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投稿者:雄一
真野綾子という名前に、僕は記憶がなかったのだが、長いメール文を読んでい
って、あの高明寺の尼僧さんだったのがすぐにわかった。
 僕もいつだったかどこかで、その名は聞いたことがあるのだがよく思い出せな
かった。
 奥多摩の祖母の家に向かう列車の中だったので、綾子さんの長文メールも少し
も苦にならなかった。
 僕のスマホのメアドは祖母から聞いたということだ。
 (雄一さん、突然のメールをお許しください。この度の妹の夫の不祥事の際の、
騒動では、あなたのお婆様を含め、何の関係もない学生のあなたにまで多大なご
迷惑をおかけしまして申し訳ない気持ちで一杯です。それに何かお婆様のお話に
寄りますと、あなたの言葉にどなたかがひどく気持ちを動かされたとかで、昨日
の朝、妹の夫の借金の債務者とかいう、背広を着た方が寺に私をふいに訪ねてこ
られ、これまでの私たちへの脅迫めいた行いを詫びに見えて、今後一切この件で
この村を訪ねることはないと約束されて、寺の周辺をうろついていた人たちを全
員引き上げさせて、村を出ていきました。どこのどなたがあなたの言葉を聞いて、
気持ちを動かされ、このような安堵の始末になったのか、今も当事者である私た
ちにはわからないでいます。それでも、私の妹も子供とやっと一緒に暮らせると、
大層に喜んでいます。いずれにしてもあなたの言葉が発端のように思いますので、
いずれぜひお会いして、改めてお礼を申し上げたいと思いますので、こちらへお
越しの際には、何ともあれお知らせください。ありがとうございました。)
 これだけの長いメール文の後、追伸的に届いた短文のメールのほうが、正直い
って僕の心に残った。
 (あなたの果てしのない若さに、私も妹もただただ感心しています。)
 栄子の夫の債務者たちの突然の撤退のあらましは、多分こうだ。
 人の借金の件で、何の責任もない祖母が苦境に立たされようとしていることを、
何げに僕が病床の吉野氏に、ぼやくように話した。 
 愛する人の苦境を、吉野氏があの全国的に悪名を轟かせている組織の長であり、
親友の稲川某氏に話し、そういう世界の手法で迅速に動いてことを治めたのだろ
うと僕は推察しているのだが、このことは尼僧にも、その妹の栄子にも敢えて話
す必要はないと思って黙ったままにした。
 雑貨屋が目の前にある駅が近づいてきた時、国語教師の沢村俶子から怒りのメ
ールが届いた。
 (こらっ、一人で行きやがって!)
 今度奥多摩へ行く時は、一緒に連れていくと約束してたのを忘れてたのは僕の
ほうだった。
 祖母は駅舎のいつもの端で、待っていてくれた。
 去年の誕生日だかに僕が祖母にプレゼントした真白なポロシャツとジーンズ姿
だった。
 家の玄関を入った時、先に敷居を跨いだ祖母の背中に向けて、
 「昭子」
 と呼びつけて、振り返ったところを、小さな身体に覆い被さるようにして抱き
締めてやった。
 驚いて上に向けてきた顔に顔を近づけて、口紅の赤が美しく映える唇に唇を強
く重ねていった。
 祖母のか弱い手がゆっくりと僕の背中に廻ってきていた。
 振り返ると祖母の身体に接するのは、夏休みの時以来だった。
 僕のほうは、祖父譲りの浮気性のせいかどうか、国語教師の俶子とか尼僧の綾
子さんとか、その妹の栄子とか、まるで節操のない色情狂みたいな奮闘ぶりだっ
たのだが、祖母は余命宣告まで受けている、重篤病人の吉野氏の見舞いやら看病に
尽くし切りで、身体も気持ちも安らぐことはないままだったのだ。
 そんな祖母が一番に待ち焦がれていたのは自分しかない、という自信と自負を抱
いて、僕は今、この玄関先で祖母の小柄で華奢な身体を抱き竦めていた。
 祖母のバラの花のように赤い唇を、僕は長い時間、自分の唇で塞ぎ続けた後、背
負ってきたスポーツバッグを上り口に置き捨て、祖母の身体を軽々とお姫様抱っこ
して、そのまま祖母の寝室に足を進めた。
 祖母を畳に置くようにして座らし、押入れから慌てた動作で布団を引き出し、乱
暴に広げた。
 その様子をっ畳に座って、黙って見ている祖母の顔が、嬉しそうに声を出さずに
笑っているのが見えたので、何だよ、と聞こうとしたが、どうせ僕の動作を見て、
また祖父のことを思い出しているのだ思い、知らぬふりをした。
 「身体疲れてないかい?」
 祖母を布団に仰向けに寝かせて、柄にもなく優しい言葉を僕は口にして、また唇を
重ねにいった。
 僕の一番好きな匂いが、顔一面と鼻孔を強く刺激してきていて、その強い刺激が僕
