(祖母・昭子 番外編 2)
(職場の同期生たちの誘いで、食事に出かけます。話が弾み遅くなると思います。身体は
大丈夫)
それが母、多鶴子が娘の由美に送信したメールだった。
駅から乗ったタクシーが、高いコンクリート塀と頑丈そうな門のある邸宅の、百メートル
ほど手前で止まって、濃い茶色の毛皮のコート姿の多鶴子は降りた。
タクシーが立ち去るのを待って、多鶴子は頑丈そうな門に向かって歩き出した。
門の前にいた二人の屈強そうな男が、多鶴子の顔を確認すると、にやりと下品な笑みを口
元に浮かべて、声は出さず片手を門のほうに差し向けた。
二人の男のうちの一人に、多鶴子は見覚えがあった。
あの日の夜、春日に犯された後、多鶴子に襲いかかってきた三人の男たちの中の一人だっ
た。
十月を過ぎ冷気の深まった野外で、その男と目が合った時、背中に怖気と羞恥の思いが重
なり、思わず足の歩みを早めていた。
あの時、三人の男たちが、全裸で布団に座っていた多鶴子を、素っ裸で取り囲み、それぞ
れの剥き出されたものに、口での奉仕を強要され、長い時間、傅かされた中の男の一人だっ
たのだ。
門を潜り玄関の戸が開けられると、また一人の背の高い、坊主頭の男が慇懃無礼な物腰で
多鶴子を迎えた。
この男も、あの夜、布団にいた多鶴子を素っ裸で、取り囲んだ男のうちの一人だった。
多鶴子に向けてきた目が、卑猥さを丸出しにして下品な笑みを浮かべていた。
この男は、多鶴子が三人の男たちの、荒々しいつらぬきを受けた時の最後の男で、性欲の
強さは並外れていて、男慣れのしていない多鶴子を幾度となく燃え上らせ、最後には彼女の
腕がその男の首に強く巻き付き、相思相愛の体で絶頂を迎え合っていたのだ。
多鶴子が玄関口を上がった時、その坊主頭の男がいきなり彼女に近づいてきて、有無をい
わさぬ間に抱きしめてきた。
それだけではない。
勢いに任せて男は、抱きしめたまま唇に唇を重ねてきた。
一瞬、何が起きたのかわからずにいた、多鶴子の口の中に、男の長い舌が一気に潜り込ん
でいた。
上り口の板間で、ううっとただ呻くだけで、身動き一つできないまま、多鶴子は男に抱き
続けられた。
手に持っていたバッグは床に落ち、毛皮のコートの片側も多鶴子の肩から落ちかけていた。
男は三十代半ばくらいの痩身で、額の右側に刃物で切られたような傷があった。
多鶴子は男に強い力で抱き竦められ、唇を乱暴に塞がれている身で、ただ狼狽えと動揺を
大きくする以外になかった。
ここへ呼ばれたのは、この家の主であり、組織の親玉である春日からの直接の電話だった。
多鶴子の心密かな思いとしては、抱かれるとしても組長である春日にだと思い込んでいた
のだ。
それにしては自分を玄関に出迎えた、この男の傍若無人ぶりは目に余るものがあった。
多鶴子と男の身長差は有に二十センチ近くあり、年齢差も倍近くはある。
男と女の力の差も歴然とあり、多鶴子は唇を長く塞がれている状態で、毛皮のコートから
ツーピースの上着までを、男の片手一本で脱がされていた。
そして長く重ねられていた唇が離れても、男の動きは止まることはなく、ブラウスのボタ
ンを外しにきて、キャミソールも脱がされ、スカートのホックも外されたりして、煌々と明
るい玄関の上り口で、遂には身に付けるものは、ブラジャーとパンティストッキングとショ
ーツだけに引き剥かれ、穿いていたパンティストッキングは無体に破り剥がされてしまって
いた。
声を荒げて抗うだけしかなかった多鶴子は、絶叫に近い声を一、二度出したのだが、男の
平手打ちを頬に受けて、その声は即座にかき止んだ。
あられもない身なりで多鶴子は、長い廊下を引き摺られ、ある一室に連れ込まれた。
八畳間のがらんとした和室で、室の中央に布団が一組敷かれていた。
三人の見知らぬ男たちが、敷かれた布団を囲むようにして座り込んでいた。
三人の男たちの前に突き倒されるように、多鶴子はブラジャーとショーツだけのあられも
ない裸身を布団の上に晒した。
多鶴子は目に怯えの表情を露骨に見せ、顔を恐怖に引き攣らせ、唇をわなわなと震わせて、
