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SM・調教 官能小説

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202
投稿者:雄一
朝の登校時から降り続いていた雨は、午後の下校時まで止まなかった。
 嫌な日に約束してしまったと後悔しながら、僕は俶子の住むマンションに向かっていた。
 「緊急」と書かれたメールに、
 (何事だ?)
 と変心したら、思わぬ長文が再返信されてきた。
 (私の大学の同期生で、野中由美という友人が、ある極悪なグループたちから、金銭的に
も肉体的にも、卑劣な脅迫や蹂躙を受けて困窮している。被害の対象は、私の私の友人夫婦
二人と、友人の実母の合わせて三人。警察や弁護士においそれと訴えたり、相談を持ちかけ
られない事情があり、現在も脅迫や蹂躙は続いている。まだ高校二年生のあなたに持ちかけ
る相談事ではないことを、当然、承知の上でのこのメールです。人を教え導く教師でありな
がら、世間のどこにれもありがちな、通俗的世俗的な問題一つを解決処理できない自分自身
の無力さを、心に重く痛感しながら、私が今一番信じているあなたへの、断られるのを承知
の上での吐露です。できれば…)
 このメールの中味に、即座に対応できる僕では勿論なかったが、コンタクトだけはと思い、
俶子の話を聞く日時を決めたのが、十月半ばを過ぎた、冷たい雨のしのつく今日だった。
 俶子は午後からの受け持ち授業がなかったので、早退をして僕の来訪を待っているとのこ
とだった。
 俶子の概略メールだけでも気の重い話で、十六の高校生の僕などが介在できる余地は、ど
こにもないのは明白だったが、昔、流行ったらしい小説の、木枯らし紋次郎にはなれない僕
は、雨に濡れた手で、彼女のマンションのインターフォンを鳴らした。
 リビングのテーブルに出されたコーヒーの一啜りめは、当然のように苦かった。
 僕を出迎えた俶子の身なりも、いつもと違って地味なグレーのセーターに白のフレアスカ
ートだった。
 いつもなら玄関のドアを開けたら、小娘のように飛びついてくる所作も当然になく、眼鏡
の奥の目の端に、小さな笑みを浮かばせただけで、僕をリビングに案内したのだ。
 テーブルを挟んで僕の正面に座った俶子の横には、黒色のノートパソコンが閉じた状態で
置いてあった。
 俶子から聞いた、相談者の野中由美の経歴は以下の通りだった。
 俶子が友人の野中由美から、直接聞き取った話や、俶子自身の推測めいた見解も、手を加
えることなくそのまま記述してある。
 東京の近郊都市の市役所に勤務する公務員で、四年前に同じ職場に勤務する三歳年下の男
性と、婿養子をとるかたちで結婚して、子供はいなく、六十一歳になる母親との三人家族で
現在に至る。
 発端は市役所の住民課係長として勤務する夫の、業務上の不手際と、その後の事務処理の
拙劣さが、市民のある有力者に露見することとなり、その人物からの脅迫めいた言動に屈し
てしまい、ついには家族全員を巻き込む悲惨な事態に陥ったということである。
 相談者の夫の業務上の不手際というのは、ある地区の自治会の自治会費や運営費の入った
郵便局の通帳から、相談者の夫が当該自治会に無断で金を引き出し、私的に流用したという
のである。
 夫のいい分は、その地区の自治会長が所用で市役所を訪ねていて、その時に足を悪くして
自治会長が、たまたま面談をしていた、住民課係長である夫に、通帳から三十万円を引き出
してほしいと頼まれたので、立場上、普段の付き合いもあり、気軽に引き受け、市役所内の
ATMに行き、下した金を自治会長に渡したというのが、最初の発端だった。
 その二日後、件の自治会長が血相を変えて市役所に乗り込んできて、三十万円の金が自治
会の通帳から、誰かに勝手に引き出されてなくなっているという、思いも寄らない発言を聞