の身体の一番敏感な、下腹部に集中してきていているのが自分でわかった。
 優しく抱いてやりたいという思いと、乱暴に苛め抜いて辱めたいという、僕の二面
の性格が気持ちの中で葛藤を繰り返していた。
 「昭子の小便するとこ見たい」
 自分の気持ちの中の答えを、僕は昭子の耳元に囁いた。 
 祖母の切れ長の目の中の瞳が、小さく驚いたように泳いだ。
 白い顔が薄く赤らみ、細い顎が微かに頷いたように見えた。
 慌てた動作で、僕は祖母のジーンズの前ボタンを外し、足首のほうに引き下げた。
 白くて細い足と、薄水色の小さな布地のショーツが、鮮明な色合いで僕の目に入っ
てきて、頭の中で何かが弾けたようだった。
 休むことなく僕は、祖母のポロシャツも脱がした。
 頭に閃いていることがあった。
 少しばかり乱暴に祖母の手首を掴み取り、布団から起こすとそのまま襖戸に向か
った。
 祖母が身体に今、残っているのは白のブラジャー一つだけだ。
 国語教師の沢村俶子にも、僕は同じ格好をさせていた。
 室を出ると廊下があり、突き当たりが便所になっていて、何年か前に洋式トイレに
改造されている。
 ドアを開けて、ブラジャー一つだけの祖母の小柄な身体を便器に座らせる。
 祖母の身体の正面に、僕は身体を屈めた。 
 黙ったままの祖母の顔が、恥ずかしさを引き摺っているように、まだ赤らんでいた。
 「は、恥ずかしいわ…」
 目を閉じて、俯けた顔を左右に揺らせながら、祖母は羞恥の声を漏らした。
 「早く出せよ」
 非情に突き放すような声で、僕は祖母に向かっていった。
 便器に跨いだ祖母の小さな身体が、間もなく小刻みに震え出し、
 「あ…あっ、ああ…ご、ごめんなさい。…で、出ちゃいそう」
 「出していいんだよ」
 「あ、あなたに…み、見られるのが…私」
 「そう、その顔がいい。堪えているのか、喘いでいるのかわからないその顔が」
 便座の上の、祖母の臀部の震えが激しくなり出していた。
 瞳の濃い目の泳ぎも際立ってきて、半開きの唇が羞恥に堪える限界を告げてきて
いるように見えた。
 祖母の髪の生え際から額にかけて、汗の筋が一つか二つ滲み出ているのが見えた。
 やがて便器の下に溜まっている水面に、小さな水滴が零れ落ちる音が一つか二つ
聴こえてきた。
 「ああっ…だ、だめっ!」
 祖母が観念の声を挙げたかと思うと、便器の水面に落ちていた水滴が一筋の線状
になり、白い陶器に向けてか細い滝のように、止まることなく打ち付けてきた。
 それは恥ずかしさに堪える祖母自身にも制御が利かなくなっているのか、暫く止
まることなく続いた。
 祖母のほうは、自身でも止めようのない放出が始まってから、半ば放心状態にで
も陥ったのか、ただ下唇を噛み締めるような表情を、色白の顔に浮かべて黙りこく
っていた。
 僕が掴んでいた片腕を揺すってやると、慌てたように目を開き、自分の今の状況
に気づき、
 「ああっ…わ、私」
 と短く声を漏らした。
 「結構、溜まってたみたいだな。たくさん出たぜ」
 「き、嫌いになった?」
 「俺がしろといったんだ。上品な音だったぜ」
 わざとぶっきらぼうな口調でいって、そのまま僕は狭い室から出て、祖母の寝室
にすたすたと戻った。
 布団に仰向けになってると、小さな身体をさらに小さく窄めるようにして、白い
ブラジャーを身に付けただけの祖母が戸を開けて入ってきた。
 「ほら、見てみろよ」
 指で自分の下腹部を指して、僕は祖母に声をかけた。
 下腹部の僕の若さの象徴は、仰向けの身体と同じ、天井の方向に向けて固く聳え
立っていた。
 「そこに跨ってこい」
 指し示した指をもう一度催促するように動かせて、僕は横柄に誘った。
 祖母は従順だった。
 気恥ずかしさのような表情を垣間見せながらも、おずおずと僕の下半身に跨って
きて、ゆっくりとか細い腰を沈め込んできた。
 「ああっ」
 少しばかりの抵抗感があったが、僕の屹立したものは祖母の柔らかく温かい胎内
に埋没した。
 「あ、あなたの…す、すごい!」
 「昭子が好きだからだよ」
 「あ、あんな恥ずかしいとこみ、見せても?」
 「そうされるのが、昭子は好きなんだろ?」
 「そ、そんなこと…」
 「身体は正直だな。もう昭子の温かい汁が俺に纏わりついてきてる」
 どこでこれだけの、四十近くも歳の違う女を弄ぶような言葉が、自分の口からす
らすらと出てくるのか、当の本人がまるで知らないでいることが、自分自身でも不
思議だった。
 薄々とは気づかされている、自分の性格の二面性が、勝手に僕の身体と心を動か