男たちの飢餓に満ちた視線から逃れるのに、蒼白な顔をひたすらに俯けるしかなかった。
「奥さん、今夜はこの三人が、あんたのお相手をして喜ばせてくれるそうだ。みんな二十
代の若者たちばかりだから、存分に遊んでもらうこった。あ、それからまだお楽しみが、こ
の後にあるみたいだからお楽しみにな」
多鶴子をここまで引き摺ってきた坊主頭の男が、全員に聞かせるようにいって、そそくさ
と室から引き上げていった。
「結構な美人じゃねえか。肌も白いし、肉感もそこそこありそうだしな」
体格のがっしりとした童顔顔の男が、多鶴子のほぼ裸に近い身体に舐め廻すように視線を
向けながらいうと、その男の横にいた、頭を角刈りにした小柄な男が、
「俺んちのおふくろなんかにはないような上品な感じがあるよな。おっぱいの乳首なんか
見ろ。誰にも吸われたことのないくらい可愛いぜ。ああ、早くやりてえ」
と童顔顔の男に追随するようにいうと、もう一人の、この三人の中で一番若そうな顔つき
をした長髪の男が、
「あ、兄貴、もう俺ァ我慢できねえ」
と焦れたようにいって、いきなり多鶴子に飛び掛かってきた。
それが合図だったかのように、他の二人も多鶴子の身体にむしゃぶりつくように絡んでき
た。
すでに凶暴化した三人の若い男たちと、齢六十を超えた多鶴子一人では、争いにも何もな
らないのは明白だった。
つい少し前に男の平手打ちを見舞われた恐怖心もあり、ほとんど抵抗らしい抵抗もできな
いまま、多鶴子は飢えた男たちの格好の餌食となった。
多鶴子に残されている手段は、集団でのこの汚辱行為に、ひたすら堪え忍ぶことだけだっ
た。
三人の男たちの多鶴子への責めは、直情的で荒々しかった。
歳の一番若そうな長髪の男が、布団に仰向けにされた、多鶴子の頭の上に座り込み、彼女
の白い腕を万歳をさせるようにして拘束してきた。
小柄な角刈りの男が、多鶴子のブラジャーをいとも容易く外し、タプタプとした丸い膨ら
みの乳房を露呈させ、もう一人の長身の坊主頭の男が、多鶴子の下半身に身体を埋めていた。
その男の手で、多鶴子のショーツの小さな布は、あっさりと彼女の両足首から抜き取られ
ていた。
声を出すと、また平手打ちが飛んでくるかも知れないという恐怖心が、多鶴子の頭の中を
ほとんど占拠していて、強く大きな拒絶の声を張り上げたらどんな暴力を受けるかもわから
ないという恐怖心しか、彼女にはなかった。
ただひたすらにこの屈辱に堪え、時をやり過ごすしか、多鶴子には術がないのだった。
「あっ…ああっ」
多鶴子の口から堪え切れないような声が突如挙がった。
彼女の下半身に潜り込んでいた男の舌が、何の前触れもなく唐突に、下腹部の漆黒の下の
柔肉の裂け目を、強く抑えつけるようにして舐めてきたのだ。
この突然の衝撃は、ただこの汚辱の場をひたすらに、堪えるだけに専念していた多鶴子の
脳髄に強烈な刺激を与えた。
一瞬、目の前が真っ暗になり、意識がどこかに飛び散ったような気持になったのだが、男
の舌での責め立ては一度だけの動きではなく、その後も止むことなく続いた。
男の舌が、自分の身体の最も敏感な箇所へ、荒々しく貪るように這い続けてきて、多鶴子
は口から出る言葉を抑えつけることはできなかった。
「ああっ…だ、だめ!…や、やめて」
顔と首をうち振って哀願の言葉を、幾度となく発するのだが、餌に群がったハイエナのよ
うな男たちの耳に届くわけもなく、多鶴子の悲痛な声だけが空しく室に響くだけだった。
多鶴子の乳房を、手と舌で忙しなげに責め立てている、小柄な男の動きも単調なようで執
拗に続いていた。
乳房を這い廻っていた男の顔が、ふいに多鶴子の顔の前に現れ出た。
少しの間、目が合った。
「お願い、もう許して」
と多鶴子がいおうとした矢先、男の唇がいきなり、彼女の唇を塞いできた。
「ううっ…む、むむっ」
多鶴子は慌てて男の唇から逃れようとしたが、上から押さえつける力のほうが強く、目を
大きく見開いて呻くしかなかった。
「あ、兄貴たち、お、俺も仲に入れてくださいよっ」