かされて、係長の夫は慌てた素振りで、その自治会長に二日前の正直な顛末を説いた。 
 しかし役所内の狭い相談室にいた自治会長の声は、興奮してきて次第に大きくなってきた
ので、係長は相談室から、その自治会長を連れて、別の室に導き、何度も直な説明を繰り返
したのだが埒が開かず、到頭、根負けした形で係長の夫は、三十万円を弁償すると約束して
しまい明日の午後にお金を渡すこととなった。
 係長の夫に三十万もの大金は即座に用意できるものではなく、同じ職場に勤める妻にも、
婿養子という微妙な立場では安易に打ち明けることもできなかったので、夫は市内にある、
テレビでも名の通ったサラ金会社に飛び込み、仮名を工面した。
 市役所内にある共済に行く手段もあったが、それだと給与明細で、忽ち妻に知られるとい
う弱みがあった。
 そして話はまだ続いたのだ。
 その悪徳自治会長の本当の狙いは、三十万のお金でもなく、また住民課係長の夫でもなく
て、その夫の妻の由美の籠絡にあったのだ。
 俶子が、半年か一年ほど前のものだけどといって、僕の目の前に差し出した数葉の写真を
見て、最初に僕が感じたのは、身体も含めて雰囲気全体が、艶やかで肉感的な美人という印
象だった。
 パーマのよくかかったふんわりとした栗毛色の髪の下の顔は、色白の瓜実顔的な輪郭で、
濃い眉と長い睫毛の下の切れ長の目は、肌の色の白さのせいか、黒い瞳が妖艶なくらいに際
立って見えた。
 鼻筋も細く通っていて、唇が正しく肉感的に少し見え、顎の尖りも何か男子としてそそら
れるような曲線になっている。
 下唇とその顎の間に小さな黒子があり、それも顔全体の艶やかさの一助になっている感じ
だった。
 どこかのキャンプ場での写真なのか、川を背景に冗談っぽく済ました顔で映っている写真
で見ると、決して太っているという体型ではなく、出ていうところは出て、括れているとこ
ろはしっかりと引き締まっているという外見だった。
 目の前にいる俶子ほどではないにしても、少し濃いめの化粧といえばいえたが、いい意味
での化粧映えをしているという印象を僕は持った。
 その全体像や妖艶さを漂わす顔立ちから、この人が市役所に勤務する公務員とは、僕もそ
うだが誰も看破はできないだろうと、僕は内心でこっそりと思っていた。
 で、公務員の夫の話に戻るのだが、自治会長からの恫喝はさらに続編があって、係長の夫
が、断腸の思いで金を渡した後もしつこく続いた。
 この自治会費詐取を、役所の上層部と警察に訴追通報されたくなかったら、妻の由美と二
人である場所に来いと、係長の夫は強い恫喝を受け、妻と妻の母親の前で、泣く思いで今回
の不始末の顛末を告白し、土下座して助けを請うた。
 夫からの寝耳に水の、驚愕の告白を聞かされた家族三人だったが、出した結論は愚かにも
まだ夫の公務員としての将来を案じてということで、相手の指定した場所に、夫婦二人での
このこと出かけてしまったのだった。
 そして本当の地獄はそこからだった。
 車を郊外に向けて走らせ指定された住所に行くと、高いコンクリート塀に囲まれた広い邸
宅の前だった。
 頑丈そうな門から玄関に行くまで、数人の見るからに風体の悪い男たち数人に会い、そこが
どういう場所なのかを薄々に知らされながら、二人は大きな邸宅の玄関から長い廊下を伝い、
八畳間の一室に通された。
 室には、三人の屈強そうな男が立ったままでいた。
 恐る恐る夫婦二人が訪問した目的の話は一度も出ないまま、妻だけが別室に呼ばれて、目つ
きの悪い男に連れられて行った。
 ほどなくして女の悲鳴が、悄然とした顔で待っている夫の耳に聞こえてきた。
 妻の叫び声だというのが、夫にはすぐにわかった。
 夫は声の聞こえてきたほうに駆けつけようと立ち上がった時、横にいた男の鉄拳が夫の腹に
めり込んだ。
 夫はそこで意識を失くした。
 どれくらいの時間が経ったのかわからなかったが、咳き込みながらどうにか薄目を開けると、