せし淫靡な方向に導いてているのだと思いながら、僕は横柄に頭の下で手を組んで、
祖母のまた朱に染まり出した小ぶりの顔を見上げていた。
 僕の腹の上に両手をついて、祖母は自らの意思で自らの腰を上下にゆっくりと動
かし続けていた。
 女の身体がどういうものなのか、たかだか十六の少年の微々たるキャリアではわ
かるはずもないのだが、それにしてもこの祖母の肌理の細かい、滑らかな肌艶と感
触の柔らかさは、身贔屓でも何でもなく、僕には神々しい天女のように見えるのだ
った。
 それもただの天女ではない。
 どの男でも惑わせ、狂わせてしまう魔性のようなものを秘めている。
 そしてそのことを、当人の祖母は知らないでいる。
 もしかすると、僕の性格の二面性は、この祖母の血を受け継いでいるのかも知れな
いと思いながら、自分を自分で昂め出してきている、ほの赤く上気して、切なげに顔
を歪ませている祖母の顔を見上げていた。
 「ああっ…だ、だめだわ、もう」
 切なげにそう喘ぎながら、祖母が哀訴的な眼差しを僕に向けてきていた。
 徐に僕は布団から上体を起こし、祖母の細い背中を抱きしめた。
 祖母のブラジャーをした乳房が僕の胸に圧し潰され、汗に滴り濡れた祖母の顔が、僕
の顎の下辺りで喘ぎ抜いているのが見えていた。
 下腹部が深く密着し、胸と胸が強く重なり合った状態で、今度は僕のほうの腰が若さ
に任せて激しく上下に律動した。
 最後の瞬間の手前で、僕の腕に抱き竦められたまま祖母は、ビクンと身体を上下させ
て意識を失くした。
 かまわずに僕は祖母の胎内に、思うさまの飛沫を浴びせ散らせていた。
 どれくらいの時間が経ったのかわからなかったが、深い眠りから目を覚ますと、僕の
隣で一緒に眠っていた祖母の姿が見えなかった。
 暫くすると、頭にタオルを巻き、胸から下をバスタオルで覆った、風呂上がりの祖母
が室に入ってきた。
 僕の顔を見るなり、
 「吉野さんが…意識を失くしたんだって」
 と重い声でいってきた。
 吉野氏に付き添っている古村氏から、二十分ほど前に祖母のスマホに連絡があったと
のことだ。
 「また雄ちゃんを、一人ぽっちにしてしまうわね」
 いいながら祖母はそそくさと身なりを整え、急くように鏡台の前に座り込んだ。
 「だいぶん悪いの?…僕も行こうかな?」
 「…そうね、もう最後かも知れないから、行く?」
 「わかった。シャワー浴びてくる」
 「早くして。お昼は悪いけど列車でね。雑貨屋さんでパンでも買いましょ」
 柱の時計を見ると十二時半を過ぎていた。
 あたふたと二人は家を出て、小走るように駅までの坂道を急いだ。
 坂道の途中で、夏休みの時、僕が一人で家にいたところへ、袋一杯の野菜を届けてく
れた浅黒い肌をした、紺地の野良着姿の叔母さんに会った。
 祖母と、短い挨拶の言葉を交わした叔母さんと僕も目が合ったので、軽く頭を下げる
と、何故か妙に思わせぶりな視線で僕を見つめてきた。
 そういえばと、あの時、叔母さんの野良着の襟から覗き見えた、汗の滲み出た乳房の膨ら
みに、僕は一瞬目を瞬かせたことを僕はふいに思い出した。
 駅での待ち時間の間、僕が雑貨屋で昼飯用の菓子パンと牛乳パックを買って、駅の誰もい
ないホームに入ると、祖母がスマホを耳に当て、深刻そうな顔で誰かと話し込んでいた。
 「…どうも、吉野さん、だめみたい…」
 列車に乗り込んで間もなく、祖母が悲しげな目を俯かせて、沈んだ声で僕にいってきた。
 古村氏からの報告だということだ。
 菓子パンを齧りながら、僕は窓の外を眺めながら、奇妙な縁で知り合った吉野氏のことを
あれこれと思い返していた。
 祖母から預かったあのUSBメモリーも、まだ半分も見ていない。
 普通の精密機械整備技術者として、平凡に生きるはずだった吉野さんに突然に降りかかっ
た、人間の、いや男と女の魑魅魍魎とした愛憎の渦に巻き込まれ、六十代半ばで死の世界に
導かれようとしている吉野さんに、十六の高校生如きの僕がいうのもかなりおこがましいの
だが、多分、彼は自分の人生の半分当たりのところから、もう一度やり直したいと思ってい
るのではないか、と僕は、自分には不似合いにも真面目にそう考え、牛乳パックのストロー
を思いきり啜った…。 
 


                            続く

 
 
 
 
 
 
 
 


 


 

※元投稿はこちら >>
23/03/17 12:53 (96CuXMdQ)
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