舞の日常はこうだ。
不眠症の舞は午前3時30には自然と目を覚ます。
ベッド上で枕元に置いてあるスマホをいじり、適当に情報収集という名の時間潰しをする。
4時30分から5時ごろに、のそのそと起き出し、歯磨きなどの身支度を整え、朝の散歩に出かける。
6時半ごろに自宅に戻り、シャワーを浴びて普段着に着替える。そこでやっと母の顔になる舞。
舞は洗濯を回し、朝の弱い子供をどうにかこうにか起こす。
アレクサのアラームが鳴り続けているが子供はなかなか起きない。
「アレクサ、止めて」そういうと、アラームが止まり、今日のお天気や気温などを教えてくれるアレクサ。
朝ごはんは日によって変わるが、偏食の子供は準備したものを食べないことも多く、
ピザトーストを焼いた日は、ヨーグルトが食べたいと言い、
シリアルを出した日には、ホットケーキが食べたいと言う。
他の家庭はどうだかわからないが、
舞は子供のわがままとも取れる要求に、少しため息をつきながら出来る限り応えてあげる。
旦那と子供を見送り、一人きりになったら、母親という名の仮面を外す舞。
作るだけ作って手をつけられなかった哀れな朝食は舞の朝食となる。
例えば、パンの耳だけ残した子供の食べ残しなども舞は食べるのだ。
昭和生まれだからであろうか、それとも、おばあちゃん子だったからだろうか、
それとも常識なのだろうか、綾は食べ物を粗末にすることが絶対にできないタイプだ。
リビングテーブルを片付け、台拭きで拭き上げたら、椅子をひっくり返しテーブルにあげる。
家具もほとんど置いておらず、ラグすらないフローリングは、掃除が楽だ。
お掃除ロボットのルンバを動かし、床拭きロボットのブラーバも同時に動かす。
その間に台所に立ち、シンクに置かれたコップやら皿などを食洗機に突っ込むとスタートボタンを押す。
ベランダで育てている名前のわからないお花に水をやり、子供が縁日ですくってきた金魚に餌をあげる。
トイレに行くたびについで掃除をし、お風呂に入るたびについで掃除をする舞は、家事が嫌いだ。
常に自由でいたいという価値観を持っている舞は面倒なルーチン作業を自動化するのが好きだ。
お金の管理も全て自動化しており、現金などほとんど持ち合わせていない。ま、それはみんなやってるか。
スマホをいじってる間に、動かしていた洗濯が終わり、乾燥機に洗い終えた洗濯物を突っ込んで、乾燥機のスタートボタンを押す。
最新式のドラム式洗濯機を以前は使ってたが、大規模な分解掃除をしないと手の届かない部分にホコリがたまり、
乾燥がうまくできなくなることが多くなったので数年で手放して、今は中古の縦型の洗濯機を使っている。
ドラム式より汚れが落ちる気がするからだ。
ゴミの日だったので、家中のゴミを集め、マンションのゴミ置き場に行くと、マンションの清掃を担当している60後半くらいのおじさんがいた。
「おはようございます」舞はおじさんに挨拶をすると、清掃のおじさんは舞の方を振り向くと、「お、おはようございます」とびっくりした顔で答えた
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