衣服を激しく乱れさせた妻が、涙を流して悲しげな顔で横に力なく座り込んでいた。
 ツーピースの上着だけ肩に羽織って、中のブラウスはどこにも見えず、ブラジャーも剥ぎ取
られているようだった。
 妻が別の室で何をされたのか、夫はすぐに察したが、男たちに飛びかかっていく勇気は悲し
いかな持ち合わせてはいなかった。
 そして夫婦は何の歯向かいも、何の抗議もできず、這う這うの体で空しく帰宅した。
 娘夫婦の無事の帰宅を待っていた母親は、無残な娘の姿に驚愕し、警察にすぐに通報すると
激怒した。
 娘夫婦はそれを必死に止め、泣きの涙で母親を説得した。
 相手は警察に逮捕されるだけだが、私たち夫婦の将来はその時点で、間違いなく消える。
 表沙汰にして、私たち夫婦にどんな利があるのかと、夫婦二人での涙の説得に、母親は唇を
噛み締めながら折れた。
 夫婦の、あるいは家族三人の勇気と決断のなさが、悲劇をさらに蟻地獄のような大悲劇に変
えていった。
 それから妻の由美は、数日間隔の割合で、自分を犯した男に呼び出しを受けて、郊外のあの
大邸宅に呼び出され、凌辱の憂き目に遭うようになった。
 男の身元は間もなく知れた。
 この街に巣食う暴力団の組長で、名前を春日といった。
 年齢は四十九歳で、その彼の実兄というのが、由美の夫に卑劣な無実の罪を課した、あの自
治会長だったのだ。
 野中由美夫婦が狙われた、下劣極まりない動機というのも、そのうちに由美の耳に入った。
 由美が母親と二人で駅前のデパートで買い物をして、パーラーでコーヒーを飲んでいるとこ
ろを、たまたまそこに居合わせた暴力団組長の春日に目をつけられ、ある時彼が実兄の自治会
長に携帯で盗み撮りした写真を見せたところ、役銘柄、役所事情に詳しかった兄が、弟の不埒
な欲望を叶えるために姦計を企てたというのが、件の自治会費云々の事件の発端だったという
ことを知った時には、由美も含めて三人の家族は、底なしの地獄の沼に堕ちていたのだった。
 悲劇は由美一人だけではなかったのだった。
 暴力団の組員の中に、今でいうと、ジェンダーの男が一人いた。
 男の名は山川といって、奇しくも由美の夫が初めて組長宅を訪ねた時、彼の腹に強烈な一撃
を見舞ったおとこだったのだが、その山川という男がジェンダー的な目で、照準を定めたのが、
由美の夫の茂夫だったのだ。
 由美の夫の茂夫は、そういえば見るからに優男風で、男子にしては肌の色も白く、顔立ちも
それなりに整っている。
 電話で暴力団の組員の山川と名乗った男から、突然の呼び出しを受けた茂夫は、またしても
妻の由美に内緒で、一人で組長宅を訪ねた。
 妻の由美の放免の話かも知れないという、淡い期待を持って訪ねたのだったが、男の自分が
男である山川に、力でねじ伏せられ犯されるという、屈辱を受けての帰宅になったのだ。
 それからは妻の由美と同じで、相手が気が向いた時に呼び出され、汚辱と屈辱の体位を強い
られ犯されるのだった。
 卑劣な暴力団組織の食指は、さらにまだ続いた。
 ここからの話はもう少し詳しく話せと、僕は俶子に注文を付けた。
 僕に話し続ける彼女の、眼鏡の奥の目が、異様に光り出してきているように見えたのだ。
 俶子の妄想も聞きたい、と僕は言葉を補足した。
 暴力団組長の淫欲な食指は、由美の母親の多鶴子に向いた。
 平日のある日、組長の春日は自ら名前を名乗って、娘の由美との関係も正直に話した上で、
春日は母親の多鶴子に、娘の放免解放のついて話がしたいのでこちらへ来て欲しいと持ちかけ
た。
 娘を地獄の淵から、どうにかして救い出したい一心の母親に斟酌の余地はなかった。
 まだ陽も明るい昼間で、娘も婿も仕事中だという思いもあって、母親の多鶴子は、春日が迎
えに用意した車に、深い疑いも抱くことなく乗り込んだ。
 郊外の、高い塀が異様に目立つ門を、哀訴の思いを強くして潜った時、多鶴子は娘の母親と
いう立場を脆くも喪失した。
 多鶴子は四年前に長く連れ添った夫と死別していた。
