赤い縄が私の全身に、蛇がとぐろを巻くように這い巡っている。
手は後ろ手に括られ、剥き出しの乳房を上下から挟み込むように、幾重にも
巻き付いている。
それだけではない。
両足にもその赤い縄は這っていて、膝をきつく折り畳むようにして縛りつけ
られているのだ。
布団の上で身体の姿勢が保ちにくい状態で、そんな私の痴態を目の前すぐで、
黄色い味噌っ歯を覗かせて、竹野は楽しげにほくそ笑んでいた。
「やっぱり昭子は縄がよく似合うな。その真っ白な肌が青白くなったり、赤
く染まったりで、これだけでもう立派な芸術品だぜ。」
縄の緊縛でほぼ丸く梱包された私の恥ずかしい姿態を、竹野は薄い眉毛の下
のぎょろりとした目を何度もじょうげさせていた。
いつの間にか素っ裸になっていた竹野が、露骨に卑しげな目つきをして、正
面から片手を、私の隠しようもなく露呈している下腹部の中心に向けて伸びて
きた。
「あっ…あんっ」
喉の奥を引き攣らせるような短い声が、私の口から予期せずに漏れた。
前に伸ばしてきた、竹野の手の先の指の何本かが、閉じたくても閉じれなま
ま露わになっている、私の下腹部の漆黒の茂みの中を、柔らかく突き刺してき
たのだ。
突き刺してきた何本かの指の、おそらくもう三センチほどもないところが、
私の身体の最も恥ずかしい、柔肉の裂け目だったが、緊縛状態の私からはそこ
は何も見えなかった。
想像した通り竹野の指は漆黒の中から、下に向かって下りてきた。
「おいおい、何だな?こりゃ」
竹野のぎょろりとした目が、一際大きく見開いたのが何げにわかった。
「おい、ションベンでも漏らすのか?」
そういって驚きの目で、下から私を見上げてきた。
「こ、この濡れようは…ビショビショじゃん」
「お、お願いっ、み、見ないで…」
それだけをいうのがやっとの私だった。
無体に肌を晒し、惨めな緊縛状態にされていることで、私自身の身体
か心の中のどこかが、理性の思いとは違う反応をし出してきていること
を、私は内心で狼狽え戸惑いながら感じてきていたのだ。
「恥ずかしいっていいながら、何だ、お前のここは?」
「つ、つらいわ…ああっ」
竹野の下卑た声掛けが、どうしてか私の頭の中を淫猥に昂ぶらせてき
ていた。
「あっ…ひっ、ひいっ」
顔を左右に激しく振り立て、私は身悶えた。
竹野の指先が、私の漆黒の下の柔肉に触れ、何かを掬い込むような動
きを見せたのだ。
「ふふ、これくらいでそんなに感じてちゃ、先が思いやられるぜ」
不遜な笑みを浮かべながら、竹野は前に伸ばしていた手を指先から、
ずぶりと突き刺してきた。
私の身体の中にいきなり侵入してきた竹野の指は、淫靡な動きで抜き
差しを繰り返してきた。
その指の淫靡な動きに、卑しく呼応するように、喘ぎと悶えの声を、
私は間欠的に漏らし続けるのだった。
汗がまた首筋と額の辺りに、滲み出てきているのが、自分でもわかっ
た。
一方の手で私を淫靡に甚振りながら、竹野はもう一方の手を布団の横
の青色のスポーツバッグの中に突っ込み、何かをまさぐり探していた。
竹野の手に握られて出てきたのは、私にもわかる形をしたセルロイド
か何かで作られた、大人の性器具だった。
夫がまだ存命中に、私に内緒で、通信販売か何かを利用して買い求め
たものと似通っていたからだ。
私の夜を悦ばせるためにと、夫なりの気配りと、苦笑いをしたその頃
が小さく私の頭の中を霞めた。
私の濡れて避けた股間に、竹野は指での責めを止めて、その器具を突
き当ててきた。
静まった室にモーター音が響いたのと、
「ああっ…そ、それはっ」
私が汗を滴らせた顔を振って、悶えの咆哮を挙げたのが同時だった。
器具は機械的な振動を伴って、私の濡れ切った裂け目に無遠慮に忍び
入ってきた。
何ものにもはしたなく、六十四歳という自分の年齢すらも忘れ、愉悦
の反応をしてしまう、自分のこの身体が疎ましく悲しかった。
妖しく煽情的な器具での私への責めもあおむけについには自分の身体
あおむけにをその場で支えきれなくなり、私はそのまま布団に仰向けに
倒れ込んでしまっていた。
竹野が手に持ったモーター音の響く器具は、私の身体から離れないま
まだだった。
「いや、ほんとにすげえな。中から汁がどんどん溢れて来てるぜ」
縄できつく折り曲げられた両足を上に向け、そこの中心部に弾性を形
にした器具が、私の身体に無残に突き刺さっている。
その恥ずかしい姿態を目に想像するだけで、はしたなくも私の身体の
どこかが疼き、気持ちを昂ぶらせてくるのだった。
「わ、私…ま、またっ」
「また何だい?」
竹野が横から顔を突き出すようにして、問いかけてくる。
「き、気持ちが…また変に」
「昼間見る顔と全然違うんだな、お前は。あぁ、そういえば俺んとこ
ろの尼僧さんと一緒だよ。昼間は清楚でお上品なところがな、へへ」
そういって竹野は、私に蔑むような視線を投げつけてくる。
「い、逝きそうなの。…こ、このまま逝っていい?」
「まだオモチャは他にもあるんだがな。感度よすぎるよ、お前」
竹野が器具から手を放さないまま、もう一方の手を私の乳房に這わせ
てきた。
「ああっ、そ、そこは…い、今はだ、だめっ」
怖れていた通り、竹野の手の責目立ては、私の一番敏感な、右の乳房
だった。
乳首をいきなり指で摘ままれて、私は思わずそこでまた、激しい悶え
声を挙げて、顔を布団に大きくのけ反らせていた…。
祖母からの告白を基にした、僕の妄想だらけで独りよがりの小説は、
この辺りで一時の閑話休題として、艶めかしく香しい匂いの充満する祖
母の寝室での、危ういとまではいかないが、血の深く繋がった孫と祖母
の会話としては、少々微妙な雰囲気になりかけてきている会話に戻ろう
と思う…。
続く
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