテレビ局の独占放送だ。
「視聴者の皆様、、、今日はここ、島田様の邸宅より実況で石川冴子の今後の活動についてご説明等させていただきます。
「実は私のユーチューブで配信するつもりでしたの、でも冴子がどうしても地上波で大勢の方に見て欲しいって言うものですから。」
確かに島田のユーチューブを見る人など殆どいないだろう。
「まずは島田様を始め冴子が裏切った国民の皆様のうっぷんが少しでも晴れたなら思い、またそれが島田様の言われる冴子に対する制裁の
一つにでもなればと思い地上波で恥ずかしい秘密を告白することを決心致しました。
浜中様は慰謝料なんかいらないって仰って下さいました。噂通り今の私は職も無く財産もございません。」
「浜中と違って綺麗な政治活動してたもんね。裏金も無く。」
「浜中先生には団体関係者の方にも掛け合って下さいましたが話がまとまらず山田議員の立ち合いの元、示談が成立いたしました。」
「さすが現役の先生ね。しかもお二人とも冴子の仇敵。あなたも落ちぶれたものね。その団体って暴力団でしょ?」
「いいえ、思想は少し右翼ですがりっぱな会社をされてます。今は小さなプロダクションですが将来性は浜中先生もお墨付き。
そのプロダクションでタレントとして契約したのです。」
「あなた確か42歳。それにタレントと言っても素人よ。どうして稼ぐのよ。まさか脱ぐの?」
「先生方にも反対されましたが冴子も42歳です。一日でも早くしないと、、」
「誰も見てくれないって言うのね?分かったわ、あの美人代議士の石川冴子が裸を売りにすればあなたに落胆していた国民も
留飲が墜ちるでしょう。」
「それと男性、、殿方に満足して頂けるならこの体、、皆様方に捧げるつもりでございます。」
「冴子、本気なら嘘でない証拠にここで私にキスさせて。もう私も気取らないで男に持てないこと認めるわ。
だからこれからは冴子を愛したいの。いえ奴隷にしたいの」
「わかりましたわ。冴子の気持ちが嘘でない証拠に。」
そう言って冴子は唇を差し出すと島田はむさぼり吸い付いてきたのだ。冴子は黙って舌を吸われるままにしていた。
放送はそこで打ち切られた。
数日後島田がSNSで正解を引退しあのプロダクションに所属することを発表した。
またすぐに浜中も正解からの完全撤退と黒川組改め黒川プロダクションの経営陣に参加することも告げられた。
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