(祖母・昭子 番外編 5 )
暴力団組長の春日が何の予告もなく、多鶴子親子の住む家を訪ねてきたのは、三日前の
午後だった。
玄関戸を開けて春日のサングラスの顔を見た時、多鶴子は忽ち、驚愕の表情を露わにし
て、怯えと慄きの入り混じった表情を浮かべて、後退りした。
市役所に勤務する、婿養子の茂夫の不始末の件で、穏便に解決する手段があるといって
多鶴子を、高いコンクリート塀と頑丈な構えの門のある自宅へ呼び寄せて、話し合う間も
なく、平手打ち一つで多鶴子を布団の上に押し倒し、嫌も応もなく犯した男が、この春日
だった。
散々に多鶴子の身体を弄んだ後、自分の子分の男たち三人の前に突き出し、屈辱的に嬲
りものにさせた男の突然の来訪に、多鶴子が身体も心も震え上がらせたのは当然のことだ
ったが、玄関先で組長の春日が一方的ないい方で、今後は一切こちらの家とは関りを持た
ないと宣言して、あっさりと引き上げていった時、多鶴子は何が何だかわからないまま、
玄関口に腰砕けのように座り込んでしまったのだった。
その日の夕刻、夫と同じ市役所に勤めている娘の由美が帰宅して、自分にも春日から電
話があって、今後は一切こちらとの関りを持たないと、やはり一方的に宣言をして電話を
切ってきたと、同じことを母の多鶴子に複雑な表情で報告した。
由美の夫で婿養子の茂夫にも、由美と同じような連絡があったということで、どうやら
信頼に足る出来事であると、三人は三者三葉の思いで、一先ずは胸を撫で下ろした。
それから数日、三人の身辺に何も不測の事態は起こらなかった。
冷徹で非道としか思えなかった春日の約束は、表面上はどうやら守られていそうだった。
しかし、現実の問題として多鶴子の家族三人は、各々、自分の身体と心に堪えがたい屈
辱を受けているという事実は、どんなに性能性の高い消しゴムを使っても、消し去ること
はできない傷として残った。
そして医者にもかかれないその傷の膿は
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