小田義雄は、3年前に地方の営業所から本社に転勤して来た。子供の学校の事もあり単身赴任で都内の1DKマンションに住んでいる。
地方での功績を認められ、営業一課長として赴任してきた時と同時期に山本久美子も営業二課長に昇進していた。
時代の波にも乗り、女性の自立が進む中、久美子の二課は業績を上げていった。その反面、ファミリー層向けは、都会離れ等もあり一課の業績は伸び悩んでいた。
本社では、毎週休み明けの日に営業部長への報告会が行われていた。
一課長と二課長が部長に対して行うのだが、義雄は、いつも久美子の後塵を配していた。
その度に久美子から向けられる勝ち誇った視線を憤然たる思いで耐えていた。
義雄は、いつかは巻き返して見せるという思いで必死に頑張ってきた。
そして、一課の業績も漸く上向き始めた頃に、部長人事の話が出てきたので、これで部長になって久美子の鼻をへし折ってやる事が出来ると思い込んでいた。
それが、まさかの久美子が部長になるとは。
それからの部長報告会がまた苦痛になってきた。
業績云々ではなく、そもそも歳下の久美子に報告するという事自体が義雄のプライドを傷付けていた。
そして、吉本今日子も報告会を苦痛にしている一人だった。
そもそも久美子が部長になれたのも、今日子達二課のメンバーが頑張ったからという思いが強かった。
久美子は課長という役職に胡座をかいていただけではないか。
課長になるのも先を越されていい気はしなかったが、久美子も同期という事もあり、今日子に対しては自由に仕事をさせていたので、なんとか我慢をしていたが、部長と課長という立場になると、久美子の今日子に対する態度も変わってきていた。
自分が課長の時よりも業績が落ちると遠慮なく叱責してきた。
今週もいい報告は出来そうに無い事が今日子を憂鬱にさせていた。
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