多鶴子の手を抑えつけるだけの役目だった、長髪の若者が、口を尖らせて不平をいってい
るのが多鶴子の耳に入った。
「すげえ、この叔母さん、中からどんどんと汁が溢れてきてるぜ」
今度は多鶴子の身体の一番、敏感な箇所を舌で執拗に責め立てていた、坊主頭が口の周り
を水滴でぐしゃぐしゃに濡らした顔を上げ、得意げな声で二人の男に向かっていった。
「お、俺、も、もう堪んね、さ、先にいくわ」
口の周りをぐしゃぐしゃに濡らした坊主頭が、慌てた素振りで身を起こし、その場でズボ
ンとブリーフを脱ぎ捨ててきたが、顔を塞がれている多鶴子に、男の動きは見えてはいなか
った。
剥き出しの両足を手で抱えられる感覚があった。
そのすぐ後に、もっと強い衝撃が多鶴子の全身を襲ってきた。
胎内を太い棒のようなもので、ずぶりと突き刺された感触だった。
「あっ…ああっ」
全身に重い電流を流されたような刺激が走り、多鶴子の脳髄までそれは一気に駆け上って
きた。
胎内に突き刺さってきた異物の感触の、心地のいい快楽感も、それに追随するように多鶴
子の全身を襲った。
私は犯されているのだ、と多鶴子が実感した時だった。
多鶴子が確実に記憶しているのはそこまでだった。
意識を失くしていたというのではない。
三人の男たちの誰に、どこをどうされたとか、何をどうされたとかの記憶が定かではなく
なっていたのだ。
断片的な記憶はあった。
三人の獣と化した男たちが、入れ替わり立ち代わりで、自分の身体をつらぬいてきたこと
や、自分の身体が上になったり、布団の上で犬のように這わされ、背後から誰かわからない
男につらぬきを受け、顔の前に突き出された男のものを、口の中に含まされたりと、朧げに
記憶と感覚は繋がっていて、自分がこれまで口にしたこともないような言葉をいわされ、挙
句にはしたなく絶頂の憂き目に幾度も見舞われたのも、六十を過ぎた多鶴子の身体と心に、
実感として残っていた。
八畳の室の熱気は、男三人と女一人の肉と肉の激しい絡み合いで、むんむんとした空気に
満ちていた。
自分の子供よりもまだ若くて、血気も盛んな男三人を相手にした、多鶴子の疲労はさすが
に大きかった。
三人目の男の迸りを受けた後、倒れ込むように布団に突っ伏した多鶴子は、息も絶え絶え
の状態だった。
そしてそのまま、多鶴子は眠りにつくように意識を失くした。
それから、どれくらいの時間が過ぎたのかわからなかった。
誰が掛けてくれたのかわからなかったが、布団に全裸で俯せになっていた、多鶴子の背中
に掛け布団が掛けられていた。
異様な熱気が籠り、猥雑に人の声が飛び交っていた室が、森と静まり返っていることに気
づいた多鶴子が薄目を開けると、灯りだけが煌々と点いていて、人影も人の声もどこにもな
かった。
重い疲労感と、全身に鈍い痛みのようなものを感じながら、多鶴子が両手を布団について、
どうにか起き上がろうとした時だった。
入口の襖戸が静かに開いて、人が入ってくるのが見えた。
誰なのかわからないまま、襖戸のほうに、まだ霞みがちの目を向けると、二人いるようだ
った。
肌の色の白い痩身の男が一人いた。
肌の色が白く見えたのは、男が何も身に付けていない素っ裸のせいだった。
足を窄め、剥き出しの股間を両手で恥ずかしげに覆い隠しながら、もう一人のスーツ姿の
男に身を潜めるようにして、歩いてくる男の顔を見て、多鶴子の顔が驚愕の表情に一変して
いた。
裸の男は娘婿の茂夫だったのだ。
娘婿が何故ここに、と多鶴子は、自身があられもない姿で、ここにいるということにも気
づかないで、目を大きく見開き、驚きと慄きの表情を露わにした。
「し、茂夫さんっ…ど、どうして?」
それ以上の言葉が、多鶴子には続かなかった。
そこで多鶴子は初めて、自身も全裸の身であることに気づいて、慌てて傍の掛け布団で自
分の裸身を覆い隠した。
スーツ姿の男が多鶴子のすぐ近くまで来て、
「あんたの婿さんがよ、義理の母のあんたをどうしても抱きたいっていうから連れて来て
やったぜ。こいつはあんたより前にここに来ててな。今まで別室で愛する彼氏に抱いてもら
