…男の両腕で抱きすくめられている洋一のほうは、その男への恐怖心からか、抗う素振りは一
切見せていませんでした。
いえ、それどころか暴力団の男に、自分のほうから迎合しているかのように、見えていること
に私は驚愕を隠せませんでした。
「や、止めてください!」
私は自分の出る限りの声を張り上げ、洋一の唇を塞いでいる男に叫びました。
すると男は洋一から唇を離し、サングラスの奥の目に気色の悪い笑みを浮かべて、
「代わりにあんたが俺に抱かれるか?」
と怖気に満ちた言葉を、平然とした声で返してきました。
男のあまりに非道な言葉への返答に窮していると、
「その覚悟もないんだったら、今すぐここを出ていけ。こいつは置いてな」
とそういいながら、その場で洋一の着ている衣服を、その場で荒々しく脱がし始めてきました。
洋一のほうは男の胸の中で、意思のない木偶人形のように、抗う素振り一つ見せずされるがま
まの状態で目を伏せていました。
雨で衣服をずぶ濡れにさせてにやってきた、洋一にあなたの衣服のシャツとセーター着せてい
たのを、男は洋一が無抵抗なのをいいことに、片手だけで上半身を裸に剥いていました。
人としての情に訴えるというだけの甘い考えで、闇雲な思いでここにきた私に、選択の余地は
どこにもありませんでした。
「わ、わかりました!…わ、私が」
喉の奥から異物でも吐き出すような重い声で、私は男の目に向けて応えました。
「ほう、さすがお母さんだ。じゃ、そこで早速着ているもの、全部ぬいでもらおうか」
「こ、ここでは…こ、子供の前ではゆ、許してください」
「何たわけたこといってんだよ。息子もほら、裸になってんじゃねえか?」
私はその場に立っているのがやっとなくらいに、気持ちが激しく乱れていましたが、子供の目
の前で裸の身を晒すという、言葉ではいい表せない恥辱でしたが、この屈辱の苦難から逃れる術
を持てないでいる私に残されているのは、重い覚悟と決心だけでした。
「わ、わかりました。…そ、その代わり、む、息子には乱暴なことはしないと、約束してもら
えますか?」
「そりゃあ、あんたの気持ち次第だよ」
男は嘯くような口調でいいながら、上半身を裸に剥かれた洋一の胸の辺りを、妖しげに片手で
擦り込んでいました。
バッグをソファーに置き、私は覚悟を決めて帯締めに手を置き、ゆっくりと解いていきました。
後ろにておやり、手先やお太鼓を解き、絹の擦れる音をさせながら、帯を解いていきました。
「お母さん、そんなにのんびりしてると、俺のほうが先に息子をやっちまうぜ」
男が少しイラついたような声でそういって、また唇を唇で乱暴に塞いでいきました。
息子の洋一はもう完全に、男の奴隷のようになっているようで、抵抗するどころか、相手の男
に唇を重ねられながら、自分の腕を男の首に巻き付けていっていました。
帯と帯揚げを解くと、色無地の着物の上前がはらりと床に垂れ、衿合わせが乱れ、半衿の布地
が露わになります。
色無地の着物が、私の肩から滑るように、床に滑り落ちました。
私が躊躇いの気持ちで、男の背中を向けたりして、着物を脱いでいる間に、私の目の前で洋一
が、男にズボンと下着を脱がされていて、素っ裸にされていました。
私のほうに剥き出された白い臀部を見せて、雄一のほうが男に寄りかかるようにして、ガウン
を優しげに脱がし、男の胸毛の濃い胸に悩ましげな表情で舌を這わせているのが、目の端に見え
ました。
男はガウンの下に何も身に付けておらず、色白の洋一の細身と日焼けか地黒かわからない、浅
黒い肌の男との、肉の妖しい絡み合いは、何か私には違う世界に自分がいるように思いました。
男性同士がそのように肉欲を露わにして、身体と身体を絡ませ合うという光景を、目の当たり
にするのは、私には無論、初めてのことで、しかも、こともあろうに相手の内の一人が自分の生
んだ子供であるという、倒錯の世界も超越したような事態に、私には口に出す言葉もありません
でした。
そしてまだその異常な事態に覆い被せるように、その子供の母親である私が身を以って図らず
も参画させられようとしているのでした。
肌襦袢と裾除けの細紐を解き、自分の足元に脱ぎ落し、身体の残るものは着物用の白の薄いシ
ョーツと白足袋だけになり、怯えた目を前に向けると、ソファーに全裸で座り込んでいる男の股
間の前に、洋一がミミズ腫れの跡の残る背中を私に見せて、膝を折り傅いているのが見えました。
洋一の顔が前後に揺れ動いていて、何をさせられているのかは私にもわかりました。
男のサングラスの下の目が、まるで好餌を前にした獣のように
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