 今の娘と同じ市役所に長く勤め、夫の死を期して、定年前に退職し、今はほとんどボランテ
ィアのかたちで、地区の公民館長を拝命し、たまにある地区の行事に参加したりしていた。
 娘の由美を歳を取らせると、こういう顔になるというくらいに、母娘はよく似ていて、体型
も娘をもう少し太らせたようにふっくらとしていた。
 娘の由美の肌の色の白さは、間違いなく母から受け継いでいるというのがわかる。
 邸宅の頑丈そうな門から、多鶴子が入って三時間ほどが経過して、彼女が、入って行った時
とはまるで違う蒼白な顔と、怯え慄いた表情をして、彼女は小走るようにして出て行った。
 広い玄関から、長く続く廊下の突き当たりにある八畳まで、多鶴子は組長の春日にいきなり
襲われた。
 敷かれた布団に押し倒され、ツーピースのスカートを乱暴にたくし上げられ、パンティスト
ッキングのどこかが裂ける音がした。
 むっちりとした多鶴子の太腿が露わになり、その付け根に濃い青色のショーツの小さな生地
が、襲っている春日の欲情をそそった。
 多鶴子のショーツを剥ぎ取るように脱がし、すでに熱く昂まっていた自分のものを、槍のよ
うにいきなり突き刺した。
 数分で多鶴子の、腕だけの抗いの動きは制止していた。
 鼻と口からの強弱のある淫猥な喘ぎ声が、八畳間一杯に響き、六十一歳の多鶴子のあえない
陥落だった。
 自分の娘を犯し、今も自分の意のままに弄んでいる、憎しみしかないはずの春日の、激しい
つらぬきを受けながら、多鶴子は衣服の全てを脱がされ、丸く膨らんだ乳房への、これまでさ
れたことのない荒々しい愛撫で、多鶴子はもう何年も忘れていた女としての喜悦を一気に蘇え
させられていた。
 「これからは俺のいいなりだな?」
 春日にそういわれて、
 「はい…」
 と多鶴子は応えていた。
 「今から三人の男たちに可愛がってもらえ」
 という春日の言葉に従い、彼女は自分の子供よりも年下の、三人の男たちに玩具のように扱
われ、激しいつらぬきを受け、幾度も悶え果てた。
 それからは、娘と娘婿の目を盗むように組長宅を訪れ、若い組員たちの性欲の吐け口になっ
て尽くした。
 最後のほうの記述は、俶子の妄想感に満ちた淫猥で、独創的な表現が多いようだったが、当
たらずともという感じは僕もしていた。
 僕にあらましを、多分い個人的な妄想を交えながらも話し終えた俶子は、口と鼻から大きな
息を、何度もため息のように吐いて、異様に光る眼差しで僕の目を見つめてきていた。
 「何だ、お前。したくなってるのか?」
 自分の気持ちの高揚は押し隠して、意地悪い目で僕が聞いてやると、俶子はこくりと首を
頷かせてきた。
 「服を脱いでこちらへ来い」
 と僕がいってやると、すぐに俶子の手がセーターの裾を掴んでいた。
 知らぬ間にエアコンの温度が上げられているのか、僕自身も俶子の事情告白話につい気持ち
を昂らせてしまったのか、服を脱ぎたい気分になっていた。
 僕よりもかなり気持ちを昂らせているようだった俶子は、椅子に座っている僕の前に、全裸
になって跪いていた。
 僕のズボンとブリーフは足首の辺りで包まっていた。
 二人の昂った気持ちが、どうにか普通に戻ったのは、俶子の寝室のベッドの上だった。
 冷えたミネラルウォーターの旨さを、全身にしみじみと感じながら、僕と俶子はガウンを羽
織って、またリビングの椅子に戻った。
 俶子の話で、彼女に驚愕の相談を持ちかけてきた野中由美が、自分が最初に暴力団の春日に
犯された時の詳しい状況や、その後の関係の詳報を書き記した文章に目を通す作業が、まだ残
っていたのだ…。



                               続く
 
 
  

※元投稿はこちら >>
23/04/08 21:37 (myYK3VYo)
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