ってたんだよ。あんたのさっきの奮闘ぶりも、カメラで観てたんだぜ」
饒舌に男は喋って、片手を真向かいの壁の上に設置されているビデオカメラのほうに指した。
そんなものがそこに設置されていたということは、多鶴子は全く気づいていなかった。
目の前が真っ暗になり、このまま意識を失くして、倒れ込んでしまいそうなくらいの驚愕の
事態の勃発に、まだ気弱げに男の陰に隠れようとしている、娘婿も勿論そうだが、義理の母で
ある多鶴子のほうも、この場からの回避の手立ては何一つもなかった。
「い、嫌です!…そ、そんなひどいこと!」
男に向かって、それだけいうのがやっとのことだった。
「あんた、知らなかったのかい?こいつのカレシって、俺んとこの組員だってこと。元々、
このお兄さん、カマっ気があったみたいで、すぐに俺んとこの若い衆に惚れたらしいぜ」
男はそういって、布団の横の畳に座り込んできた。
男の動きに合わすかのように、背後にいた娘婿も畳に正座していた。
声を出すこともできない驚愕と、この場から今すぐにでも隠れ逃げたい羞恥の思いの中で、
多鶴子は茫然自失とするだけだった。
多鶴子の目の前で、畳に座り込んだスーツ姿の男が、憐憫的な視線を彼女に向けて、
「いや、こいつがね。何日か前にカレシに抱かれてる時にな、ポロリと本音的に、義理の
母のあんたのことが好きだ、なんていい出してきたんだよ。あんたの娘と結婚した頃からず
っとそう思ってたらしいぜ。ふふ」
そういって、自分の背後で色白の裸身を小さく竦めている、娘婿の茂夫のほうを振り返っ
ていた。
このような異常事態の場で、いきなりそんな突拍子もないことをいわれても、多鶴子に反
論や拒絶の言葉は、すぐに浮かんではこなかった。
「な、お義母さん、さっきはうちの若い衆とここで、あんなに激しく愛し合ったあんたな
ら、義理の息子の願いは叶えてやってもらえるだろ?…それによ、こいつオカマのくせに、
ここにぶら下げてるものは、半端ないくらいに立派なもの持ってるんだぜ。それであんたも
充分に楽しんだらいいよ」
男は自分の股間を手で叩きながら、薄い唇に下卑た笑みを浮かべていうと、畳から立ち上
がり、
「ま、事情はそういうことだから、後は親子仲良くやってくれや」
付け足すようにそういって、踵を返して室から出て行った。
森と静まり返った八畳間にぽつんと取り残された、義母と娘婿の間に、この異常な状況下で
交わし合う言葉などあるはずはなかった。
多鶴子は嫌悪と憎悪を露わにした目で、前の壁の上に設置されているビデオカメラを睨みつ
けていた。
「お、お義母さん」
男に引き連れられ、この室にあられもない素っ裸で入ってきてから、気持ちも身体も萎れた
花のように委縮させていた、婿の茂夫が苦しげな哀訴の目をして、掠れた声でいってきた。
「あ、あの男がいったことは、う、嘘ですっ。ぼ、僕は…む、無理矢理」
今にも泣きそうな目で、声を潜めるようにしていってくる、義理の息子に多鶴子からかける
言葉はまだ見つかっておらず、彼女は裸の身に羽織った掛け布団を、意味なさげに掛け直すだ
けだった。
二人の間の距離は二メートルもないくらいだった。
「し、仕方ないわ。わ、私たちに逃れられる術はないみたいだから、悔しいけど、あ、あの
人たちのいう通りにして、は、早く済ませて帰りましよ」
一つしかない打開策を、多鶴子はようやく年の功でそういって、また憎々しげにビデオカメ
ラに目を向けた。
「は、はい…」
蚊の鳴くような声でいう婿の茂夫に、多鶴子は覚悟を決めたような穏やかな目で、
「は、早く済ませて帰りましょ」
と諭すような声で返して、自分の身体を覆っていた、掛け布団の端を持ち上げて誘うような
仕草を見せた。
茂夫がおずおずとした動きで、畳を擦るようにして、多鶴子のいる布団に近づいてきた時、
義理の母の彼女の目に、驚きのものが飛び込んできた。
痩身で色白の身体の茂夫の、それは股間に見えたものだった…。
続く
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